公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-78] 睡眠時ブラキシズム患者由来iPS細胞における発現変動遺伝子の探索

*佐藤 太朗1、大西 麻由1、安部 友佳1、中井 健人1、赤松 和土2、馬場 一美1 (1. 昭和大学歯学部歯科補綴学講座、2. 順天堂大学ゲノム・再生医療センター)

[Abstract]
【目的】 
 我々は先行研究において,睡眠時ブラキシズム(SB)患者より樹立したiPS細胞由来の神経細胞の興奮性が上昇していることを明らかにしたが,これらの神経細胞のサブタイプの同定には至らなかった1).本研究では,SB患者iPS細胞由来の神経細胞で網羅的遺伝子発現解析を用いて,SBにおける疾患標的細胞の同定および細胞レベルでの発症機序を解明することを目的とした.
【方法】 
 先行研究で樹立したSB (n=3)および健常対照(n=3)のiPS細胞を脳幹領域の神経細胞へと分化・成熟させBulk RNA-seqを行った.発現変動遺伝子解析およびKEGG Pathway解析によりSB特異的な発現変動遺伝子群を抽出した.また,single nucleus RNA-seq (snRNA-seq)を実施し,細胞種同定および各細胞種クラスターにおける発現変動遺伝子抽出を行った.
【結果と考察】  
 Bulk RNA-seq解析では両群間の遺伝子発現パターンには系統的な差異を認め,KEGG Pathway解析ではカルシウムシグナリングに関連した発現変動遺伝子がSB群で上昇しており,特に神経伝達物質がリガンドとなる受容体のGタンパク質共役型受容体(GPCR)及び受容体作動性カルシウムチャネル(ROC)構成遺伝子はSBで有意に高発現していた.snRNA-seqの結果から,分化誘導した神経細胞がグルタミン酸(Glu)作動性神経やGABA作動性神経,運動神経(MN)等にクラスタリングされた.各細胞種クラスターでGPCR及びROC構成遺伝子の発現を比較した結果,Glu作動性神経の細胞集団ではアセチルコリン(ACh)受容体遺伝子がSBで高発現していた.AChは睡眠の各ステージにてその分泌量は変化し,また脳幹におけるGlu作動性神経はAChの投射を受けMN活動を調節している.本研究結果から,SB患者ではGlu作動性神経のAChに対する感受性変化によりMN興奮が惹起されている可能性が示唆された.
【参考文献】
1) Sarkar AK, Nakamura S, Nakai K, et al. Increase excitability of human iPSC-derived neurons in HTR2A variant-related sleep bruxism. Stem Cell Res 2022;59:102658.