JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] [JJ] 活動的火山

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、青木 陽介(東京大学地震研究所)

[SVC47-P38] 泡の膜の振動の音の解析

*山河 和也1市原 美恵1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:泡、音、火山

前書き
 火山における脱ガスの形式には, 浸透流などによるPassive degassingや気泡形態などを介するActive degassingが提案されている. Active degassingは計測可能な空振を伴い, 泡の空振からガス流量を決める研究が行われている(Vergniolle and Brandeis, 1996; Johnson et al., 2008; Bouche et al., 2010). 泡は様々なメカニズムで音を出すが, ガス流量推定では, ある特定のメカニズムが仮定されている. このため, 観測データから特定のメカニズムの信号を抜き出す必要があるが, メカニズムと波動の特徴を対応づけるための理解は十分ではない. 本研究では, 泡の音からどのような火山活動情報が得られるのかを詳しく知るため, 室内実験の泡音をカメラ映像と比較し, また泡音のモデル計算を行うことで, 泡の音の特徴と発生メカニズムを調べた.

実験概要と観察結果
 泡の音の発生メカニズムや特徴は, 流体のレオロジーによって異なることが知られている. 本研究では先行研究(Lyons et al., 2013)で使用された非ニュートン性流体を用いる. 流体の下から一定流量で空気を送り込み, 発生した泡の挙動をハイスピードカメラで撮影し, 発生する音を流体の直上に設置したマイクを用いて記録した.
 カメラ映像と音波データを比較した結果を記す. 主要な音波発生過程は, (1)泡がノズルから離れるとき, (2)泡が液内から液表面へ上昇するとき, の2つだった. 本実験では泡が破裂するときの音は信号として観測されなかった. (2)の信号には明瞭な特徴が見られた. これに注目してどのような情報が読み取られるのかを考えた. その特徴を以下にまとめる.
 周波数の特徴:周波数が時間とともに高くなる.
 振幅の特徴:単純なイベントでは紡錘形の振幅変化が起こり, 泡の全体積の半分から2/3程度が表面に出ている時に最大振幅になることが多い. 最大振幅は必ずしも泡の半径に比例しない. 最大振幅の後には振幅の急減衰があり, 液膜にものが触れた時にも対応する振幅の急減衰があった. 泡が割れると振幅の減衰が早まった. 割れた状態で液表面を上昇する泡の音の振幅はかなり小さい. 泡の合体などの液内で振動が励起されるイベントが発生した泡が表面に出た時に大きな音を出した.

モデル計算
 泡の膜が振動することによって発生している(2)の音について, 典型的なイベントを数理モデルで再現することを試みた. 同じメカニズムを議論した先行研究(Vergniolle and Brandeis, 1996)を参考に球殻の振動方程式を組み立て, さらに泡膨張に伴う励起項を取り入れた. 観測点が遠地であると仮定して, Blackstock(2000)を参考に球殻の微小変位から観測圧力へ変換した.
 泡の表面に出ている部分をhead, 液内に残っている部分をtailと呼ぶことにする. 解析によって, 泡の音の変化を時系列順に(A)headの上昇, (B)tailの吸収, (C)形状安定, という3つの過程に分けると, (2)の音の典型例が再現できることが分かった. 泡の振動は基本的に減衰振動であるが, (A), (B)でheadの半径が成長している時に限り振動が成長した. 観測圧力はheadの体積と微小変位の加速度に比例するため, head成長時には増大, 成長終了時には減衰する紡錘形の振幅変化となった. 泡の上昇や形状変化をモデルに取り入れることで外部励起がなくても振動が起こることが確認された. 初期に振動を発生する条件を与えた場合では, 振幅変化の特徴は同じだが振幅の絶対値が大きくなる波形が出力された.
 以下がモデルから示唆された. 液内にいる時に振動が励起されていることが, 十分な振幅の音を発生する重要な条件である. 周波数の変化は(A)ではheadとtailの体積分率が支配的, (B)ではheadの体積が支配的, (C)では泡の膜厚変化が支配的である.

考察と今後の課題
 液体表面での泡の振動音の特徴から, 泡の体積を推定することができるかどうか考察する. 振幅は, 泡が表面に顔を出した時の状態によって大きく異なる. 従って, 音の強度をそのまま体積に直すことはできない. 周波数の変化は, 次第に高くなることがこのメカニズムによる音の特徴である. 振動初期の周波数変化はheadの半径の変化によるものと考えられるので, それから泡の体積に関する情報を得ることができるかもしれない. 今後, 検討していきたい.