[P-141] 栓塞子を用いた囊胞開窓術後に単独冠で上顎右側中切歯の審美性を回復した1例
[Abstract]
【緒言】
比較的大きな歯根囊胞では原因歯の隣在歯を含んでいることが多く,摘出を選択した場合,それらの歯髄を損傷してしまうことがある.本発表では隣在歯の歯髄保護の観点から開窓を,清掃性の観点から栓塞子を用い,のちに単独冠で審美障害を改善した症例を供覧する.
【症例の概要・治療内容】
202X年3月下旬,1根尖部歯肉の腫脹を自覚したため近在歯科医院を受診した.デンタルX線では同部を中心とした32の歯根を含む透過像がみられた.4月上旬,1の感染根管処置が行われ,下旬に透過像の精査および加療のため当科を紹介受診した.腫脹が残存していたものの,波動は触れず,32に電気歯髄診で生活反応はあった.CT写真では1根尖部に25×17㎜の類円形透過像があり,32の根尖を含んでいた.以上より,臨床診断は1歯根囊胞とした.根管充填が不十分であったため,再感染根管治療を開始し,6月下旬に根管充填をした.症状なく経過していたものの,8月下旬に根尖部の疼痛を自覚した.波動を触れたため切開を考慮したが,開窓による組織の把握ならびに病変の縮小が期待できると判断し,開窓術をした.開窓状態を維持するために栓塞子を用いた.病理組織学的診断は歯根囊胞であった.
【経過ならびに考察】
本症例では開窓状態を維持するために軟膏ガーゼではなく栓塞子を用いたことで創部の清潔を保つことができ,摘出術を選択しなかったことで腔に含まれていた隣在歯(32)の歯髄保護ができた.ただし1は歯内療法のみで対応できた可能性もあり,侵襲を最小限にするという点で反省すべきだった.失活,疼痛が生じた原因として,1は前方滑走の際のガイドとなっており,ブラキシズムによる可能性が考えられた.加えて,全顎的に咬耗が見られたことから筋電計でその診断を得て,補綴装置と歯質保護のためにナイトガードを使用することとした.開窓後1年5か月後に暫間補綴装置を装着し,問題がないことを確認後,ジルコニアによる最終歯冠補綴装置を装着した.治療終了後1年3か月が経過しており,良好である.本症例を通じ,病因を考慮したうえで治療方針をたて,状況に応じた治療法を選択することの重要性が再認識された.発表に際して患者同意を得た.
【緒言】
比較的大きな歯根囊胞では原因歯の隣在歯を含んでいることが多く,摘出を選択した場合,それらの歯髄を損傷してしまうことがある.本発表では隣在歯の歯髄保護の観点から開窓を,清掃性の観点から栓塞子を用い,のちに単独冠で審美障害を改善した症例を供覧する.
【症例の概要・治療内容】
202X年3月下旬,1根尖部歯肉の腫脹を自覚したため近在歯科医院を受診した.デンタルX線では同部を中心とした32の歯根を含む透過像がみられた.4月上旬,1の感染根管処置が行われ,下旬に透過像の精査および加療のため当科を紹介受診した.腫脹が残存していたものの,波動は触れず,32に電気歯髄診で生活反応はあった.CT写真では1根尖部に25×17㎜の類円形透過像があり,32の根尖を含んでいた.以上より,臨床診断は1歯根囊胞とした.根管充填が不十分であったため,再感染根管治療を開始し,6月下旬に根管充填をした.症状なく経過していたものの,8月下旬に根尖部の疼痛を自覚した.波動を触れたため切開を考慮したが,開窓による組織の把握ならびに病変の縮小が期待できると判断し,開窓術をした.開窓状態を維持するために栓塞子を用いた.病理組織学的診断は歯根囊胞であった.
【経過ならびに考察】
本症例では開窓状態を維持するために軟膏ガーゼではなく栓塞子を用いたことで創部の清潔を保つことができ,摘出術を選択しなかったことで腔に含まれていた隣在歯(32)の歯髄保護ができた.ただし1は歯内療法のみで対応できた可能性もあり,侵襲を最小限にするという点で反省すべきだった.失活,疼痛が生じた原因として,1は前方滑走の際のガイドとなっており,ブラキシズムによる可能性が考えられた.加えて,全顎的に咬耗が見られたことから筋電計でその診断を得て,補綴装置と歯質保護のためにナイトガードを使用することとした.開窓後1年5か月後に暫間補綴装置を装着し,問題がないことを確認後,ジルコニアによる最終歯冠補綴装置を装着した.治療終了後1年3か月が経過しており,良好である.本症例を通じ,病因を考慮したうえで治療方針をたて,状況に応じた治療法を選択することの重要性が再認識された.発表に際して患者同意を得た.