JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] [JJ] 活動的火山

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、青木 陽介(東京大学地震研究所)

[SVC47-P31] 口永良部島2015年噴火に伴う火砕流堆積物の特徴

*下司 信夫1伊藤 順一1 (1.産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

キーワード:火山、噴火、火砕流、口永良部島火山、マグマ水蒸気噴火

口永良部島火山新岳火口では2015年5月29日に強い爆発を伴うマグマ水蒸気噴火が発生した.この噴火では火口から全方向に火砕流が発生し,北西および南西方向に流下した火砕流はそれぞれ2㎞以上離れた海岸線まで到達し,一部はさらに海面を流走した.この火砕流の特徴として,厚いブロックアンドアッシュフロー堆積物は火口周辺のごく限られた領域にのみ分布し,流域のほとんどの場所では薄い堆積物のみがもたらされたことがあげられる.その一方,北西の向江浜方面に向かった流れでは,薄い堆積物のみが残されている場所でもほとんどの樹木が倒伏するほど強い流れが発生したことが直後の観察から推測された.火砕流流域ではほとんど森林火災が発生せず、また樹木の焼損も認められなかったことなどから、火砕流堆積物の温度はマグマ性の火砕流のそれに比べると低かったと推測されたが、火砕流で覆われた地域の樹木はほぼ枯死し、また縁辺部で巻き込まれた人が火傷を負う程度の温度があったことが推測された.

今回、火砕流の流下地域において、堆積物の分布、樹木の損傷状況、熱的影響の痕跡などを調査した.その結果,火砕流末端部では樹木の焼損などは認められなかったが、火砕流の流下地域において樹木の梢部分はほぼ完全に枯死しており、火砕流に直接さらされた部分では熱的な影響が強かったことが示唆された.樹木へのダメージは火砕流の流域に限られ、火砕流から舞い上がった噴煙からの降灰に覆われた地域にはそうした影響は認められなかった.また、火砕流に覆われた地域では、ナイロンロープなど低融点の物品に融けて変形しているものがみられた.火砕流末端部での堆積物は火口から約2㎞の向江浜地区では層厚5㎝未満の礫混じり火山砂層として残存している.堆積物には多量の樹枝や樹皮、葉の破片が取り込まれており、流路の樹林を破壊しながら火砕流が流下・定置したことを示している.向江浜地区での堆積物は基本的に上方に向かって細粒化し、基底部には最大粒径1.5㎝の礫が含まれている.このような特徴は、高速で短時間の流れによって堆積物が運搬・定置したことを示しており、監視カメラ等の映像から推測された火砕流の挙動と整合的である.