JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC51] [JJ] 1986伊豆大島噴火を読み直す、温故知新

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:栗田 敬(東京大学地震研究所)、渡辺 秀文(東京都総務局総合防災部)

[SVC51-P08] 伊豆大島火山の噴火警戒レベルの判定基準の精査について

*山里 平1坂井 孝行2宇平 幸一2渡辺 秀文3 (1.気象研究所、2.気象庁火山課、3.東京都総合防災部)

キーワード:噴火警戒レベル、伊豆大島、判定基準、火山性微動、三原山、割れ目噴火

1.はじめに
 御嶽山の噴火災害を受けて、気象庁は、全国の火山の噴火警戒レベルの判定基準の精査を行い、精査した判定基準の公表を順次行っている(山里ほか、2016)。
 伊豆大島についても、東京都等で構成する火山防災協議会における火山防災対策の検討に合わせて、有識者の意見も聞きながら、噴火警戒レベルの判定基準の精査作業を進めてきた。本発表では、精査作業の概要について紹介する。

2.精査の方針
 伊豆大島の噴火警戒レベルは、火山噴火予知連絡会伊豆部会が2008年にまとめた「伊豆大島の噴火シナリオ」をベースとして、大島町等の関係機関の防災対応を考慮しながら、レベル1~5の5段階が定められており、それぞれのレベルに引き上げる基準が定められている。今回の精査においては、従来の判定基準のうち、主に、以下の3点を改善することで進めてきた。その他、関連して、数値基準も含め再検討するとともに、曖昧な部分について出来る限り明確化するようにした。
(1)三原山の噴火に伴うレベルの運用
(2)カルデラ内噴火~割れ目噴火に伴うレベルの運用
(3)従来想定していなかった大規模噴火に伴うレベルの運用
 想定する噴火シナリオは、伊豆部会の噴火推移のイベントツリーをもとにした。山頂噴火ケースと山腹噴火ケースに分かれるが、山腹での噴火のうちでも、居住地域に近い場所での噴火については、居住地域から遠い場所での噴火と区別して記述することとした。そのため、判定基準は、次の3種類の噴火に対応できるようにした。
(a)三原山山頂~カルデラ内での噴火
(b)カルデラの外側で居住地から比較的離れた場所での噴火
(c)居住地域に近い場所での噴火

3.三原山噴火を想定した判定基準の明確化
 1986年の三原山の噴火先駆現象として発生した火山性微動について、1986年事例(例えば橋本ほか、1989)を参考に、レベル2への引き上げ基準を明確化した。具体的には、噴火の1~2ヶ月前にみられら火山性微動の振幅増大や連続微動の発生を基準とした。それに加え、山頂火口内での顕著な噴気の発生や温度上昇、火映現象、地震の多発を基準とし、そのいずれかが観測された場合にレベル2に引き上げることとした。
 また、従来基準では三原山のストロンボリ式噴火はレベル3の基準となっていたが、三原山のストロンボリ式噴火では大きな噴石の飛散距離は火口から概ね1km以内であり、レベル2の範疇にとどめることとした。ただし、溶岩が三原山火口からあふれ出してカルデラ床に流下し、火口から1kmを超えるような場合、爆発力が大きくなって火口から1kmを超すような噴火が頻発した場合はレベル3とすることとした。
 以上のレベル判定基準は、1986年噴火で観測された諸現象をもとにしているが、1950年から1974年の三原山の噴火活動において現在のレベル判定基準でどのようにレベルが判断できるかも検証した。1950年噴火開始当初は、大島測候所のウィーヘルト地震計しか器械観測がなく、前兆現象はあきらかではない。しかし、その後の測候所の臨時の高感度地震計などによる観測結果によると、いずれの噴火も前述した判定基準のいずれか(例えば、火山性微動の振幅増大、連続微動、火映現象)を満たした後に発生していることがわかった。

4.カルデラ内噴火~割れ目噴火を想定した判定基準の明確化
 1986年の割れ目噴火のようなケースでの噴火警戒レベルの適用についても見直しを行っている。具体的には、1986年11月21日のケースでは、
a)14時10分頃 カルデラ内の顕著な地震活動と地殻変動
b)16時15分頃 カルデラ内で割れ目噴火開始
c)17時47分頃 北西山腹割れ目噴火
と時間的に進んだが、新たな判定基準では、それぞれがレベル3、4、5と段階的に引き上げるように見直した。また、a)の段階のレベル3は、外輪山を超えた範囲まで警戒が必要な範囲を広げることとした。

5.大規模噴火におけるレベルの運用
 現在のレベル判定基準においては、レベル4~5は、溶岩流と海岸付近での割れ目噴火が対象となっており、大規模噴火やカルデラ形成時の噴火は明示的になっていない。有識者からの指摘を受け、これらの噴火についても取り入れることとした。
 例として、短時間に噴煙高が10kmに達するようなプリニー式噴火の発生段階でレベル4、居住地域に多量の噴石や火山灰が降下したり火砕流が発生する段階でレベル5とする、といった条件を追加した。

6.謝辞
 以上の検討においては、森田裕一伊豆部会長のほか、火山防災協議会の火山現象検討部会での有識者からの意見をいただいた。関係者にお礼申し上げる。