[SVC47-P26] 空振アレイ観測によって捉えた桜島火山の空振活動推移:2015年1月~12月
キーワード:火山噴火、桜島昭和火口、空振アレイ観測
桜島では2009年以降, 年間1000回近くの頻度で爆発的噴火が発生し,空振計, 地震計, 傾斜計, 伸縮計, GNSSなどの地球物理学的連続観測によって火山活動の把握が行われてきた (Iguchi et al., 2013). 2015年8月15日には,それまでと異なるマグマ貫入イベントが発生し,その時期を挟んで噴火の頻度が低下するなど,活動状態の変化が報告されている. 本稿では,空振計アレイによって捉えた2015年1月から12月の空振活動について報告する.
2014年10月に, 高峠高原の鹿児島大学演習林内 (桜島昭和火口から南東に11 km, 高度540m)に空振アレイ(TKT)を設置した. アレイは4要素からなり, 1辺が約200 mの三角形の各頂点と中央に配置した. このうち, 3点は差圧計とデジタイザのみを設置して太陽光パネルにより電源供給を行い, 1点は商用電源を引いて, 差圧計・デジタイザと供に, 全観測点のデータ収録とデータ送信のための中心観測点とした. 各観測点からのデータは, サンプリングレート50 Hzで光ファイバーケーブルによって中心観測点に送られる.光ファイバーケーブルは,動物による影響をさけるために保護管に通し地下20-30 cmに埋設した. しかしながら, 厚い腐葉土に覆われた起伏の激しい観測点付近では, 降雨による地表面の流出や, それに伴うケーブルの露出, 動物の影響を避けきれず, 設置後約1年半で通信不能となってしまった. 今回は,断続的に電源不良等による欠測のあるものの,連続的にデータを取得することができた2015年1月から12月までのデータを解析した.
得られた空振データに対して, メディアンフィルター処理, トレンド除去を行った後, 0.3-5 Hzのバンドパスフィルターを施した.まず, 気象庁による桜島噴火観測表を基に, 爆発記録時間から前後15分のTKTにおける記録を切り出し, 解析長10秒にて時間を5秒ずつ変化させながら, 連続的にセンブランス解析を行い, イベント検出と到来方向を推定した.
その後, 各観測点に関して, 遅延時間が昭和火口から到来した場合のものと仮定したときの相互相関関数を1秒毎に計算し, 5分間の移動平均を施し, 2015年1月から12月の空振活動を推定した.
気象庁によって報告されている2015年爆発記録737回のうち, 636回の爆発がTKTの稼働中に発生し,その全てについて空振が観測されていた.気象庁瀬戸観測点での空振記録が最も小さかったもの(1.3 Pa)でも, 桜島方向(300°N)から有意にシグナルが到来していることを確認した. また, 振幅の大きい爆発の場合, Yokoo et al. (2014) で指摘されているように, 観測周辺の地形からの反射波が到来していることも確かめられた. 反射波は主に180°Nから130°Nから到来しており, これらは高峠南・南東の横岳・高隈山からの反射波と考えられる. また, 80°N方向からの反射波は比較的弱く, これらは串良川方向で, 周囲より標高が低くなっているためだと考えられる. 次に, 相互相関関数を用いて, 桜島からの空振エネルギーを連続的に解析した. 桜島から到来する微弱な空振活動と, 観測点付近のノイズを区別するために,先述の反射波の弱い串良川方向 (80°N)から到来することを想定したエネルギーを参考値とした. この結果, 爆発・噴火記録の合間にも, 微弱な空振活動が間欠的または連続的に記録されている時期があることがわかった. このような微弱な空振活動は2015年6月ごろまで, 噴火間に活発に発生するが, 7月以降はほとんど見られなくなる. 今後は, 桜島近傍の観測点のデータや, 昭和火口内撮影動画などと組み合わせて, TKTで記録された噴火間の微弱な空振活動時にどのような表面現象が対応しているのかを明らかにし, さらに噴火周期や規模にどの程度影響しているのかを検討していきたい.
2014年10月に, 高峠高原の鹿児島大学演習林内 (桜島昭和火口から南東に11 km, 高度540m)に空振アレイ(TKT)を設置した. アレイは4要素からなり, 1辺が約200 mの三角形の各頂点と中央に配置した. このうち, 3点は差圧計とデジタイザのみを設置して太陽光パネルにより電源供給を行い, 1点は商用電源を引いて, 差圧計・デジタイザと供に, 全観測点のデータ収録とデータ送信のための中心観測点とした. 各観測点からのデータは, サンプリングレート50 Hzで光ファイバーケーブルによって中心観測点に送られる.光ファイバーケーブルは,動物による影響をさけるために保護管に通し地下20-30 cmに埋設した. しかしながら, 厚い腐葉土に覆われた起伏の激しい観測点付近では, 降雨による地表面の流出や, それに伴うケーブルの露出, 動物の影響を避けきれず, 設置後約1年半で通信不能となってしまった. 今回は,断続的に電源不良等による欠測のあるものの,連続的にデータを取得することができた2015年1月から12月までのデータを解析した.
得られた空振データに対して, メディアンフィルター処理, トレンド除去を行った後, 0.3-5 Hzのバンドパスフィルターを施した.まず, 気象庁による桜島噴火観測表を基に, 爆発記録時間から前後15分のTKTにおける記録を切り出し, 解析長10秒にて時間を5秒ずつ変化させながら, 連続的にセンブランス解析を行い, イベント検出と到来方向を推定した.
その後, 各観測点に関して, 遅延時間が昭和火口から到来した場合のものと仮定したときの相互相関関数を1秒毎に計算し, 5分間の移動平均を施し, 2015年1月から12月の空振活動を推定した.
気象庁によって報告されている2015年爆発記録737回のうち, 636回の爆発がTKTの稼働中に発生し,その全てについて空振が観測されていた.気象庁瀬戸観測点での空振記録が最も小さかったもの(1.3 Pa)でも, 桜島方向(300°N)から有意にシグナルが到来していることを確認した. また, 振幅の大きい爆発の場合, Yokoo et al. (2014) で指摘されているように, 観測周辺の地形からの反射波が到来していることも確かめられた. 反射波は主に180°Nから130°Nから到来しており, これらは高峠南・南東の横岳・高隈山からの反射波と考えられる. また, 80°N方向からの反射波は比較的弱く, これらは串良川方向で, 周囲より標高が低くなっているためだと考えられる. 次に, 相互相関関数を用いて, 桜島からの空振エネルギーを連続的に解析した. 桜島から到来する微弱な空振活動と, 観測点付近のノイズを区別するために,先述の反射波の弱い串良川方向 (80°N)から到来することを想定したエネルギーを参考値とした. この結果, 爆発・噴火記録の合間にも, 微弱な空振活動が間欠的または連続的に記録されている時期があることがわかった. このような微弱な空振活動は2015年6月ごろまで, 噴火間に活発に発生するが, 7月以降はほとんど見られなくなる. 今後は, 桜島近傍の観測点のデータや, 昭和火口内撮影動画などと組み合わせて, TKTで記録された噴火間の微弱な空振活動時にどのような表面現象が対応しているのかを明らかにし, さらに噴火周期や規模にどの程度影響しているのかを検討していきたい.