クラウンブリッジ

[P-50] 吸引装置が超音波スケーラーによる飛沫エアロゾル拡散に及ぼす影響

*渡辺 隼^1,2、小林 洋子¹、倉内 美智子¹、江草 宏^1,2 (1. 東北大学病院歯科医療管理部、2. 東北大学大学院歯学研究科分子・再生歯科補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
　新興感染症のパンデミックを契機に，歯科治療で発生する飛沫エアロゾルに対する交差感染対策が注目されている．口腔内バキュームおよび口腔外バキュームの適切な使用が推奨されているが，これら吸引装置の最適な使用条件を示すエビデンスは十分とは言えない．本研究では，歯科治療時の適切な環境管理方策の確立を目的とし，吸引装置が超音波スケーラー使用により発生する飛沫エアロゾルの拡散に対して及ぼす影響について検討した．
【方法】
　歯科用マネキンの口腔内で超音波スケーラー（Varios2，NSK）を最大水量に設定し，飛沫エアロゾルを発生させた．吸引装置には，歯科用ユニット（EOM-PLUS，GC）付属の口腔内バキュームおよび口腔外バキューム（フリーアームアルテオS，東京技研）を使用した．高輝度LED光源および高感度高速度カメラを用いた飛沫エアロゾル面積の計測¹⁾，および術者の位置に設置した微粒子計測器を用いた飛沫エアロゾル粒子径ごとの累積粒子数の計測から，各吸引装置の拡散抑制効果を評価した．また，口腔内バキュームの吸引圧や口腔外バキュームのフード設置角度が飛沫エアロゾル拡散抑制に与える影響を検証した．統計解析は，一元配置分散分析および多重比較法（Games-Howell法）を用いた．
【結果と考察】
　口腔内バキュームの吸引圧低下に伴い，飛沫エアロゾル面積および粒子数は有意に増加した（図）．また，口腔内および口腔外バキュームの併用により，飛沫エアロゾル面積は有意に減少した．さらに，粒子径2.5 µm以上の粒子数は，口腔外バキュームのフードを処置部位の鉛直方向に設定した場合に有意差をもって最も減少した．
　以上の結果から，口腔内バキューム吸引圧の維持管理およびフードの設定位置を考慮した口腔外バキュームの併用が，飛沫エアロゾルの拡散抑制方策として重要であることが示された．
【参考文献】
1) Watanabe J, Iwamatsu-Kobayashi Y, Kikuchi K, et al. Visualization of droplets and aerosols in simulated dental treatments to clarify the effectiveness of oral suction devices. J Prosthodont Res 2024; 68: 85-91.