[P-14] Study on pH of Commercially Available Oral Moisturizers
[Abstract]
【目的】
口腔保湿剤(以下,保湿剤)のpHは,口腔環境を改善するうえで重要である1).しかし,製品にpH表示はなく,また,保湿剤は,義歯粘膜面への塗布や要介護高齢者の口腔ケアにも使用される.このような場合,保湿剤が長時間塗布された環境(塗布環境)に留まるが,そのpHがどのように変化するか不明である.本研究の目的は,1)保湿剤のpHを網羅的に調査し,pHを用いた選択基準を検討すること,2)保湿剤の塗布環境と塗布後の時間がpHに及ぼす影響を検討することである.
【方法】
市販保湿剤32種を試料とした.4℃,25℃,37℃のインキュベーターで保管した試料4mlをチューブに入れ,各条件におけるpHを計測した.方法1.開封直後(0H)において,保湿剤の種類と温度がpHに及ぼす影響を2元配置分散分析で検討した.得られたpHを歯の臨界pHを基準にクロス表分析とFisherの正確確率検定を行った.方法2.保湿剤の塗布環境をチューブにキャップをした場合(Cap)とキャップをしない場合(Open)とし,25℃と37℃において0Hから8時間(8H)まで1時間ごとのpHを計測した.Friedman検定を行い,各水準において多重比較を行った.有意水準は5%とした.
【結果と考察】
結果1.保湿剤のpHは,68.8%が酸性であった.分散分析の結果,保湿剤の種類,温度ならびに交互作用に有意差は認められなかった.クロス表分析の結果,エナメル質と象牙質の臨界pH未満の製品は18.8%であり,Fisherの正確確率検定の結果,有意差を認めた(図).結果2.キャップの有無では,37℃の試料のみ4H以降のOpenで有意にpHが低下した.時間による違いは,Openでは25℃,37℃ともにpHは2H以降に有意に低下したが,Capでは,25℃で6H以降に,37℃で7H以降にpHが有意に低下した.本研究結果より,有歯顎患者にはpH6.7以上の製品選択の必要性ならびに塗布後の保湿剤のpHは塗布環境と時間に影響される可能性が示された.
【参考文献】
1) Dawes C, Pedersen AM, Villa A, et al. The functions of human saliva: A review sponsored by the World Workshop on Oral Medicine VI. Arch Oral Biol 2015; 60: 863-874.
【目的】
口腔保湿剤(以下,保湿剤)のpHは,口腔環境を改善するうえで重要である1).しかし,製品にpH表示はなく,また,保湿剤は,義歯粘膜面への塗布や要介護高齢者の口腔ケアにも使用される.このような場合,保湿剤が長時間塗布された環境(塗布環境)に留まるが,そのpHがどのように変化するか不明である.本研究の目的は,1)保湿剤のpHを網羅的に調査し,pHを用いた選択基準を検討すること,2)保湿剤の塗布環境と塗布後の時間がpHに及ぼす影響を検討することである.
【方法】
市販保湿剤32種を試料とした.4℃,25℃,37℃のインキュベーターで保管した試料4mlをチューブに入れ,各条件におけるpHを計測した.方法1.開封直後(0H)において,保湿剤の種類と温度がpHに及ぼす影響を2元配置分散分析で検討した.得られたpHを歯の臨界pHを基準にクロス表分析とFisherの正確確率検定を行った.方法2.保湿剤の塗布環境をチューブにキャップをした場合(Cap)とキャップをしない場合(Open)とし,25℃と37℃において0Hから8時間(8H)まで1時間ごとのpHを計測した.Friedman検定を行い,各水準において多重比較を行った.有意水準は5%とした.
【結果と考察】
結果1.保湿剤のpHは,68.8%が酸性であった.分散分析の結果,保湿剤の種類,温度ならびに交互作用に有意差は認められなかった.クロス表分析の結果,エナメル質と象牙質の臨界pH未満の製品は18.8%であり,Fisherの正確確率検定の結果,有意差を認めた(図).結果2.キャップの有無では,37℃の試料のみ4H以降のOpenで有意にpHが低下した.時間による違いは,Openでは25℃,37℃ともにpHは2H以降に有意に低下したが,Capでは,25℃で6H以降に,37℃で7H以降にpHが有意に低下した.本研究結果より,有歯顎患者にはpH6.7以上の製品選択の必要性ならびに塗布後の保湿剤のpHは塗布環境と時間に影響される可能性が示された.
【参考文献】
1) Dawes C, Pedersen AM, Villa A, et al. The functions of human saliva: A review sponsored by the World Workshop on Oral Medicine VI. Arch Oral Biol 2015; 60: 863-874.