公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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バイオロジー・バイオマテリアル

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-90] 積層造形3Dスポーツマウスガードの衝撃吸収性と耐久性最適化のための実験的検討

*Hiroshi CHUREI1、李 晨媛1、和田 敬広2、土田 優美3、林 海里1、田邊 元1,4、上野 俊明1,4 (1. 東京医科歯科大学 咬合機能健康科学分野、2. 東京医科歯科大学 先端材料評価学分野、3. 東京医科歯科大学 口腔デジタルプロセス学分野、4. 明海大学 スポーツ歯学分野)

[Abstract]
【目的】
 スポーツマウスガード(MG)装着が推奨されているが,カスタム製作に時間と経費がかかり,その普及には限界があった.本研究では,デジタルソフトウェアを用いて設計し積層造形(AM)したMGと従来のMGを比較し,衝撃吸収性と耐久性を向上させるための多層積層法を検討した.
【方法】
 比較従来MG基材は,ポリエチレン酢酸ビニル系(Erkoflex; Erkodent社)とポリオレフィン系(MG21,CGK社)とした.衝撃試験試料は直径50mm、厚さ3mm で、ゴム様軟質材料(Agilus, Vero; Stratasys Ltd.)にて7種ショアA硬度の単層試料と,0.5mm厚の硬質外層(D-ABS、Stratasys Ltd.)と,2.5mm厚の軟質層(単層と同硬度7種)からなる7種多層試料の 計14種を2種従来材料と比較した.衝撃吸収性は、鋼球(32.6 g)の落下距離600mmの自由落下試験により評価した.
 耐久性を評価したMG試料は,唇頬側で3mm、咬合面および口蓋側で2mmの単層軟質試料(ショアA硬度30、50、70:3種)と,硬質外層(D-ABS)が前歯部唇側で0.5mm、咬合面全体で1mm、残りを軟質内層(ショアA硬度30、50、70:3種)が覆う二層試料(図)とした.口腔内の咬合運動をシミュレートしたサイクル荷重(1Hz: 70Nから200N: 10000回)をかける疲労試験により評価した.
 両試験いずれも口腔内を模したボックス内(37℃,湿度100%)で測定をした.
【結果と考察】
 今回のAM材料は、過去の室温下の報告1)では従来MG材料と比較して衝撃吸収性が同程度かやや劣るとされていたが,口腔内を模した環境では,内層がショアA硬度95の試料を除き,従来MG材料と比較して優れた衝撃吸収性能を示した.耐久試験においてすべての単層MG試料は,疲労試験の中間段階(5000回まで)には破裂損傷したが,二層MG試料と従来基材MG試料はともに損傷しなかった.
 単層AMMGは効果的な衝撃吸収能力を有する一方で,十分な耐久性を有していないことを示すとともに,断続的な咬合力に耐えるために咬合面に硬質材料を一体化した多層積層MGの有用性が示された.
【参考文献】
1) Tun PS, Churei H, Hikita K, et al. J Photopolym Sci Technol 2020; 33: 615-22