公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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クラウンブリッジ

2024年7月6日(土) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-56] CAD/CAM冠用ハイブリッドレジンブロックとPEEKの機械的特性の評価

*大宮 圭司1、苅谷 周司1、篠﨑 裕1 (1. 株式会社ジーシー)

[Abstract]
【目的】
 近年,ハイブリッドレジンブロックによるCAD/CAM冠の保険適用範囲が拡大しており,幅広く臨床に用いられている.2023年12月にはポリエーテルエーテルケトン(以下PEEK)ブロックの大臼歯単冠症例への適用が保険収載されている.PEEK冠は高い破壊靭性によって咬合面厚みが小さい場合でも破断しにくく,歯質削除量を減らすことができるとされている.しかし,従来のハイブリッドレジンブロックとは特性が大きく異なる材料であり,両者の物性を比較した研究は多くなされていない.そこで本研究では,大臼歯適用ハイブリッドレジンブロック「セラスマート300」とPEEKの機械的特性の評価を実施した.
【方法】
 セラスマート300(A2LT,ジーシー)およびPEEK製品Aを試験に使用した.ダイヤモンドカッターを用いて切り出し,耐水研磨紙#2000で幅4.0 mmとなるよう研磨した.厚さは各製品の推奨咬合面厚さ下限とし,セラスマート300では1.5 mm,PEEK製品Aでは1.0 mmまで研磨し試験片を作製した.試験片は37℃の水中に7日間浸漬し,万能試験機(AG-5KNXplus:島津製作所)を用いて支点間距離12 mm,クロスヘッドスピード1 mm/minにて3点曲げ試験を実施した(n=10).
【結果と考察】
 各試験片の荷重-変位曲線を図に示す.1.5 mm厚のセラスマート300は荷重130 N,変位0.5 mm付近で破断したのに対し,1.0 mm厚のPEEKは変位が2 mmを超えても破断しなかったものの荷重は40 N程度で最大となり,試験片は大きく変形した.セラスマート300はフィラー表面処理条件の最適化によるナノフィラーの高密度充填と,モノマーとの強固な結合によって高い機械的強度を示した.対してPEEKは構造に起因する優れた破壊靭性を示し破断には至らなかったが,弾性率が低く歪みを生じやすい特性が示された.
 以上より,ハイブリッドレジンブロック「セラスマート300」は高い機械的強度を有し,1.5mm厚の咬合面形成によって臨床においても歪みを生じ難い材料であることが示唆された.一方でPEEKは破断こそ生じ難いものの,大きな歪みを生じやすい特性から,高い咬合圧のかかる大臼歯症例において変形を生じ,脱離を引き起こす可能性が考えられる.そのため,今後もその特性や臨床応用について注意深く評価していく必要がある.