症例

[P-152] 審美的分析後にオールセラミック修復を行った症例

*神田 雄平¹ (1. 東京支部)

[Abstract]
【緒言】
　前歯の歯冠修復は歯の形態，色調の再現だけでなく，口唇や顔貌との調和など口元の審美性を求められることも多い．顔貌，唇と調和した前歯の修復を行うためには審美的な分析を行うことが重要であると言われている．本症例では術前・術中の審美的分析を行い，形態を反映させたオールセラミック修復を行うことで患者の高い審美的満足度が得られたため報告する．
【症例の概要・治療内容】
　患者は56歳の女性，上顎補綴装置の審美不良を主訴に来院した．将来，金属アレルギーになることを懸念しており上顎すべての修復物をメタルフリーで行うことと，5 4の修復物の形態と色調の改善を希望した．口腔内診査より5 16冠不適を，デンタルエックス線写真より2 12に根尖性歯周炎を認めた．歯周組織検査では3mm以上のPDは認められなかった．
　治療方針として，まず歯周基本治療を行い根管治療と支台築造を行った後，術前と術中（患者の希望を取り入れた診断用ワックスアップを反映したプロビジョナルレストレーション）の審美的分析を行い患者の満足度が得られたら，最終補綴装置を作製することとした．上顎前歯，小臼歯から開始してほしいとの患者の希望により54にファーストプロビジョナルレストレーションを作製し，補綴前処置終了後に診断用ワックスアップを行い術前と比較した．歯頚部辺縁歯肉の位置や1 1の幅径の改善などを行い，セカンドプロビジョナルレストレーションを作製した．次に臼歯部の治療を行った．7 CR充填，6 57ジルコニアインレー，6フルジルコニアクラウンを装着した．54の形態に患者が納得したため，セカンドプロビジョナルレストレーションをダブルスキャンしフルジルコニアクラウンおよびジルコニアブリッジを作製，装着した．
【経過ならびに考察】
　現在，3カ月に1度メンテナンスを行っている．最終補綴装置装着後3年が経過したが補綴装置は安定している．診断用ワックスアップを製作し，審美的な分析を行い患者の希望を取り入れたことで高い満足度を得られたと考える．（治療はインフォームドコンセントを得て実施した．また，本症例の発表に際し患者から同意を得ている．）