JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] [JJ] 活動的火山

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、青木 陽介(東京大学地震研究所)

[SVC47-P25] 霧島火山群,新燃岳2011年噴火に伴う火砕流の分布と産状

*筒井 正明1小林 哲夫2 (1.株式会社ダイヤコンサルタント、2.元鹿児島大学)

キーワード:霧島火山群、新燃岳、2011年噴火、火砕流、準プリニー式噴火

霧島火山群,新燃岳の2011年噴火は準プリニー式噴火であり,その最中にごく小規模な火砕流が発生した(Nakada et al., 2013).降下テフラの分布や特性については,噴火直後から多くの研究者や行政機関等によって調査が進められ,各種防災対策にも活用された.一方で,火砕流堆積物は到達距離も短く立入規制範囲内の山体斜面にとどまったため,迅速な現地調査は実施されなかった.著者らは,2016年8月に,火砕流堆積物の現地調査を実施する機会を得た.本報告では,その結果得られた火砕流堆積物の分布及び産状について予察的に報告する.

新燃岳2011年噴火の火砕流堆積物は,新燃岳南西側斜面の標高約1190 m~1120 m,幅約20~40 mのごく狭い範囲に分布する.堆積物の先端は,火口縁(標高約1380~1390 m)から直線距離で約800 m,比高差約260~270 mほどで,山体斜面勾配が10~11°程度の位置にまで達した.
火砕流堆積物が分布する直上の斜面(標高約1280 m ~1180 m付近)では,火砕流が流下した両側に,比高0.5~1 m程度の堤防状の微地形が認められる.火砕流は流路沿いに自然堤防を残しつつ,本体は流下してしまったとものと推定される.1280 mより上流側は火口に近く,テフラの降下や火山岩塊の着弾の影響もあるため,火砕流堆積物を確認するのは困難である.なお,火砕流が発生した方向へ追跡すると,火口縁の西南西~南西部付近に到達するが,この部分は新燃岳火口縁の最も低まった部分ではない.
火砕流堆積物の層厚は,周辺地形との比高から推定すると1~2 m(末端や周縁の一部はさらに薄く0.5~0.3 m)程度,ローブが重なっている箇所で2~4 m程度である.ただし,堆積域の旧地形は最大2 m程度の浅い谷地形を呈すことが推定され,実際の層厚は最大で4~6 m程度となる可能性がある.なお,火砕流堆積物の周辺には,火砕サージの痕跡は認められない.
火砕流堆積物の流路中央部には立木はなく,倒木や小枝が多く散乱しているのは先端~下流部分である.また火砕流堆積物上の倒木は基底部分のみが炭化し,表面に散乱する倒木の樹幹や小枝はほとんど焦げていない.それゆえ,まず火砕流堆積物に取り巻かれた樹木の根元部分だけが炭化し,その後の火砕流の力によって炭化部で折れるように倒れたと推定される.その他,火砕流堆積物の下流側縁辺部では,立木を倒さずに取り込んでいる現象,火砕流に取り込まれた倒木や枝などが周辺の立木にダムアップして停止している現象,ダムアップした脇から一部が溢れるように下流側へと流下している現象が確認できる.

このような分布と産状から,火砕流は南西側の火口縁上に生じた噴煙柱の部分崩壊で形成され,山体斜面を低速で800 mほど流下しただけで停止・堆積したものと判断される.また,火砕流堆積物の分布(長さ300 m,幅30 m,平均層厚2 m)から,体積は約20,000 m3程度と推定される.