JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC51] [JJ] 1986伊豆大島噴火を読み直す、温故知新

2017年5月21日(日) 09:00 〜 10:30 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:栗田 敬(東京大学地震研究所)、渡辺 秀文(東京都総務局総合防災部)、座長:栗田 敬(東京大学地震研究所)、座長:渡辺 秀文(東京都総務局総合防災部)

10:15 〜 10:30

[SVC51-06] 火山島活動の周辺の海からの観測の重要性について

*浜野 洋三1杉岡 裕子3市原 美恵2 (1.海洋研究開発機構地球深部ダイナミクス研究分野、2.東京大学地震研究所、3.神戸大学理学研究科惑星学専攻)

キーワード:火山、伊豆大島、火山活動監視

我々は、ウェーブグライダーを用いた離島火山モニタリングシステムの開発を進めてきた.本システムは、無人で自律的に海面を運航できる海洋プラットフォームとしてウェーブグライダーを用い、画像撮影、震動観測、空振観測、及び山体崩壊による津波の発生を検知するための波浪観測を行い、これらの観測データをリアルタイムに陸上まで通信衛星経由で伝送する機能を持っている。この離島火山監視システムの開発の過程で、西之島周辺で2回のマイクロフォンとハイドロフォンを用いた空中及び水中音波の観測を行った. 1回目は西之島がまだ活発な火山活動を続けていた2015年2月に、海洋調査船「かいれい」によるKR15−03航海中に、島の中心から東方約7km水深1318mの場所で、船上での低周波マイクロフォンによる空中音波観測と、船から海面下10mに下ろしたハイドロフォンによる水中音波観測を同時に行った.この観測記録では、船上においたマイクロフォンと近くの海底に置かれたOBSが、火山の噴火に密接に関係して火山体浅部で発生した空振と爆発地震を主に記録しているのに対して,水中のハイドロフォンの記録で顕著なのは、約20分間継続するハーモニック微動と、短周期の火山性地震であった。この結果は、海面近くに置かれたハイドロフォンが、火山体深部の地震・微動活動を選択的に捕らえていることを示している。 2回目は、2016年10月に実施された新青丸によるKS-16-16航海で、西之島周辺海域で、新たに開発・製作された離島火山モニタリングシステムの短期間の運用を行ったが、このシステムに取り付けたマイクロフォンとハイドロフォンにより、西之島を半径約5kmの円軌道で周回する間に約30時間の観測を行った。この時期には噴火活動はなくマイクロフォンによる空震は観測されなかったが、ハイドロフォンには深部の地震活動が、観測記録されていた。これらの2回の観測は、ハイドロフォンによる海面付近での水中音波の観測が、火山体深部の活動を捕らえるために極めて有効であることを示している。
 以上の結果は、離島火山モニタリングシステムによる島の周辺海域での常時監視が、無人の小さな火山島だけではなく、伊豆大島のような大きな火山島においても有意義であり、島内での観測に対して相補的な役割を果たすことを示唆するものである。特に、周辺の海からのハイドロフォン観測では、海面より下の火山体内部の地震動が、減衰の小さい水中音波として伝わってくるために、島の内部の陸上の観測点に比べて、深部の微動や地震活動をより高感度で検知出来る可能性を持つ。また本システムのプラットフォームであるウェーブグライダーは、島の周辺をあらかじめプログラムされたトラックに従って自律的に航走するが、陸上からの指令によりその経路を変更することができるので、火山活動の推移に併せて、必要な場合には随時移動して観測ができることも、本システムの特徴である。