公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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教育

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-128] 部分床義歯実習の評価における3Dデータ活用についての検討

*善本 佑1、長谷川 陽子1、兒玉 匠平1、大川 純平1、翁 恩慈1、堀 頌子1、高野 日南子1、岸本 奈月1、坂田 政貴1、山田 果歩1、Ma. Therese Sta. Maria1、Min Thu Ya1、堀 一浩1 (1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 新潟大学歯学部では有床義歯模型実習において口腔内スキャナーを用いた光学印象採得を導入した.光学印象採得によるデジタル模型は,製作物の評価への活用を検討しているが,その信頼性や妥当性についての検証は十分とはいえない.
 そこで本研究では,従来法である顎模型での評価とデジタル模型での評価とを比較することで,デジタル模型での評価の信頼性および妥当性について検討を行った.
【方法】
 下顎右側第二小臼歯に対しレストシートおよびガイドプレーンの形成を歯学部4年生37名が行った.形成後の顎模型は,口腔内スキャナー(TRIOS3®)を用いて学生が光学印象採得を行い,デジタル模型を作成した.
 評価者は,歯科医師11名(補綴認定医以上の資格を有する3名を含む)とし,評価実施前に評価基準のすり合わせを行った.デジタル模型は3Shape 3D Viewerに表示して評価した.評価順序はランダムとし,顎模型およびデジタル模型はそれぞれ別日に評価した.
 レストシートの評価は,R1: アンダーカットがある,R2: 外形が近遠心径1/3または頬舌側径1/2を超えている,R3: 窩底が不整,R4: 外形に鋭縁がある,ガイドプレーンの評価は,G1: 表面性状が粗造,G2: 形成が歯冠長2/3を超えている,とした.どの項目にも該当しない場合は,P: 該当なしとした.
 評価者内信頼性の検討として,顎模型とデジタル模型との各評価項目の一致度についてκ係数を算出した.また,評価者間信頼性の検討として,補綴認定医以上の資格を有する評価者3名の最頻値に対する各評価者の一致度についてκ係数を算出し,対応のあるt検定にて顎模型とデジタル模型との間で比較した.
【結果と考察】
 評価者内信頼性の検討では,レストシートの外形およびガイドプレーンについての項目R2, G1, G2において,8名の評価者で中等度の一致を認めた.一方でレストシートの鋭縁や表面性状についての項目R1, R3, R4では,ほとんどの評価者で一致しなかった.評価者間信頼性の検討では,項目Pでデジタル模型の方が有意に高い一致度を示し,その他の項目では有意差を認めなかった (表 1).
 以上より,同じ評価者でも顎模型とデジタル模型とで評価が異なる項目については,より慎重にすり合わせを行う必要があるものの,デジタル模型の評価は,顎模型による評価と同様の信頼性および妥当性があることが示唆された.