公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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教育

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-124] CADを用いた排列シミュレーションが全部床義歯製作実習の技能教育に与える効果

*岸本 奈月1、村上 和裕1、吉村 将悟1、上原 文子1、堀 頌子1、善本 佑1、翁 恩慈1、白鳥 昇1、安野 綾夏1、堀 一浩1 (1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科 包括歯科補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 全部床義歯の人工歯排列では,人工歯の位置や咬合様式などを三次元的に把握し,理解することが術者に求められるが,歯学生がその内容を十分に理解することは難しい.しかし,CADは歯科技能教育に利用することで,歯学生の技能内容への理解がより深まる可能性がある1).そこで,模型実習時にCADを用いた排列シミュレーションを行うことで,人工歯排列の要点をより理解・意識させることができるのではないかと考えた.本研究では,CADを用いた排列シミュレーションが全部床義歯人工歯排列の要点の理解や意識に効果があるかを検証することを目的とした.
【方法】
 CAD実習を受講した新潟大学歯学部歯学科4年生89名を対象とした.全部床義歯製作実習の人工歯排列の過程で,CADソフトウェア(S-Waveデンタルシステム,松風,日本)を使用して人工歯排列のシミュレーション実習(以下,CAD実習)を90分間行った.CAD実習の内容は,前歯部の排列位置の決定と片側の上顎臼歯部人工歯排列とした(図).
 従来の模型実習の前臼歯人工歯排列が完了した時点で,人工歯排列の理解度,意識度,難易度について対象者にVisual Analog Scaleによるアンケート調査を行った.CAD実習前後の人工歯排列に関する理解度と意識度をWilcoxonの符号付き順位検定を用いて比較した.また,対象者をCAD実習を行った時期で2群(前歯排列時,臼歯排列時)に分け,模型実習の排列の難易度の違いをMann-WhitneyのU検定を用いて比較した.
【結果と考察】
 CAD実習後の「前歯排列」,「臼歯排列」,「咬合様式」に関する理解度および意識度は,実習前よりも有意に高かった.また,臼歯排列時にCAD実習を行った学生の方が「臼歯排列」,「咬合様式」に対する主観的な難易度は有意に低かった.CADを導入することによって,全部床義歯の人工歯の位置関係や咬合接触をさまざまな角度や断面から確認できるようになった.それにより,歯学生が,人工歯排列の要点について理解を深め,要点を意識して人工歯排列を行うようになったと考えられた.また,CAD実習を行う時期は学生の主観的な難易度に影響する可能性が示唆された.

【参考文献】
1) 勝田悠介,山田将博,石橋実ほか.東北大学歯学部におけるCAD/CAM冠模型実習システムの導入.日補綴会誌2018;10:335-344.