公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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有床義歯

2024年7月6日(土) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-25] 金属積層造形で製作したコバルトクロム合金の疲労強さ

*淺井 七海1、田坂 彰規1、伊東 紘世1、岡野 日奈1、武本 真治2、山下 秀一郎1 (1. 東京歯科大学 パーシャルデンチャー補綴学講座、2. 岩手医科大学医療工学講座)

[Abstract]
【目的】
 CAD/CAM技術の発展により,金属積層造形で局部床義歯フレームワークを製作することが可能となった.フレームワークに使用されるコバルトクロム(以下,Co-Cr)合金の静的試験において,金属積層造形で製作したものは従来の鋳造法と比較して優れていると報告されている.しかし,動的試験による耐久性については不明である.
 本研究では,CAD/CAM技術を応用した局部床義歯フレームワークの耐久性を明らかにするために,金属積層造形で製作したCo-Cr合金製試験片の疲労強さを鋳造法と比較検討した.
【方法】
 Co-Cr合金製試験片(長さ37 mm,幅5 mm,厚さ1.5 mm)は,以下の2条件で製作した(N=10).1)高周波遠心鋳造機(デンコーオートセンサーMD-201:電気興業社)での鋳造(以下,CAST),2)金属光造形複合加工機(LUMEX Avance-25;松浦機械製作所)での造形(以下,SLM).製作した試験片を自動研磨機(エコメット250:ビューラー)により研磨紙600番まで研磨した.疲労試験時の荷重と階差を決定するため,万能材料試験機(AG-I 20kN:島津製作所)で3点曲げ試験を行い,曲げ耐力を求めた.ステアケース法による疲労試験を行った.疲労試験は疲労試験機(EHF-F05:島津製作所)を用いて37℃の水中で10 Hz,106cycleの条件下で疲労強さを測定した.測定後の変形部を走査型電子顕微鏡(以下,SEM,SU6600:日立ハイテクノロジー)で観察した.2条件間の曲げ耐力を統計学的に比較検討するためMann-WhitneyのU検定を行った(α=0.05).
【結果と考察】
 曲げ耐力は,CASTで1173±53(平均±標準偏差)MPa,SLMで1472±41 MPaを示し,2条件間に統計学的有意差を認めた(p<0.05).ステアケース法による疲労強さは,CASTで曲げ耐力の42±4 %,SLMで54±8 %であった.SLMでは,造形方向に対して垂直に荷重を加えたため,曲げ耐力と疲労強さ共に高い値を示したと考えられた.SEMで破断面を観察したところ,CASTでは粒状の模様が観察され,SLMでは造形縞が一部に観察された.以上のことから,金属積層造形で製作したCo-Cr合金製の局部床義歯フレームワークは鋳造法と比較して耐久性に優れる可能性が示唆された.