The 133rd Annual Meeting of the Japan Prosthodontic Society / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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Case Reports or series

Sun. Jul 7, 2024 12:00 PM - 1:00 PM Poster Session Hall (Makuhari Messe International Conference Hall 2F Convention Hall B)

[P-149] A case of delayed paresthesia in the mental region due to a denture using soft reline material

*Kodai Kudo1, Sho Usuda1, Akiteru Chen1, Taneaki Nakagawa1, Nobuyuki Horie1 (1. Department of Dentistry and Oral Surgery, Keio University School of Medicine)

[Abstract]
【緒言】
 高齢者の義歯装着患者が訴える痛みは義歯性潰瘍だけではなく多岐にわたる.疼痛構造化問診を活用した適切な診査・検査によって鑑別疾患を吟味し,生命に関わる疾患を疑わせる症候「レッドフラッグ」も見逃さないことが重要である.今回われわれは,下唇の疼痛と知覚異常が主訴であった症例を経験したので報告する.慶應義塾大学医学部倫理委員会の承認,患者の同意を得ている.
【症例の概要・治療内容】
 患者は当院かかりつけの80歳女性.現義歯に概ね満足していたが,下顎顎堤の吸収が著明で義歯性潰瘍が定期的に生じていた.現義歯の保存とQOLの向上を希望され,現義歯で機能印象を行い,軟質リライン材を用いた下顎義歯を新製予定とした.X年12月25日に義歯を装着,使用状況は良好であった.X年1月23日に下口唇に痺れるような違和感を自覚,以前口唇ヘルペス時に同様の症状を認めたことから皮膚科を受診,水疱等は認めなかったが,軽度の知覚鈍麻とアロディニア,帯状疱疹の罹患歴から,アメナメビル錠が処方された.1月27日に当院神経内科を受診し,頭蓋内病変精査を目的に頭部MRI検査の方針となった.同日皮膚科再診時にも水疱の出現を認めず,咬合時に症状が一時的に強くなることから解剖学的な神経痛を疑い当科での精査となった.新製義歯は使用感は良かったが,右側三叉神経第3枝のオトガイ孔より末梢側にアロディニアを認めた.パノラマX線写真と口腔内所見から右側オトガイ孔の上方への開口を認め,義歯による圧迫が示唆された.同部のリリーフを実施し,右側オトガイ部のアロディニア症状の改善を認めた.頭部MRI撮影の結果でも頭蓋内病変は認めないことを確認した.
【経過ならびに考察】
 平成30年に軟質リライン材は顎堤の吸収が著しい等の症例に保険適用となり,このような適応条件下ではオトガイ孔が上方へ開口している場合も多く,軟質リライン材は材料の特性から弾性が大きく,経時的な義歯の沈み込みによってオトガイ孔を遅発的に圧迫する可能性があることを理解しておくことが重要である.一方で,本症例のようなオトガイ部の知覚異常は12脳神経の障害の一つであり,頭蓋内病変などを示唆する「レッドフラッグ」である.疼痛構造化問診の活用と12脳神経検査を実施し,義歯の状態も含めたそれぞれの疾患に対して検査を行い,確定診断を導くプロセスを丁寧に行うことが重要である.