JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC49] [JJ] 火山防災の基礎と応用

2017年5月20日(土) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、佐々木 寿(アジア航測株式会社)

[SVC49-P07] UAV撮影による阿蘇山2016年10月8日噴火の状況把握

*千葉 達朗1佐々木 寿1荒井 健一1佐野 実可子1 (1.アジア航測株式会社)

キーワード:UAV、SfM、阿蘇山

1.はじめに
火山防災にとって、噴火直後の火口付近の状況把握は重要な課題である。しかし、噴火の明らかな終息までは、現地への立ち入り調査や有人航空機による火口上空の飛行もリスクを伴う。そのため、火口から離れた地点からの斜め写真撮影や、高高度からのレーザ計測が行われてきた。しかしながら、高解像度衛星写真は真上から撮影できるが、雲の影響を受けやすいという難点があり、火口付近の詳細な情報を捉えるには不十分であった。これらの問題の解決には、無人航空機(UAV)を使用した、低空からの撮影と3Dモデル作成が有効と考えられる。
2.阿蘇山噴火とUAV撮影
阿蘇山は2016年10月8日未明に噴火をした。噴出された火山灰は上空11000mに到達し、四国方面まで拡散した。噴火後のヘリからの映像からは、火口縁やその周辺に火山弾や降灰、ロープウエイの駅舎の屋根に大きな穴など、噴火前から大きく変わった状況が確認された。
そこで、緊急的に火口周辺2km四方の状況を把握するために、UAVによる撮影を行った。3Dモデルの作成や、被害状況の把握には、地上解像度1cm程度の画像が、一点につき5枚以上必要である。これらの条件を満たすためには、24mmのレンズを装着したフルサイズのCCDをもつ1眼レフで、対地高度は350m以下を保つことが必要であった。UAVのペイロードやバッテリーの持続時間を考慮すると、飛行時間は15分/回となり、火口にできるだけ近い、安全な地点からの離陸が必要である。そこで、火口から1.3kmのロープウエイの下の駅舎前の駐車場を離陸地点として選定した。
しかし、噴火直後に火山噴火警戒レベルは3となり、立ち入り禁止区域になっていたため、阿蘇火山防災会議協議会、京都大学火山研究センター、気象庁と協議の上、特別に入域の許可をいただき、噴火から2ヵ月後の12月8日に撮影を行った。
3.データの処理と判読
撮影された1000枚以上の写真から、SfM処理によって、3Dモデルを構築した。さらに20cmDSMデータとオルソフォトを作成し、赤色立体地図とあわせて、地形判読をおこなった。火口近傍の谷で、流れの堆積物と思われる、火砕流あるいは泥流のような微地形を確認することが出来た。また、火山弾やそれの落下時に形成されたクレーターも確認できた。一方、噴火後2ヶ月の間に形成された、ガリー侵食や降下火山灰の2次移動のために、クレーターのうちのいくつかは埋席積されている状況も確認できた。阿蘇山は2015年にも噴火しており、直前の地形との比較による噴出量の計算は、新たなモデル作成が必要で現在作業中である。
4.今後の課題
噴火を認知してから実際の撮影まで、2ヶ月を要した。これは、立ち入りのための関係各機関との協議や飛行申請と許諾等の手続きにかかったことが大きな理由である。あらかじめ、噴火時の緊急撮影のためのルールを定めておくか、危険区域外からも長距離・長時間自律飛行できるような、機体の開発が課題である。本調査は、文部科学省の次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトの一環でおこなった。