公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

ポスター発表

現地発表

症例

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-133] 口腔内スキャナ―を用いて旧補綴装置の形態と顎位を即時義歯に反映させた一症例

*山本 悠1、加来 賢1、魚島 勝美1 (1. 新潟大学生体歯科補綴学)

[Abstract]
【緒言】
 口腔内スキャナ―を用いた非接触型の光学印象では,従来の印象材では不可能であった脱離寸前の補綴装置や重度の動揺歯が存在する口腔内においても印象,咬合採得が可能である.これらの利点を活かして治療用の即時義歯を製作することで,旧補綴装置の除去と総義歯形態の即時義歯の装着を行った.歯列,咬合が旧補綴装置除去前と大きく変化せず,適合が良好な即時義歯を提供することで患者満足度の高い治療を提供することが出来た1症例について報告する.発表に際し患者の同意を得た.
【症例の概要・治療内容】
 患者は74歳,女性,「上の歯が揺れだした」を主訴に受診した.上顎補綴装置は右上5から左上5までが全て連結されている固定性のブリッジで,左上5以外は補綴装置と支台歯は完全に分離し著しい動揺を生じていた.治療計画について説明を行い,総義歯形態の即時義歯を装着し,その後残存歯の治療を行う方針とした.しかし,印象材料を用いた場合,印象採得時に補綴装置の脱離が予想され,脱離した場合は再装着が不可能であり,即時義歯装着まで審美,咀嚼,発音障害などが生じることが予想された.また大きく動揺している補綴物の印象から製作した模型では,咬合器装着が不正確になることが危惧された.そこで,補綴装置の脱離防止と,より正確な印象採得,咬合採得を行うために口腔内スキャナ―を用いて即時義歯の製作を行う計画とした.
【経過ならびに考察】
 口腔内スキャナー(CEREC Primescan)を用いて,上顎は口蓋および歯肉頬移行部,下顎は最低限の歯肉を含む歯列の印象採得を行い,咬合採得は補綴装置が変位しないように注意して行った.CADソフト上で上顎補綴装置を除去した口腔内をシミュレートし,3Dプリンタを用いて垂直的顎間関係の保存された作業用模型を製作した.人工歯排列は現状の補綴装置の形態と位置を参考にした.その後,上顎補綴装置を除去し,即時義歯を装着したところ,適合は良好で十分な吸着があり,特に口蓋部の適合に優れていた.咀嚼能力測定(スコア6)とOHIP―J14(グレード1)は,除去前後での変化は見られなかった. 本症例では,口腔内スキャナ―を用いることで,旧補綴装置の咬合や歯列等を保存し,かつ適合の良い即時義歯の装着を行なうことが可能であった.口腔内スキャナとCADソフトの活用法として非常に有効であったと考えられる.