[SVC47-P12] 新潟焼山の2015-16年活動の推移‐地震・地殻変動・噴煙データ‐
キーワード:新潟焼山、地震、地殻変動、噴煙
はじめに
新潟焼山は新潟県西部に位置し、標高2000m前後の山地を基盤とする比高約400mのドーム状の小型成層火山である。マグマ噴火は1773年の活動以降起こっていないが、その後もたびたび水蒸気噴火が起こっており、2016年5月頃にも火山灰の噴出を伴うごく小規模な噴火が発生したと推定された。本稿では、2015年から2016年にかけての一連の活動において気象庁が行った新潟焼山の噴煙・地震・傾斜変動の観測結果について報告する。
噴気など表面現象および地震活動の状況
2015年夏頃から山頂部東側斜面の噴煙の量が増加し、2015年12月下旬からはさらに増加した。
2016年4月と5月に実施した上空からの観測では、山頂付近にごく小規模な噴火によるものとみられる降灰を確認した(及川ほか,2017)。また、その後も7月にかけて、噴気孔からの泥水の流出や火山灰の痕跡が確認されるなど(及川ほか,2017)、熱活動は活発な状態であった。
plume-rise法により放熱量を推定した結果は、ごく小規模な噴火が確認された2016年5月頃に高くなっていた。
地震活動は2015年からわずかに高まり、2015年12月下旬からは低周波成分を含む地震もみられるなかで、2016年5月1日から4日にかけて一時的に高周波地震が増加した。その後5月中旬以降は地震活動が少ない状態で経過している。
地殻変動の状況
GNSSによる地殻変動観測では2016年1月頃から8月にかけて、新潟焼山を南北に挟む宇棚-丸山尻基線(基線長:約16km)で約3cm程度の伸びの変化が見られた。ALOS-2/PALSAR-2でも、同時期に山頂付近で膨張性の変動が観測されており、鎌田・他(2016)によると、これらの変動は新潟焼山山頂付近の深さ5km~6km、体積変化量4.6~5.7×106㎥で説明することが可能である。
また、4月30日頃から5月1日頃にかけて、山頂の北約4kmに設置しているカラサワ観測点の傾斜計で、地震の増加に先行して約0.3×10-6radian程度の山頂方向上がり(南上がり)の変化が見られた。
議論
以上の観測結果から、新潟焼山では2016年1月頃から、山頂直下深さ5km付近にマグマが貫入し、それによる地震活動の活発化や浅部の熱水活動の高まりと、噴煙量の増加やごく小規模噴火がみられたと考えることができる。また、2016年夏以降は、地殻変動も停滞し、地震、噴煙活動も徐々に低下してきていることから、それ以上のマグマの上昇は起こらなかったとも考えられる。しかし、数百万m3のマグマが蓄積されている可能性があることや、他の火山の事例に照らせば、このような活動を繰り返した場合は、中長期的には本格的な噴火活動に移行する可能性も考えられる。
これらの活動を踏まえ、気象庁は、監視カメラを2点、GNSS観測点を1点、増設した。また、御嶽山の災害を踏まえた観測点整備で山頂から約2kmの地点に広帯域地震計も設置した。これらのデータと現地調査、また新潟焼山は自然環境が厳しく、観測点の設置や維持が難しいが、必要に応じて観測体制を強化するなどして火山活動を監視していきたい。
新潟焼山は新潟県西部に位置し、標高2000m前後の山地を基盤とする比高約400mのドーム状の小型成層火山である。マグマ噴火は1773年の活動以降起こっていないが、その後もたびたび水蒸気噴火が起こっており、2016年5月頃にも火山灰の噴出を伴うごく小規模な噴火が発生したと推定された。本稿では、2015年から2016年にかけての一連の活動において気象庁が行った新潟焼山の噴煙・地震・傾斜変動の観測結果について報告する。
噴気など表面現象および地震活動の状況
2015年夏頃から山頂部東側斜面の噴煙の量が増加し、2015年12月下旬からはさらに増加した。
2016年4月と5月に実施した上空からの観測では、山頂付近にごく小規模な噴火によるものとみられる降灰を確認した(及川ほか,2017)。また、その後も7月にかけて、噴気孔からの泥水の流出や火山灰の痕跡が確認されるなど(及川ほか,2017)、熱活動は活発な状態であった。
plume-rise法により放熱量を推定した結果は、ごく小規模な噴火が確認された2016年5月頃に高くなっていた。
地震活動は2015年からわずかに高まり、2015年12月下旬からは低周波成分を含む地震もみられるなかで、2016年5月1日から4日にかけて一時的に高周波地震が増加した。その後5月中旬以降は地震活動が少ない状態で経過している。
地殻変動の状況
GNSSによる地殻変動観測では2016年1月頃から8月にかけて、新潟焼山を南北に挟む宇棚-丸山尻基線(基線長:約16km)で約3cm程度の伸びの変化が見られた。ALOS-2/PALSAR-2でも、同時期に山頂付近で膨張性の変動が観測されており、鎌田・他(2016)によると、これらの変動は新潟焼山山頂付近の深さ5km~6km、体積変化量4.6~5.7×106㎥で説明することが可能である。
また、4月30日頃から5月1日頃にかけて、山頂の北約4kmに設置しているカラサワ観測点の傾斜計で、地震の増加に先行して約0.3×10-6radian程度の山頂方向上がり(南上がり)の変化が見られた。
議論
以上の観測結果から、新潟焼山では2016年1月頃から、山頂直下深さ5km付近にマグマが貫入し、それによる地震活動の活発化や浅部の熱水活動の高まりと、噴煙量の増加やごく小規模噴火がみられたと考えることができる。また、2016年夏以降は、地殻変動も停滞し、地震、噴煙活動も徐々に低下してきていることから、それ以上のマグマの上昇は起こらなかったとも考えられる。しかし、数百万m3のマグマが蓄積されている可能性があることや、他の火山の事例に照らせば、このような活動を繰り返した場合は、中長期的には本格的な噴火活動に移行する可能性も考えられる。
これらの活動を踏まえ、気象庁は、監視カメラを2点、GNSS観測点を1点、増設した。また、御嶽山の災害を踏まえた観測点整備で山頂から約2kmの地点に広帯域地震計も設置した。これらのデータと現地調査、また新潟焼山は自然環境が厳しく、観測点の設置や維持が難しいが、必要に応じて観測体制を強化するなどして火山活動を監視していきたい。