JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC49] [JJ] 火山防災の基礎と応用

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、佐々木 寿(アジア航測株式会社)、座長:佐々木 寿(アジア航測株式会社)、座長:佐伯 和人(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)

14:45 〜 15:00

[SVC49-11] 阿蘇火山2016年10月8日噴火の降下火山礫で生じた被害の特徴

*佐々木 寿1成毛 志乃1千葉 達朗1 (1.アジア航測株式会社)

キーワード:降下火山礫、建物被害、阿蘇火山

御嶽山2014年噴火で火口近傍の登山客が多数負傷したことを受け,活火山における退避壕等の充実に向けた手引き(内閣府(防災担当),2015)が作成された.一般的に大きな噴石は居住地まで到達しないことが多いため,居住地に退避壕が設置された火山は少ない.一方,上空の風に流された火山礫が遠方まで到達することがあり,気象庁は小さな噴石と呼んでいる.例えば,新燃岳2011年噴火では,火口から北東約16 km地点まで,直径1.5~5 cmの小さな噴石(火山礫)が到達し,車の窓が割れるなどの被害が生じた(気象庁,2011).気象庁が発表する降灰予報では,降灰の範囲に加え,小さな噴石の落下範囲も発表される(Hasegawa et al., 2015).富士山広域避難計画(案)(富士山火山防災対策協議会,2014)では,宝永規模の噴火が発生すると,神奈川県まで小さな噴石(火山礫)が到達することが示されている.風に流された火山礫が建物等へ与える影響について検討された事例は少なく,特に物性との関係性は不明な点が多い.阿蘇火山2016年10月8日噴火では,降下火山礫が中岳火口の北東側に分布した.降下火山礫は数km以上離れた居住地域まで到達し,建物や農業施設等への被害が生じた.我々は噴火の翌日の2016年10月9日に現地調査を行った.本研究では2地点の被害状況について報告する.阿蘇青少年交流の家(中岳火口から北東へ約4.5 km)では,本館棟1階の網戸と窓ガラスが1枚破損しており,窓枠には3 cm程度の火山礫が数個落ちていた.網戸に形成された穴と窓ガラスの衝突中心から火山礫は北から落下してきたと推定され,中岳火口の方向とは一致しない.阿蘇青少年交流の家の渡り廊下(通路シェルター)では、屋根が複数の地点で破損していた.渡り廊下の屋根は,厚さ3 mmのポリカーボネイト板である.渡り廊下の被害は偏りが多く,破損が多かった地点は,ポリカーボネイト板が紫外線劣化している箇所であり,1 m四方に5点程度の穴(直径10 cm程度)が空いていた.破損にはポリカーボネイト板の紫外線劣化の程度が関係していると考えられる.中岳火口から北東へ約7 kmの地点では太陽光パネルの被害を確認した.道路から屋根に設置された太陽パネルが観察でき,火山礫の落下により破損していた.観察できる範囲で破損状況を集計したところ,384枚中56枚の太陽光パネルが破損していた.金子(2017)によると,この地点周辺の太陽光パネルの被害枚数は1636枚で,被害額は1億円に達すると報告されている.降下火山礫は火口から離れた地点でも被害を及ぼす可能性があるため,今後は降下火山礫の衝突エネルギーとガラスやポリカーボネイト板等の強度との関係についての解析を進めていきたい.