公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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バイオロジー・バイオマテリアル

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-85] ビスホスホネートアナログ投与マウスの抜歯窩治癒解析

*笠川 萌香1、峯 裕一1,2、佐野 瑞歩1、岡﨑 昌太1,2、田地 豪3、二川 浩樹3、村山 長1,2 (1. 広島大学大学院医系科学研究科歯学分野医療システム工学、2. 広島大学デジタルデンティストリープロジェクト研究センター、3. 広島大学大学院医系科学研究科歯学分野口腔生物工学)

[Abstract]
【目的】
 薬剤/ビスホスホネート関連顎骨壊死(MRONJ/BRONJ)は,ビスホスホネート等の薬剤を使用する患者に稀に見られる難治性の骨壊死であり,補綴歯科において治療の成功を妨げる大きな要因となる.2023年にはポジションペーパーが改定され,その発症には,骨リモデリングの阻害や細菌感染,血管新生阻害が関連しているとされている1).本研究では,マウスに対しゾレドロン酸またはリセドロン酸のアナログを投与することで,抜歯窩治癒様式の差異を評価することを目的とした.
【方法】
 本研究では,ビスホスホネートとしてゾレドロン酸およびリセドロン酸アナログを使用した.リセドロン酸アナログは,ピリジルを含むR2側鎖のメチレン(-CH2-)基がリセドロン酸から1個増加しており,このわずかな構造変化により骨吸収抑制能が大幅に低下している2).8週齢雌のC57BL/6Jマウスに,ビスホスホネートを投与し上顎第一大臼歯を抜歯することでBRONJ様の病態を示すモデルマウスを作製した.薬剤投与条件は,生理食塩水投与群,ゾレドロン酸/生理食塩水投与群,リセドロン酸アナログ/生理食塩水投与群とした.各群は実験開始2週間後に上顎第一大臼歯を抜歯し,さらに2週間飼育した.抜歯後は薬剤の投与を行わなかった.組織学的解析として,HE染色後の抜歯窩周囲の壊死骨面積を定量化した.
【結果と考察】
 生理食塩水投与群と比較してゾレドロン酸/生理食塩水投与群では,抜歯窩周囲の壊死骨面積が有意に増加していた(p<0.01).一方,リセドロン酸アナログ/生理食塩水投与群においては,生理食塩水投与群と比較して抜歯窩周囲の壊死骨面積の増加は認められなかった.以上の結果より,本モデルマウスにおける顎骨壊死の発症は,ビスホスホネートの骨吸収抑制能により影響を受けることが示唆された.
【参考文献】
1) 顎骨壊死検討委員会.薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023.2023; 1-37.
2) Rogers MJ, Gordon S, Benford HL, et al. Cellular and molecular mechanisms of action of bisphosphonates. Cancer 2000; 88: 2961-2978.