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[SVC50-03] 流紋岩溶岩のキュリー温度以下における回転運動―神津島砂糠山溶岩の例―
キーワード:流紋岩溶岩、変形、古地磁気、神津島
非常に粘性の高い流紋岩溶岩は,厚さが100m以上にもなることが普通で,その大部分がガラス質部から構成されることも多い (例えば Manley and Fink, 1987; 古川・鎌田, 2005).厚いガラス質が発達するのは,高粘性により結晶化の進行が遅いことが原因だと考えられる.このようにガラス状態が長く続くので,溶岩の流動が長期にわたることが観測されている(Tuffen et al., 2013).これらのことから,溶岩上部においては冷却してガラス転移温度を下回った後も,溶岩中心部の長期の流動により,変形が続くことが予想される.本研究では,神津島砂糠山に分布する流紋岩溶岩において,ガラス質を中心とする溶岩上部の変形を,古地磁気学的手法により推定する.これは,目撃例のほとんどない流紋岩溶岩の挙動を推定する上で重要である.砂糠山溶岩は,溶岩上部の厚さ150m(一色, 1982)が露出しており,ESR年代で5-7万年前(横山ほか, 2004)である.本研究では,厚さ約80mの溶岩上部ガラス質部から軽石,溶結自破砕角礫,非溶結自破砕角礫,黒曜石,その近傍から灰白色の厚さ1m以内の破砕脈(一色(1982)の灰白色レンズ状岩体),溶岩内部から結晶質部を採取し,熱残留磁化(TRM)を測定した.TRM測定の結果,主要な磁性鉱物はマグネタイトであった.そのキュリー温度は約580℃なので,それより低温の変形を検知できる.また成分解析から,溶岩が完全に冷却して以降は現在まで,回転運動が起きていないことが示された.
上部ガラス質部の試料はすべて400℃以上において30°程度の2回のTRM方位の変化がみられた.これはガラス転移温度以下と考えられるので,溶岩上部の固結後,冷却中の高温状態において,2回回転運動が起きたことを意味する.一方,結晶質部と破砕脈ではTRM方位に変化はみられなかった.上部ガラス質のTRM方位変化を回転運動と想定すると,2回の方位変化はどちらも,それぞれ同一軸まわりの回転運動で説明される.このことから,厚さ約80mの上部ガラス質部は,マグネタイトのキュリー温度である580℃から400℃までの間に2回,同一軸まわりの回転運動が起こったと考えられる.一方で,結晶質部と破砕脈はTRM方位に変化がないことから,上部ガラス質部に回転運動が起こった時点では,580℃以上にあったと考えられる.
本研究では古地磁気学的手法により,神津島砂糠山に分布する流紋岩溶岩の定置過程において,キュリー温度以下に冷却固結した上部ガラス質部が,中心部の流動により回転した可能性をとらえた.また,同じガラス質部に位置する破砕脈は他のガラス質部とは異なり,局所的に高温状態にあった可能性が考えられる.
上部ガラス質部の試料はすべて400℃以上において30°程度の2回のTRM方位の変化がみられた.これはガラス転移温度以下と考えられるので,溶岩上部の固結後,冷却中の高温状態において,2回回転運動が起きたことを意味する.一方,結晶質部と破砕脈ではTRM方位に変化はみられなかった.上部ガラス質のTRM方位変化を回転運動と想定すると,2回の方位変化はどちらも,それぞれ同一軸まわりの回転運動で説明される.このことから,厚さ約80mの上部ガラス質部は,マグネタイトのキュリー温度である580℃から400℃までの間に2回,同一軸まわりの回転運動が起こったと考えられる.一方で,結晶質部と破砕脈はTRM方位に変化がないことから,上部ガラス質部に回転運動が起こった時点では,580℃以上にあったと考えられる.
本研究では古地磁気学的手法により,神津島砂糠山に分布する流紋岩溶岩の定置過程において,キュリー温度以下に冷却固結した上部ガラス質部が,中心部の流動により回転した可能性をとらえた.また,同じガラス質部に位置する破砕脈は他のガラス質部とは異なり,局所的に高温状態にあった可能性が考えられる.