公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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ポスター発表

現地発表

有床義歯

2024年7月6日(土) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-9] 化学的清掃が新規開発薄型磁性アタッチメントの磁石構造体の表面粗さに与える影響

*齋藤 壮1、竜 正大1、市川 哲雄2、上田 貴之1 (1. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座、2. 徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔顎顔面補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 磁性アタッチメントの使用は,可撤性義歯の支持と維持の向上に有効である.しかし,磁石構造体の組み込みスペースが十分確保できない症例では,義歯床用レジンが薄くなり,床破折のリスクが高くなるという報告がある1).新規開発中の薄型磁性アタッチメントの磁石構造体(直径4mm)は,従来型の厚み1.3mmを0.6mmと薄くしたものであり,床破折のリスクを低くすることができる他,様々な補綴装置での臨床応用が期待できる.
 義歯の化学的清掃は磁石構造体を腐食させる可能性があり,磁力を低下させる.本研究の目的は,義歯の化学的清掃が,薄型アタッチメントの磁石構造体の表面性状に与える影響を明らかにすることである.
【方法】
 ステンレス磁石を応用した新規開発中の薄型磁性アタッチメント(MT-s600,マグネデザイン)の磁石構造体をアクリル板に貼付したものを試料とした.試料を水道水,中性過酸化物系(ポリデント,GSK),アルカリ性過酸化物系(バトラーデンチャークリーナー,サンスター),次亜塩素酸系(ラバラックD:3倍希釈,サンデンタル)義歯洗浄剤のいずれかに5分浸漬した後に水洗することを30サイクル行った(n=各3).
 浸漬前後の試料の算術平均面粗さ(Sa)と表面断面高さ(Sz)を3D測定レーザー顕微鏡(LEXT OLS4000)にて計測した.表面形態の観察と試料の変色を観察した.浸漬前後の表面粗さを対応のあるt検定で比較した(α=0.05).
【結果と考察】
 浸漬前後の試料の表面粗さを表に示す.中性過酸化物系のSa以外では,浸漬前後の表面粗さに有意差を認めなかった.中性過酸化物系への浸漬前後では表面粗さに有意差を認めたが,平均値の差は0.03µmであり,さらに表面粗さは浸漬後に減少しているため,臨床的に影響がある差ではないと考えられる.また,表面観察では,浸漬後に傷,凹凸および変色は認めなかった.
 以上の結果から,義歯の化学的清掃は新規開発薄型磁性アタッチメントの磁石構造体の表面性状に影響を与えないことが示された.
【参考文献】 [改行]
1) Dong J, Ikebe K, Gonda T, Nokubi T. Influence of abutment height on strain in a mandibular overdenture. J Oral Rehabil 2006; 33: 594-599.