公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

ポスター発表

現地発表

症例

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-135] デジタル技術を応用し直接法で適切な支台歯形態の構築を行った一例

*山口 雄一郎1、髙江洲 雄1、一志 恒太2、加我 公行1、松浦 尚志1 (1. 福岡歯科大学 咬合修復学講座 冠橋義歯学分野、2. 福岡歯科大学医科歯科総合病院中央技工室)

[Abstract]
【緒言】
 近年,審美領域の補綴歯科治療で,コンポジットレジンを用いた支台築造が頻繁に行われている.直接法のレジン支台築造は,少ない治療回数と歯質削除量で築造ができる一方,直接口腔内で操作を行うため,意図した支台歯形態の付与が困難な場合がある1).今回,前歯部にモノリシックジルコニアクラウン(MZC)を製作する上で最適な支台歯形態を直接法で付与するためにデジタル技術を応用した症例について報告する.
【症例の概要・治療内容】
 患者は18歳の女性.上顎左側中切歯の変色による審美不良を主訴に来院した.当該歯は8年前に外傷を受け,生活歯髄切断法が行われていた.検査の結果,再根管処置後に直接法で支台築造を行い,MZC製作に移行することとした.
 根管処置後,口腔内スキャナーで歯列の光学印象を行った.印象データをCADソフトウェアに入力し,¥bdvabr¥1の最終的な歯冠形態とMZC製作に必要なクリアランスの数値を入力して支台歯を設計し術前シミュレーションデータとした.これらを口腔内で再現するための支台築造用コアとプロビジョナルレストレーション(PR)を製作した.窩洞形成後,口腔内に築造用コアを装着し,コア外部の頓路から内部にレジンを填入し築造を行った.築造と同日に概形成,PRの装着を行った.最終形成時は光学印象した概形成後の支台歯と術前シミュレーションデータを重ね合わせ,形成部位や削除量確認の指標とした.最終形成後に支台歯部位のみ局所的な印象採得を追加で行い2nd PRを製作,装着した.審美性,咬合,清掃性に問題が無いことを確認した後,術前に設計した歯冠形態をもとにMZCを製作,装着した.
【経過ならびに考察】
 現在,装着したMZCに機能・審美的な問題は認めず経過良好である.行った術式の利点は以下の2点である.①最終補綴装置に最適な支台歯形態を術前に設計し,築造用コアを用いることで,シミュレーションした支台歯形態を直接法で再現できた.②術前シミュレーションと形成した支台歯を重ね合わせたデータを指標とすることで,必要な形成量の確認をリアルタイムで行うことができた.以上の点からデジタル技術を応用した直接法の支台築造は臨床的に有用と考える.(発表に際して患者の同意を得た.)

【参考文献】
1) 中川善治,小川 匠.Ⅳ 支台築造.第6版クラウンブリッジ補綴学,医歯薬出版;2021,126-133.