公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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教育

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-126] 対話型論証による問題発見解決能力涵養を目指した歯科臨床推論演習

*秋葉 陽介1、秋葉 奈美1、江口 香里1、長澤 麻沙子1、魚島 勝美 1 (1. 新潟大学 大学院医歯学総合研究科 口腔生命科学専攻 口腔健康科学講座 生体歯科補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 臨床実習において自験症例を数多く経験することの目的は,技能の習得のみならず,コミュニケーション訓練や医療安全対策など多岐にわたるが,臨床推論能力の獲得も非常に重要である.しかしながら,臨床実習における症例数の減少が問題となる現状ではこれらが非常に困難であることは否めない.そこで,本学では歯学教育モデルコアカリキュラムにも記載されている1)臨床推論能力の涵養を目的として,実際の患者の資料を用いた治療方針策定や治療計画立案を行う歯科臨床推論演習を,臨床実習と並行して開講している.本演習は資料を基に行った診断,治療方針策定,治療計画立案に関して,対話型論証を行うものである.本研究は歯科臨床推論演習の学修効果検証を目的とする.
【方法】
 本演習は臨床実習中の6年次に2コマ8回実施する.初回は演習方法,立案例を示し,演習用症例を提示する.学生は個々に問題点抽出,診断,治療方針・治療計画立案を実施し,レポートを作成する.第2回はグループ学習により治療方針・治療計画を立案する.グループ討議は「対話型論証モデル」(図1)2)に基づいて実施し,個人とグループでの治療方針・治療計画の変更点とその理由に関するレポートを作成する.第3回は成果を発表し,質疑応答と教員からの形成的評価を行い,実際の診断,治療方針,治療計画を学生に紹介する.3症例の演習の後,第8回は治療方針・治療計画立案試験を実施する.レポートおよび試験はルーブリックを用いて,問題発見解決,論理的思考,専門用語表現に関する5観点でレベル0〜3で評価した.提示症例は日本補綴歯科学会提供の症型分類で,難易度Ⅰ〜Ⅱの範囲とした.
【結果と考察】
 演習後半では症例難易度が上がっているにも関わらず,レポート評価全体の平均スコアは上昇傾向を示した.問題点抽出,診断に関する観点は3回の演習,試験を通して大きく変化しないが,専門用語の使用や他の治療法との比較検討に関する観点は上昇傾向が認められた(図2).本研究から,歯科臨床推論演習によって臨床推論能力が向上したこと,また欠損補綴を含む一口腔単位の臨床推論では,診断までではなく,治療方針・治療計画立案までを含む演習が有効なことが示唆された.
【参考文献】
1)歯学教育モデル・コア・カリキュラム.令和4年度改訂版
2) 松下佳代.対話型論証による学びのデザイン