JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC49] [JJ] 火山防災の基礎と応用

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、佐々木 寿(アジア航測株式会社)、座長:木川田 喜一(上智大学理工学部)、座長:伊藤 英之(岩手県立大学総合政策学部総合政策学科)

11:30 〜 11:45

[SVC49-04] 近年の霧島硫黄山の活動に伴う低温噴気活動と地表面からの硫化水素拡散放出現象

*木川田 喜一1 (1.上智大学理工学部)

キーワード:霧島硫黄山、硫化水素、火山ガス災害、低温噴気、えびの高原、ガス中毒

霧島山系の硫黄山では2013年12月以降,火山性地震が増えるなど活動活発化の兆候が認められ,2015年12月には火口内に噴気が認められるようになった.その後,噴気活動はさらに活発化を見せ,火口周辺に熱異常域が広がるに至っている.この火口域の噴気活動に伴うように,山頂西側外斜面からその下方にかけて,高濃度に硫化水素を含む,噴気を伴わない低温ガス放出域も認められるようになった.この低温ガス放出域はかつて噴気活動のあった酸性変質地帯内にあるが,現状では噴気も熱異常も確認できず,火山ガスが地表面から拡散放出しているものと見られる.また,変質地帯内にはこの火山ガス放出に関係すると思われる,溶存硫化水素濃度が高く,湧出後に硫黄の沈殿が析出する小規模な酸性湧水の存在が認められる.
硫黄山は多くの観光客・登山客が訪れる「えびの高原」に位置し,噴気地帯や低温ガス放出域は観光客が多く利用する県道や登山道・遊歩道に接している.このため宮崎県は,2016年3月から定期的に噴気地帯および低温ガス放出域での硫化水素ならびに二酸化硫黄の大気中濃度測定を実施している.当初は地表30 cmで200 ppmを越えることのなかった低温ガス放出域内の大気中硫化水素濃度は,2016年10月以降急上昇し,最大1400 ppmが観測されるに至った.宮崎県は火山ガス濃度に応じた道路ならびに登山道・遊歩道の規制方針を策定し,2017年1月からは低温ガス放出域の定点2カ所において硫化水素濃度の自動測定も開始した.
講演者は宮崎県とともに2016年3月以降,観光客の安全確保の観点から硫黄山における大気中硫化水素濃度の変化を見守っており,講演では硫化水素濃度の極めて高い低温噴気活動および火山ガス放出現象の推移を報告するとともに,宮崎県ならびに地域コミュニティによる火山ガス防災への取り組みについて紹介する.