公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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インプラント

2024年7月6日(土) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-70] リン酸カルシウム遺伝子導入剤のチタン表面への電気的付着効果に関する検討

*岩渕 太人1、天雲 太一1、小川 徹1、佐々木 啓一2 (1. 東北大学大学院歯学研究科 口腔システム補綴学分野、2. 東北大学大学院歯学研究科)

[Abstract]
【目的】
 インプラント周囲炎治療では,殺菌だけでなく,骨の再付着を図ることが重要である.そこで,殺菌処理後のチタン表面に硬組織形成因子を分泌させる遺伝子導入剤を付着させることで,硬組織形成を促すことができるのではないかと仮説を立てた.本研究では,これまで遺伝子導入剤として着目してきたリン酸カルシウムナノ粒子(CaP)をチタン表面へ効果的に適用するための基礎的検討として,細菌付着したチタン表面を銀-紫外線A波(以下Ag-UVA)照射殺菌処理した後,CaPを電気的に付着させ,その付着量と遺伝子導入効率を評価した.
【方法】
 既存のインプラント表面を模倣したチタンディスク(コントロール群)に黄色ブドウ球菌(7.0×108個)を播種,培養することでチタン上にバイオフィルムを作製した(細菌付着群).硝酸銀溶液(1600μM)に細菌付着したチタンディスクを浸漬し, LED照射(強度:170mW/cm2,400nm,1分間)を行った(Ag-UVA群).その後,PBSで水洗し,CaP赤色蛍光タンパク質であるmCherryを発現させるpDNAを含有したCaPを作成し,播種した.各群チタンディスク表面に微弱電流(0もしくは30μA,5分間)を流した後,水洗し,チタン上に付着したCaPの付着量を誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES)を用いて計測した.また,CaPを付着させたチタンディスクにMC3T3E1細胞(5.0×103個)を播種し3日間培養した後,蛍光顕微鏡を用いて遺伝子導入効率(デジタルイメージングシステム(APX100))を算出した.【結果と考察】
 チタンディスクに微弱電流を与えることによりCaP付着量は有意に増加した.各群に微弱電流を与えた場合,コントロール群とAg-UVA群のCaPの付着量は,細菌付着群と比べ有意に高い値を示した(図).また,微弱電流の有無に関らず,遺伝子導入効率には有意な差を認めなかった.
 以上のことから,細菌付着したチタンディスク表面をAg-UVA処理することにより,pDNAを含有したCaPを効果的に電気的付着させることができ,チタン表面の機能化ができることが示唆された.今後は,この遺伝子導入法のインプラント周囲炎治療への応用へ向け,チタン表面上でBMP-2など硬組織形成因子などを徐放させ,オッセオインテグレーション再獲得の可能性について検討する予定である.