公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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バイオロジー・バイオマテリアル

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-86] Deep Learningによる間葉系幹細胞の骨分化段階予測

*佐野 瑞歩1、峯 裕一1,2、笠川 萌香1、岡﨑 昌太1,2、田地 豪3、二川 浩樹3、村山 長1,2 (1. 広島大学大学院医系科学研究科歯学分野医療システム工学、2. 広島大学デジタルデンティストリープロジェクト研究センター、3. 広島大学大学院医系科学研究科歯学分野口腔生物工学)

[Abstract]
【目的】
 補綴歯科領域ではこれまでに,顎骨の再生を目指した幹細胞研究が多数報告されている.用いる細胞としては間葉系幹細胞(MSCs)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)が代表的であるが,臨床応用の課題として細胞品質管理が挙げられる.例えば,大腿骨や腸骨由来のMSCsは,ドナーの年齢が高くなるにつれ骨分化能が低下することや,長期培養により骨分化能の低下が報告されている1)
 近年,人工知能(AI)は急速に発展しており,特にAIの一手法であるDeep Learning(DL)は,画像認識をはじめとして様々なタスクに対し優れた性能を示している.そこで本研究では,DLを用いてMSCsの骨分化段階を顕微鏡画像のみから予測するアルゴリズムを構築し,その性能を評価した.
【方法】
 ヒト間葉系幹細胞株であるUE7T-13細胞を,Dulbecco's Modified Eagle Medium培地でコンフルエントまで培養した.その後,骨誘導分化培地で培養し,0, 3, 5, 7, 14日目に光学顕微鏡下で画像を取得した.画像は各日で270枚ずつ計1,350枚取得し,データセットとして本研究に用いた.1,005枚を訓練データ,120枚を検証データ,225枚をテストデータセットとして使用した.テストデータセットは,訓練および検証データセットに用いた細胞とは異なる24ウェルマルチプレートで培養した.UE7T-13細胞の骨分化段階を判定するためのモデルにはDenseNet-121を採用し,ImageNetで学習した重みを使用した転移学習モデルとした.アルゴリズムの構築には,Pythonを用いた.アルゴリズムの性能評価には,評価指標として正解率,適合率,再現率,適合率と再現率の調和平均であるF1スコアおよびAUCを用いた.
【結果と考察】
 DeseNet-121による判定の結果,正解率,適合率およびF1スコアは0日目が最も高く,97%,73.3%および0.83,再現率は14日目が最も高く84.4%であった.一方,5日目の評価指標が最も悪く,3および14日目と誤判定した画像が多数認められた.AUCは平均で0.83であった.以上より,DLにより顕微鏡画像のみからMSCsの骨分化段階を評価できる可能性が示唆された.
【参考文献】
1) 新部邦透,江草 宏.補綴歯科領域で期待される幹細胞.日補綴会誌 2018;10:230-237.