JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC51] [JJ] 1986伊豆大島噴火を読み直す、温故知新

2017年5月21日(日) 09:00 〜 10:30 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:栗田 敬(東京大学地震研究所)、渡辺 秀文(東京都総務局総合防災部)、座長:栗田 敬(東京大学地震研究所)、座長:渡辺 秀文(東京都総務局総合防災部)

09:45 〜 10:00

[SVC51-04] 伊豆大島1986年B噴火の「準プリニー式噴煙」

*萬年 一剛1 (1.神奈川県温泉地学研究所)

キーワード:準プリニー式噴火、噴煙柱、風

伊豆大島1986年の一連の活動でクライマックスとなったB噴火は、地上からの観測、大量の報道映像に加え、衛星画像やレーダーエコーなどリモートセンシングデータの利用が可能になってからはじめて発生した比較的大きい噴火であった。このため、この噴火以前にはない、様々な角度から研究がされてきたが、その噴火像にはいまだに不明確なことが多く残されている。その1つが、噴火を記述する重要なパラメータである噴煙高度である。
 この噴火の噴煙高度は、写真の記録からB噴火当日(11月21日)の17:00-17:20ごろに16.5 km(早川,1987)、17:02に12km(平田,1989)、16:30に7km(澤田,1998)などと見積もられている。一方、静止気象衛星「ひまわり」の赤外画像からは、18時における噴煙の最低温度が-33℃と見積もられており、この温度が大気と平衡であると仮定すると、噴煙高度は7kmから9kmと推定される(澤田,1998)。澤田(1998)が解釈した噴煙分布から噴煙の移流速度を求めると、時速200 km前後であるが、これは上空8km前後の風速で、最低温度からの見積と調和的である。
 一方、Mannen (2006)は風に影響されない垂直な噴煙柱モデルを仮定し、島内で測定された堆積量の減衰曲線の傾きから、噴煙柱の高度を13.8kmと計算した。この研究では、島内に降り積もった火山灰が噴煙の傘型領域から落下したものと仮定していたが、その後Mannen (2014)はTephra2を使ったシミュレーション解析により、島内に堆積した火山灰のほとんどは高度8km以下からもたらされていることを明らかにし、Mannen (2006)の見積が成り立たないことを示した。
 Woodhouse et al. (2013)は、風の影響を受けて曲がる噴煙柱モデルを構築した。八丈島の高層気象データを用いて計算すると、噴煙高度8kmで噴出率は1x107 kg/s、12kmで1x108 kg/sと見積もられる。この噴火の総噴出量は1.4x1010kgと見積もられるから(Mannen and Ito, 2007)、継続時間は噴煙高度8kmの時に約20分、12kmの時に約2分程度となる。
 この噴火は、16:15ごろ始まり、17:00前後にクライマックスを迎え、22時頃迄に収束したとされるので、5〜6時間程度の継続時間であったと考えられる。したがって、噴煙高度12 kmは非常に考えにくく、噴煙高度8kmだとしてもその継続時間は17時前後の20分以下で、それ以外のほとんどの時間、噴出率は1〜2桁低い1x106 kg/s(噴煙高度5km前後)から1x105 kg/s(噴煙高度4km前後)程度に留まり、噴出量全体にはわずかな貢献しなかった可能性が高い。