[P-3] 形状記憶性3Dプリンタ材料の開発および顎顔面補綴装置への応用に向けた検討
[Abstract]
【目的】
口腔内の複雑な形状に対応した顎顔面補綴装置の製作に3Dプリンティング(3DP)を応用することで,従来法の課題を克服し,軽量でシームレスな装置製作が可能となる.一方演者らは,顎顔面補綴装置に適した材料として形状記憶ゲル(SMG)に着目し,歯科材料への応用を進めてきた.SMGは,アクリルアミドモノマーと結晶性アクリレートモノマーの共重合によって合成され,硬化体は,温度上昇に伴い軟化し,形状変化が可能となる.さらに,冷却するとその形状を維持し,再加熱すると元の形状に回復する性質を具備する.本研究では,3DPに適応したSMG(3D-SMG)を作製し,圧縮永久歪試験から,温度変化に伴う形状記憶回復性を評価した.加えて,3D-SMGによる中空型栓塞子モデルの造形の可否を検証した.
【方法】
N, N-ジメチルアクリルアミド,ステアリルアクリレート(SA),N, N-メチレンビスアクリルアミド(MA)および光重合開始材を添加して3D-SMG液を調製した. 3D-SMGは,SAの比率を10,20 mol%, MAの比率を0.02, 0.05, 0.10 mol%に変化させ,積層光重合式3Dプリンタで造形した.圧縮永久歪試験は,円柱型造形物を80℃で軟化させ,造形物を圧縮治具で25%圧縮した状態で冷蔵庫内に1時間冷却し形状を記憶させた.次いで,23℃,37℃および80℃の恒温環境下にてそれぞれ圧縮を開放し,形状固定率を算出した.統計解析には一元配置分散分析および多重比較検定を用いた.また,3D-SMGを材料とし,3DPで中空球体型の造形を試みた.
【結果と考察】
圧縮解放後の形状固定率より,23℃および37℃にて,SA 20 mol%配合品は,高い形状保持性を示し,SA 10 mol%配合品は,MAの増加に伴い形状固定率が有意に低下した.80℃では,全ての造形物が軟化し形状回復性を示したが,MA配合量が低いと回復率は低下した.SAは,造形物の軟化温度を高温化することで口腔内の安定な形状保持性を付与し,MAは,温熱下の形状回復性に寄与することが示された.さらに,3D-SMGによる中空球体型の造形が可能であった.これらから,3D-SMGは欠損形態の経時変化に追随する革新的な顎顔面補綴材料となりうる可能性が示唆された.
【目的】
口腔内の複雑な形状に対応した顎顔面補綴装置の製作に3Dプリンティング(3DP)を応用することで,従来法の課題を克服し,軽量でシームレスな装置製作が可能となる.一方演者らは,顎顔面補綴装置に適した材料として形状記憶ゲル(SMG)に着目し,歯科材料への応用を進めてきた.SMGは,アクリルアミドモノマーと結晶性アクリレートモノマーの共重合によって合成され,硬化体は,温度上昇に伴い軟化し,形状変化が可能となる.さらに,冷却するとその形状を維持し,再加熱すると元の形状に回復する性質を具備する.本研究では,3DPに適応したSMG(3D-SMG)を作製し,圧縮永久歪試験から,温度変化に伴う形状記憶回復性を評価した.加えて,3D-SMGによる中空型栓塞子モデルの造形の可否を検証した.
【方法】
N, N-ジメチルアクリルアミド,ステアリルアクリレート(SA),N, N-メチレンビスアクリルアミド(MA)および光重合開始材を添加して3D-SMG液を調製した. 3D-SMGは,SAの比率を10,20 mol%, MAの比率を0.02, 0.05, 0.10 mol%に変化させ,積層光重合式3Dプリンタで造形した.圧縮永久歪試験は,円柱型造形物を80℃で軟化させ,造形物を圧縮治具で25%圧縮した状態で冷蔵庫内に1時間冷却し形状を記憶させた.次いで,23℃,37℃および80℃の恒温環境下にてそれぞれ圧縮を開放し,形状固定率を算出した.統計解析には一元配置分散分析および多重比較検定を用いた.また,3D-SMGを材料とし,3DPで中空球体型の造形を試みた.
【結果と考察】
圧縮解放後の形状固定率より,23℃および37℃にて,SA 20 mol%配合品は,高い形状保持性を示し,SA 10 mol%配合品は,MAの増加に伴い形状固定率が有意に低下した.80℃では,全ての造形物が軟化し形状回復性を示したが,MA配合量が低いと回復率は低下した.SAは,造形物の軟化温度を高温化することで口腔内の安定な形状保持性を付与し,MAは,温熱下の形状回復性に寄与することが示された.さらに,3D-SMGによる中空球体型の造形が可能であった.これらから,3D-SMGは欠損形態の経時変化に追随する革新的な顎顔面補綴材料となりうる可能性が示唆された.