[SVC47-P21] 阿蘇における浅部マグマ溜りへの高硫黄濃度玄武岩質マグマの注入
キーワード:阿蘇、EPMA、FT-IR、メルト包有物、硫黄、含水量
阿蘇中央火口丘群北西部において完新世に活動した玄武岩質マグマを対象に,それぞれのマグマ溜りの情報を得る目的で,全岩化学組成,鉱物および鉱物中に捕獲されたメルト包有物(MI)の化学組成(主成分元素,Cl,S),含水量を測定した.
分析試料は完新世に活動した火山である往生岳,上米塚のスコリアを用いた.全岩化学組成分析には北九州市立自然史・歴史博物館の蛍光X線分析装置を使用し,分析手順はMori & Mashima (2005) に従った.石基や鉱物の微小領域の分析には熊本大学のSEM-EDSおよび東京大学地震研究所のEPMAを使用した.含水量の測定には同研究所の真空型顕微赤外FT-IR分光光度計システムを使用し反射分光法で行った(安田, 2011; Yasuda, 2014).
分析の結果, 往生岳,上米塚の斑晶鉱物はMIの組成をもとにMafic group:かんらん石(Ol),Felsic group:斜長石(Pl),単斜輝石(Cpx),斜方輝石(Opx)の大きく2つに分けられる.往生岳,上米塚のMIの組成はMafic groupでSiO2 46.7〜57.5 wt.%,Felsic groupでSiO2 52.3〜59.8 wt.%であった.メルトの組成は一部重複する.石基ガラスはそれらの中間組成にプロットされる.また揮発性成分含有量にも違いが見られ,Felsic groupのMIがSに乏しい(S 〜1000 ppm)のに対し,Mafic groupのMIは高いS含有量をもつ(S 〜4000 ppm).S含有量はホストOlのMg#が大きいほど高い傾向がある.含水量についてFelsic groupでは往生岳スコリアが最も高く(最大3 wt.%),上米塚スコリアでは低含水量(1 wt.%未満)という違いがある.Mafic groupの含水量は検出限界未満がほとんどだった(最大0.8 wt. %).
また上米塚,往生岳スコリアの鉱物化学組成について,Felsic groupのPl,Cpxには逆累帯しているものが存在する.Pl斑晶のコアは,バイモーダルな組成を示す(An60-An65, An85-An87).Opx斑晶はCpxやOlの反応縁をもつ.
OlのMIがもつ高いVolatile/K2O値は,初生的に高い揮発性成分濃度を有していたことを示している.中部・東北日本では斑晶メルト包有物の研究から火山フロント直下に供給される高S濃度のマフィックマグマが発見されており(山口ほか,2003;山口,2010),初生的に揮発性成分に富むことがわかってきている(Zellmer et al., 2015).一般的にSが高濃度でメルトに溶け込むためには酸化的環境(FMQ+1以上)が求められることが知られている(Wallace, 2005; Jugo et al., 2005; Jugo, 2010).またメルト中のS含有量とFe含有量, 酸素フガシティ,温度の間には相関がある(Wallace & Carmichael, 1992).MaficグループとFelsicグループのS濃度の違いは両者の酸化還元度,組成,温度の違い,つまり分化度の違いを見ている可能性がある.
以上をまとめて,Felsic groupに比べてMafic groupの方が低SiO2,高Mg#,高VolatilesのMIをもつこと,Felsic groupの斑晶には反応縁をもつものや逆累帯するものが存在することから,Mafic groupが深部由来,Felsic groupが浅部由来であると考えられる.また観察事実はFelsic groupを晶出した浅部マグマ溜りへの, Olを斑晶にもつ深部起源高硫黄玄武岩質マグマの注入によって説明できる.
分析試料は完新世に活動した火山である往生岳,上米塚のスコリアを用いた.全岩化学組成分析には北九州市立自然史・歴史博物館の蛍光X線分析装置を使用し,分析手順はMori & Mashima (2005) に従った.石基や鉱物の微小領域の分析には熊本大学のSEM-EDSおよび東京大学地震研究所のEPMAを使用した.含水量の測定には同研究所の真空型顕微赤外FT-IR分光光度計システムを使用し反射分光法で行った(安田, 2011; Yasuda, 2014).
分析の結果, 往生岳,上米塚の斑晶鉱物はMIの組成をもとにMafic group:かんらん石(Ol),Felsic group:斜長石(Pl),単斜輝石(Cpx),斜方輝石(Opx)の大きく2つに分けられる.往生岳,上米塚のMIの組成はMafic groupでSiO2 46.7〜57.5 wt.%,Felsic groupでSiO2 52.3〜59.8 wt.%であった.メルトの組成は一部重複する.石基ガラスはそれらの中間組成にプロットされる.また揮発性成分含有量にも違いが見られ,Felsic groupのMIがSに乏しい(S 〜1000 ppm)のに対し,Mafic groupのMIは高いS含有量をもつ(S 〜4000 ppm).S含有量はホストOlのMg#が大きいほど高い傾向がある.含水量についてFelsic groupでは往生岳スコリアが最も高く(最大3 wt.%),上米塚スコリアでは低含水量(1 wt.%未満)という違いがある.Mafic groupの含水量は検出限界未満がほとんどだった(最大0.8 wt. %).
また上米塚,往生岳スコリアの鉱物化学組成について,Felsic groupのPl,Cpxには逆累帯しているものが存在する.Pl斑晶のコアは,バイモーダルな組成を示す(An60-An65, An85-An87).Opx斑晶はCpxやOlの反応縁をもつ.
OlのMIがもつ高いVolatile/K2O値は,初生的に高い揮発性成分濃度を有していたことを示している.中部・東北日本では斑晶メルト包有物の研究から火山フロント直下に供給される高S濃度のマフィックマグマが発見されており(山口ほか,2003;山口,2010),初生的に揮発性成分に富むことがわかってきている(Zellmer et al., 2015).一般的にSが高濃度でメルトに溶け込むためには酸化的環境(FMQ+1以上)が求められることが知られている(Wallace, 2005; Jugo et al., 2005; Jugo, 2010).またメルト中のS含有量とFe含有量, 酸素フガシティ,温度の間には相関がある(Wallace & Carmichael, 1992).MaficグループとFelsicグループのS濃度の違いは両者の酸化還元度,組成,温度の違い,つまり分化度の違いを見ている可能性がある.
以上をまとめて,Felsic groupに比べてMafic groupの方が低SiO2,高Mg#,高VolatilesのMIをもつこと,Felsic groupの斑晶には反応縁をもつものや逆累帯するものが存在することから,Mafic groupが深部由来,Felsic groupが浅部由来であると考えられる.また観察事実はFelsic groupを晶出した浅部マグマ溜りへの, Olを斑晶にもつ深部起源高硫黄玄武岩質マグマの注入によって説明できる.