公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

一般口演

現地発表

一般口演10
口腔機能/症例

2024年7月7日(日) 13:40 〜 14:10 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:飯沼 利光(日本大)

[O2-5] 咬合違和感症候群患者に対する心理的アセスメントを行い対応した1症例

*玉置 勝司1、高橋 美保2、島田 淳3、仲井 太心4、渡辺 秀司5、藤原 基6、和気 裕之7 (1. 神奈川歯科大学、2. 東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース、3. グリーンデンタルクリニック、4. 歯科仲井診療所、5. (医)秀真会とつかグリーン歯科、6. 久里浜グリーン歯科、7. みどり小児歯科)

[Abstract]
【緒言】
 咬合違和感症候群(Occlusal discomfort syndrome, ODS)の患者に対する心理面の理解は極めて重要である.我々はODS患者の診察フローを提案1)し,さらに,ODSの病態分類と,それらの修飾因子との関連性について報告した2).その結果,ODS患者に対しては病態分類とその修飾因子の評価の重要性必が明らかとなった.そこで,医療面接面から心理的アセスメントシートの作成し、対応した1症例について報告する.発表について患者の同意を得た.
【症例の概要・治療内容】
 初診2022年11月15日,59歳,男性.既往歴は高血圧で循環器内科通院中.職業は公共交通機関の運転手,既婚.発症契機は左下7抜髄後の仮封座位の鋭部による舌の痛みと、左下7と4クラウン装着後の咬合違和感である.ODSフローチャートの一次診断後,『心理社会思考的因子の関与を評価』として,臨床心理学の専門家と共同で心理的アセスメントシートを作成した.本アセスメントシートの評価項目は,①臨床像,②多面的評価(Bio,Psycho,Social),③ケースフォーミュレ―ション(図1),④最終的なODS患者の評価と対応・方針である.
【経過ならびに考察】
 今回,ODS患者に対するアセスメントシートを用いて評価することで,患者の心理状態と患者解釈をより詳細に把握できた.患者-術者間の信頼関係の構築失敗の繰り返しが痛みの持続に繋がっていると考えられたことから,患者の安心感を醸成するコミュニケーションを心掛け,治療に対する信頼を獲得できた.結果,患者の咬合および舌の違和感のVASは低下し、日常生活における支障はほとんど消失した(図2).今後はより簡素化したアセスメントシートを検討し,一般歯科外来における評価シートの作成を予定している.
【参考文献】
1) 和気裕之, 石垣尚一, 澁谷智明,島田淳,玉置勝司,松香 芳三ほか.咬合違和感症候群の診療フローチャートの提案. 日顎誌2022;34(2):28-37.
2) 藤原 基,島田 淳,仲井太心,渡辺秀司,片岡加奈子,玉置勝司. 咬合違和感症候群の病態分類とその修飾因子に関する臨床研究. 日補綴会誌2024;16(1):40-48.