公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-96] 顎骨由来間葉系幹細胞の骨分化能を予知可能な表面マーカーの探索

*櫻井 智章1、末廣 史雄1、駒走 尚大1、池田 菜緒1、宮田  春香1、中西 悠梨香1、山田 悠平1、西村 正宏1 (1. 鹿児島大学 口腔顎顔面補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 顎骨骨髄由来間葉系幹細胞(MBMSC)はヘテロな細胞集団であるため,骨分化能は細胞株間で大きく異なる.骨再生医療の細胞ソースとして顎骨のMSCを用いるためには,その骨分化能を事前に予知できることが必要である.MSCは骨分化に伴い,細胞膜上のCD10の発現が亢進することが報告されている.そこで今回我々はCD10が,MBMSCの骨分化能の高さを予知するマーカーになるのでないかと仮説を立てた.本研究は,MBMSCにおけるCD10発現パターンと骨分化能との関係及びCD10陽性細胞の機能的役割を明らかにすることを目的とした.
【方法】
 Lonza社より購入した腸骨骨髄由来MSC(IBMSC)5株,患者の同意のもとMBMSC19株,歯肉由来線維芽細胞(GFB)11株を採取し用いた.フローサイトメトリーで各細胞のCD10発現率を評価し,骨分化能はアリザリンレッド染色およびアルカリフォスファターゼ活性定量にて評価した.骨分化抑制因子の発現量はRT-PCR法を用いた.
【結果と考察】
 CD10発現率はGFBがIBMSCに比べ有意に高く,区別するマーカーとして有用と示された.MBMSCにおいてCD10発現は細胞間で異なり,CD10を高発現するMBMSC(CD10-Hi)はCD10低発現MBMSC(CD10-Lo)に比べて骨分化能が有意に低かった.次に高骨分化MBMSC(OS-Hi)とGFBを共培養すると,骨分化能は有意に低下した.低骨分化MBMSC(OS-Lo)の骨分化抑制因子発現を評価すると,OS-LoはOS-Hiに比べてTIMP-1(Tissue inhibitor of metalloproteinases-1)が高発現していた.セルソーターにより分離したCD10陽性細胞群(CD10-posi)とCD10陰性細胞群(CD10-nega)のTIMP-1発現は,CD10-posiで有意に高かった.
 以上の結果から,MBMSCの骨分化能とCD10発現には負の相関があり,CD10陽性細胞から分泌するTIMP-1により,MBMSCの骨分化が抑制される可能性が示された.本研究結果から,MBMSCのCD10の発現率が骨再生医療における移植用細胞の骨分化能を予知するための一つの細胞表面マーカーとして使えることが示唆された.
(鹿児島大学桜ケ丘地区疫学研究等倫理委員会承認:170263疫-改5)