14:30 〜 14:45
[SVC47-34] 最新の山頂噴火産物(湯船第二スコリア)から見た富士火山のマグマ供給系
キーワード:富士火山、湯船第二スコリア、マグマ供給系、斑晶サイズ、斑晶量、マグマ混合
富士火山では近代的な手法で噴火が観測されたことが ない。そこで物質科学的に、マグマ溜りの深度や構造を明らかにする必要がある。この考えから、山頂火口から起きた最新の噴火(約 2200 年 前)の事例研究を行った。この噴火は終始爆発的で、湯船第二スコリア(Yu-2)を生成した。Yu-2の分布は東に主軸があり(宮地,1988) 、 山頂から東へ約 10km の地点でサンプルを採取 した。スコリアのサイズや発泡の様子から、堆積物を a (層厚 10cm)、 b (90cm)、 c (5cm)、 d (15cm)、 e (60cm) に分類した。スコリアのサイズは、aからbに向け増加し、その後減少する。噴火の途中で、風向や風速が変化しなかったとすると、サイズの変化は、 噴火強度・噴煙高度が変化したことに対応すると考えられる。スコリアの全岩組成(50.5-51.2 wt. % SiO2)は、噴火ユニットにより系統的に変化しない。噴火の各時期のマグマの特徴が把握されるよう、各ユニットについて4-6 個のスコリアの薄片を観察·分析した。
ユニットa のスコリアに玄武岩溶岩の捕獲岩が含まれる(Suzuki and Fujii, 2010 JVGR)ことを除くと、一見、スコリアは噴火時期によらず均質に見える。かんらん石と斜長石の斑晶(2mm以下)を有し、それらは自形で反応縁がない。斑晶コア組成は、噴火全体で、かんらん石がFo 73-80、斜長石がAn 65-92の範囲にあるが、範囲にはユニット毎に特徴がある。ユニットbとcでは、Fo76以下、An85以下が大半を占める。これに対し、ユニットdの半数のサンプルとユニットeでは、斜長石組成がAn85以上で占められるが、かんらん石の組成分布はサンプルにより多様で、Fo76以上に限られるものの他、Fo73-76が共存するものもある。一方、ユニットaやユニットdの残り半数のサンプルでは、Fo 73-80、 An 65-92といったブロードな組成分布を有している。なお噴火全体として斑晶のリム組成は、コア組成の分布と相関を持つ。
個々の斑晶をみると、かんらん石はFo76以上の高Foタイプと、Fo73-76の低Foタイプに、明確に分かれるが、両者に極端なサイズの差はない。コアがAn85以上の斜長石(高Anタイプ)は全体が均質で、結晶サイズが500μm長以下と小さい。一方コアが主にAn85以下の部位からなるタイプ(低Anタイプ)は、コアの中の中心に近い部位にAn85以上の均質な部分が見られることがあり、An85以上の部位は前述の高Anタイプのサイズに似ている。主に高Foタイプと高Anタイプの斑晶からなるユニットdのスコリアと、低Foタイプと低Anタイプの斑晶からなるユニットbとcのスコリアを斑晶量で比較した。3vol. %と18〜19vol. %の明瞭な差があり、斜長石斑晶量の差が大きい(2vol. %と16vol. %)。
以上から湯船−2の噴火直前には、1)マグマ全体の組成は同じだが結晶化の程度の異なる2端成分マグマが存在し、2)それぞれが単独、もしくは互いに混合し噴出した。斑晶に反応縁がないのは、2端成分マグマのメルト組成に大差がないためである。ユニットaでは混合物が、噴火のクライマックス(b-c)では結晶化の進んだ部位のみが、噴火終期(d-e)には結晶化の進んでいないマグマが(混合マグマを伴いつつ)噴出した。斑晶コア組成の分布にギャップが存在しないことと、低Anタイプの斜長石のコアの中心部に高Anタイプの斜長石と似た部位が確認できるので、結晶化の進んだマグマは、結晶化の進んでないマグマから形成されたと推定される。結晶化の進んだマグマの斜長石に結晶化の進んでいなかった時期の晶出部が確認されるのに対し、かんらん石で確認できないのは、斜長石でのCaAl-NaSi拡散とかんらん石でのMg-Fe拡散の速度差によるものである。他の元素を含めた拡散プロファイルの検討により、結晶化の進んだマグマ生成後の時間スケールの検討も行う。マグマ供給系や噴火誘発過程を議論する上で、結晶化程度の違うマグマが、1)同じ深度に存在したか、2)異なる深度に存在したか(結晶化の進んだものが浅部)区別することは重要であり、メルト包有物の含水量分析(Yasuda, 2014)により検証する予定である。石基組成のメルトが、かんらん石、斜長石斑晶と平衡にあったことを制約条件とすると、噴火直前のマグマは、酸素分圧QFMの場合、1110-1120C、 2.5kbar以下、含水量約1.5wt. %の条件にあったと大まかに見積もられる。
ユニットa のスコリアに玄武岩溶岩の捕獲岩が含まれる(Suzuki and Fujii, 2010 JVGR)ことを除くと、一見、スコリアは噴火時期によらず均質に見える。かんらん石と斜長石の斑晶(2mm以下)を有し、それらは自形で反応縁がない。斑晶コア組成は、噴火全体で、かんらん石がFo 73-80、斜長石がAn 65-92の範囲にあるが、範囲にはユニット毎に特徴がある。ユニットbとcでは、Fo76以下、An85以下が大半を占める。これに対し、ユニットdの半数のサンプルとユニットeでは、斜長石組成がAn85以上で占められるが、かんらん石の組成分布はサンプルにより多様で、Fo76以上に限られるものの他、Fo73-76が共存するものもある。一方、ユニットaやユニットdの残り半数のサンプルでは、Fo 73-80、 An 65-92といったブロードな組成分布を有している。なお噴火全体として斑晶のリム組成は、コア組成の分布と相関を持つ。
個々の斑晶をみると、かんらん石はFo76以上の高Foタイプと、Fo73-76の低Foタイプに、明確に分かれるが、両者に極端なサイズの差はない。コアがAn85以上の斜長石(高Anタイプ)は全体が均質で、結晶サイズが500μm長以下と小さい。一方コアが主にAn85以下の部位からなるタイプ(低Anタイプ)は、コアの中の中心に近い部位にAn85以上の均質な部分が見られることがあり、An85以上の部位は前述の高Anタイプのサイズに似ている。主に高Foタイプと高Anタイプの斑晶からなるユニットdのスコリアと、低Foタイプと低Anタイプの斑晶からなるユニットbとcのスコリアを斑晶量で比較した。3vol. %と18〜19vol. %の明瞭な差があり、斜長石斑晶量の差が大きい(2vol. %と16vol. %)。
以上から湯船−2の噴火直前には、1)マグマ全体の組成は同じだが結晶化の程度の異なる2端成分マグマが存在し、2)それぞれが単独、もしくは互いに混合し噴出した。斑晶に反応縁がないのは、2端成分マグマのメルト組成に大差がないためである。ユニットaでは混合物が、噴火のクライマックス(b-c)では結晶化の進んだ部位のみが、噴火終期(d-e)には結晶化の進んでいないマグマが(混合マグマを伴いつつ)噴出した。斑晶コア組成の分布にギャップが存在しないことと、低Anタイプの斜長石のコアの中心部に高Anタイプの斜長石と似た部位が確認できるので、結晶化の進んだマグマは、結晶化の進んでないマグマから形成されたと推定される。結晶化の進んだマグマの斜長石に結晶化の進んでいなかった時期の晶出部が確認されるのに対し、かんらん石で確認できないのは、斜長石でのCaAl-NaSi拡散とかんらん石でのMg-Fe拡散の速度差によるものである。他の元素を含めた拡散プロファイルの検討により、結晶化の進んだマグマ生成後の時間スケールの検討も行う。マグマ供給系や噴火誘発過程を議論する上で、結晶化程度の違うマグマが、1)同じ深度に存在したか、2)異なる深度に存在したか(結晶化の進んだものが浅部)区別することは重要であり、メルト包有物の含水量分析(Yasuda, 2014)により検証する予定である。石基組成のメルトが、かんらん石、斜長石斑晶と平衡にあったことを制約条件とすると、噴火直前のマグマは、酸素分圧QFMの場合、1110-1120C、 2.5kbar以下、含水量約1.5wt. %の条件にあったと大まかに見積もられる。