[P-120] 新型コロナウイルス感染症の流行が補綴歯科治療に与えた影響
[Abstract]
【目的】
COVID-19感染者の増加に伴い2020年4月に政府が全国に緊急事態宣言を発令した.緊急事態宣言の発出により不要不急の外出自粛が求められ,同時期に人々の歯科を受診する日数が減少した.この歯科受診行動の変化により補綴歯科治療にかかわる受診も影響を受けたものと思われる.本来なら補綴歯科治療を必要とする人々が受診を控えることで,機能障害または審美障害などを解決し,快適な日々を送る機会を逸していることとなる.本研究は日本における新型コロナウイルス感染症の流行が補綴歯科治療にかかわる受診行動に及ぼした影響を明らかにすることを目的として行った.
【方法】
補綴歯科治療の受診状況はNDBオープンデータ第2回(2015年度)から第8回(2021年度)の歯科傷病件数データを用いた.このうち,喪失歯およびう蝕の傷病の中で補綴歯科治療と関連する17項目を分析対象とした.
1年ごとの傷病件数を用いて分割時系列解析を行い,2020年度について推定件数と実際の件数との乖離,および2019年度以前の回帰式の傾斜と2020年度以降の回帰式の傾斜の変化を評価した.さらに,2019年度から2020年度にかけての傷病件数の変化に対する傷病項目別の寄与度を求めた.
【結果と考察】
0~64歳群では2015~2019年度までの傷病件数の回帰式による推定件数に比べ2020,2021年度はそれぞれ92万件(p < 0.001),85万件減少した(図,表).同様に,65歳以上群では2020年度に213万件減少し(p < 0.001),2021年度は181万件減少した.また,65歳以上群では2020年度以降の変化の傾斜は2019年度以前よりも有意(p = 0.002)に増加した.
0~64歳群における2019~2020年度にかけての傷病件数の減少に最も影響した傷病はう蝕第2度であり,寄与率は37%であった.次いで,欠損歯(寄与率24%),う蝕処置済み歯(寄与率18%)であった.65歳以上群では,欠損歯が寄与率52%で最も傷病件数の減少に影響していた.次いでう蝕処置済み歯(寄与率13%),う蝕第2度(寄与率10%)であった.
これらより,補綴歯科への受診も新型コロナウイルス感染症の流行の影響を免れてはいなかったことが明らかとなった.この受診または治療の抑制は2021年の時点では解消されていないと考える.
【目的】
COVID-19感染者の増加に伴い2020年4月に政府が全国に緊急事態宣言を発令した.緊急事態宣言の発出により不要不急の外出自粛が求められ,同時期に人々の歯科を受診する日数が減少した.この歯科受診行動の変化により補綴歯科治療にかかわる受診も影響を受けたものと思われる.本来なら補綴歯科治療を必要とする人々が受診を控えることで,機能障害または審美障害などを解決し,快適な日々を送る機会を逸していることとなる.本研究は日本における新型コロナウイルス感染症の流行が補綴歯科治療にかかわる受診行動に及ぼした影響を明らかにすることを目的として行った.
【方法】
補綴歯科治療の受診状況はNDBオープンデータ第2回(2015年度)から第8回(2021年度)の歯科傷病件数データを用いた.このうち,喪失歯およびう蝕の傷病の中で補綴歯科治療と関連する17項目を分析対象とした.
1年ごとの傷病件数を用いて分割時系列解析を行い,2020年度について推定件数と実際の件数との乖離,および2019年度以前の回帰式の傾斜と2020年度以降の回帰式の傾斜の変化を評価した.さらに,2019年度から2020年度にかけての傷病件数の変化に対する傷病項目別の寄与度を求めた.
【結果と考察】
0~64歳群では2015~2019年度までの傷病件数の回帰式による推定件数に比べ2020,2021年度はそれぞれ92万件(p < 0.001),85万件減少した(図,表).同様に,65歳以上群では2020年度に213万件減少し(p < 0.001),2021年度は181万件減少した.また,65歳以上群では2020年度以降の変化の傾斜は2019年度以前よりも有意(p = 0.002)に増加した.
0~64歳群における2019~2020年度にかけての傷病件数の減少に最も影響した傷病はう蝕第2度であり,寄与率は37%であった.次いで,欠損歯(寄与率24%),う蝕処置済み歯(寄与率18%)であった.65歳以上群では,欠損歯が寄与率52%で最も傷病件数の減少に影響していた.次いでう蝕処置済み歯(寄与率13%),う蝕第2度(寄与率10%)であった.
これらより,補綴歯科への受診も新型コロナウイルス感染症の流行の影響を免れてはいなかったことが明らかとなった.この受診または治療の抑制は2021年の時点では解消されていないと考える.