11:30 〜 11:45
[SVC50-10] 阿蘇-4火砕噴火直前に噴火した大峰火山
メルト包有物組成からみるマグマ供給系の変遷
キーワード:大峰火山、メルト包有物、蜂の巣状構造
阿蘇-4火砕噴火直前にカルデラ縁西方5 kmで,大峰火砕丘の形成とそれに伴う高遊原溶岩の流出が起こり,比高200 mの火砕丘と厚さ約100 m,表面積28 km2の塊状溶岩からなる溶岩台地を形成した(渡辺・小野,1969;渡辺,1974).阿蘇-4軽石と高遊原溶岩は共に普通角閃石含有斜方輝石単斜輝石デイサイトで似通った化学組成であるが(Watanabe,1979),前者が爆発的な噴火を起こしたのに対し,後者は対照的に流出的な噴火を起こしている.
鉱物組み合わせは大峰スコリア・高遊原溶岩共に斑晶の斜長石,単斜輝石,斜方輝石,不透明鉱物と微斑晶に普通角閃石が確認された.モード組成の結果から,石基が約80 %,斑晶が約20 %の割合で含有している.斑晶の割合はそれぞれ,斜長石が16 %,単斜輝石・斜方輝石が1.5 %,不透明鉱物が1 %である.斑晶は一方向に揃った流理構造を示す.斜長石はスコリア・溶岩共に数多くが蜂の巣状構造を有している.
高遊原溶岩の全岩化学組成 (SiO2 = 63~65 wt.%) と大峰スコリアの全岩化学組成 (SiO2 = 61~65 wt.%) では組成の違いは見られなかった.阿蘇-4噴出物(山崎ほか,2015)と比較すると,阿蘇-4のトレンドと一部重なるが,いくつかの元素(TiO2,Na2O,MgO)でトレンドから外れるものがあった.
斜長石は清澄なものと蜂の巣状組織をもつものの2種類が確認される.斜長石斑晶組成はAn52-An58にメインのピークを持ち,An45に小さなサブピークをもつような分布を示す.An45の組成をもつ斜長石は蜂の巣状組織をもっており,逆累帯の組成を示す.また,輝石の組成は,単斜輝石のピークがMg# = 78~80でシングルピークをもち,正累帯を示す.斜方輝石はピークがMg# = 75~76で正累帯,逆累帯を示す2種類のものが存在し,両輝石の平衡関係は前者と単斜輝石は平衡なのに対し,後者と単斜輝石は非平衡を示した.
鉱物中のメルト包有物の組成はほとんどがSiO2 = 68~70 wt.%に集中するが,斜方輝石中のメルト包有物で一部SiO2 = 72~74 wt.%の組成のものが見いだされた.石基ガラスの組成はSiO2 = 69~71wt.%で,シリカに乏しいメルト包有物の組成とほぼ同じである.また,ホスト斜長石のAn組成と斜長石中のメルト包有物の組成から,蜂の巣状組織をもつ斜長石のメルト包有物の組成が,Anに富む斜長石中のメルト包有物の組成トレンドと異なる値を示した.阿蘇-4のメルト包有物の組成(SiO2 = 71~74 wt.%)と比較すると,斜方輝石に含まれるシリカに富むメルト包有物は同じシリカ組成幅を示すが,全鉄・アルミニウムなど他の組成値が異なる.メルト包有物中の含水量は0.3~3wt.%で,多くのメルト包有物では1wt.%かそれ以下であった.阿蘇-4のメルト包有物中の含水量は3~5 wt.%で阿蘇-4の方が高含水量であることがわかった.
高遊原溶岩のSr同位体比はAso-4軽石のSr同位体比とほぼ等しい値をとる(Kaneko et al., 2007 ; Miyoshi et al., 2013).このことから高遊原溶岩とAso-4火砕流堆積物は共通の深部起源物質由来であり,異なる起源のマグマや浅部地殻構成物を混成していないことが推察される.大峰スコリアのメルト包有物の測定結果によって,阿蘇-4のメルト包有物とのトレンドの違いから,大峰火山の噴火が阿蘇-4巨大マグマ溜まりとは異なった浅部マグマ供給系で独立して分化したことが推測される.さらに大峰スコリアの斜方輝石のメルト包有物組成において斜長石・単斜輝石と異なる組成を示したことや,斜長石が2つの組成をもち,蜂の巣状組織をもつAnに乏しい斜長石は逆累帯を示すことから,マグマ混合現象が起こったことが考えられる.
鉱物組み合わせは大峰スコリア・高遊原溶岩共に斑晶の斜長石,単斜輝石,斜方輝石,不透明鉱物と微斑晶に普通角閃石が確認された.モード組成の結果から,石基が約80 %,斑晶が約20 %の割合で含有している.斑晶の割合はそれぞれ,斜長石が16 %,単斜輝石・斜方輝石が1.5 %,不透明鉱物が1 %である.斑晶は一方向に揃った流理構造を示す.斜長石はスコリア・溶岩共に数多くが蜂の巣状構造を有している.
高遊原溶岩の全岩化学組成 (SiO2 = 63~65 wt.%) と大峰スコリアの全岩化学組成 (SiO2 = 61~65 wt.%) では組成の違いは見られなかった.阿蘇-4噴出物(山崎ほか,2015)と比較すると,阿蘇-4のトレンドと一部重なるが,いくつかの元素(TiO2,Na2O,MgO)でトレンドから外れるものがあった.
斜長石は清澄なものと蜂の巣状組織をもつものの2種類が確認される.斜長石斑晶組成はAn52-An58にメインのピークを持ち,An45に小さなサブピークをもつような分布を示す.An45の組成をもつ斜長石は蜂の巣状組織をもっており,逆累帯の組成を示す.また,輝石の組成は,単斜輝石のピークがMg# = 78~80でシングルピークをもち,正累帯を示す.斜方輝石はピークがMg# = 75~76で正累帯,逆累帯を示す2種類のものが存在し,両輝石の平衡関係は前者と単斜輝石は平衡なのに対し,後者と単斜輝石は非平衡を示した.
鉱物中のメルト包有物の組成はほとんどがSiO2 = 68~70 wt.%に集中するが,斜方輝石中のメルト包有物で一部SiO2 = 72~74 wt.%の組成のものが見いだされた.石基ガラスの組成はSiO2 = 69~71wt.%で,シリカに乏しいメルト包有物の組成とほぼ同じである.また,ホスト斜長石のAn組成と斜長石中のメルト包有物の組成から,蜂の巣状組織をもつ斜長石のメルト包有物の組成が,Anに富む斜長石中のメルト包有物の組成トレンドと異なる値を示した.阿蘇-4のメルト包有物の組成(SiO2 = 71~74 wt.%)と比較すると,斜方輝石に含まれるシリカに富むメルト包有物は同じシリカ組成幅を示すが,全鉄・アルミニウムなど他の組成値が異なる.メルト包有物中の含水量は0.3~3wt.%で,多くのメルト包有物では1wt.%かそれ以下であった.阿蘇-4のメルト包有物中の含水量は3~5 wt.%で阿蘇-4の方が高含水量であることがわかった.
高遊原溶岩のSr同位体比はAso-4軽石のSr同位体比とほぼ等しい値をとる(Kaneko et al., 2007 ; Miyoshi et al., 2013).このことから高遊原溶岩とAso-4火砕流堆積物は共通の深部起源物質由来であり,異なる起源のマグマや浅部地殻構成物を混成していないことが推察される.大峰スコリアのメルト包有物の測定結果によって,阿蘇-4のメルト包有物とのトレンドの違いから,大峰火山の噴火が阿蘇-4巨大マグマ溜まりとは異なった浅部マグマ供給系で独立して分化したことが推測される.さらに大峰スコリアの斜方輝石のメルト包有物組成において斜長石・単斜輝石と異なる組成を示したことや,斜長石が2つの組成をもち,蜂の巣状組織をもつAnに乏しい斜長石は逆累帯を示すことから,マグマ混合現象が起こったことが考えられる.