[課題3] 3Dプリントと従来法による全部床義歯の咀嚼能力評価:クロスオーバー臨床研究
[Abstract]
【目的】
有床義歯補綴におけるデジタル技術の応用として3Dプリンタで製作した全部床義歯の臨床応用が試みられている.本研究はクロスオーバー無作為臨床研究により3Dプリントと従来法により製作された全部床義歯の咀嚼能力の評価を行った.
【方法】
本研究は東京医科歯科大学病院,鶴見大学歯学部附属病院にて実施された.20名の上下顎無歯顎患者に対して3Dプリント(以下3DP)と従来法(以下CON)による2種類の全部床義歯を製作した.装着した順番により2群化し,ランダム割付を行なった.通法に従い,印象採得から咬合採得まで行った後,3DPはデジタル義歯製作システム(DENTCAシステム,三井化学グループ)と3Dプリンタ(Cara print 4.0 , Kulzer)を用い設計,製作し,CONは加熱重合レジン(アクロン,GC)を用いて製作された.最初に装着した義歯は最大で4回の調整を行い,1カ月間の使用後に咀嚼能力を評価した.続いてもう一方の義歯に同様の調整と評価を実施した.さらに3DPについては,予後評価として24カ月間,6カ月ごとに評価を行った.咀嚼能力はグミゼリー咀嚼時のグルコース溶出量,咬合接触面積(以下OA)および咬合接触点(以下OP)にて評価した.両群のデータはカイ二乗検定(SPSS,日本IBM)にて,統計解析を行った(α=0.05).
【結果と考察】
無作為比較研究では調整後のグルコース溶出量において,CON(116.9 mg/dL)と3DP(127.4 mg/dL)間に有意差は認めなかった.義歯完成時のOAはCON(13.7 mm2)が3DP(9.8 mm2)と比較して有意に高い値を示した.予後評価において6カ月ごとのデータを比較した結果,グルコース溶出量は100.0-136.5mg/dLであり,有意差は認められなかった.観察期間の延伸に伴いOAの変化率は高くなり,一方,OPは減少する傾向を示した.3DPとCONの咀嚼能力に対する客観的評価では,完成時の3DPはCONと比較してOAが有意に小さかったものの,調整後の咀嚼能力は同等であった.また,3DPの予後評価では使用期間によりOAが増加し,OPが減少傾向にあったことから咬耗による影響が推察されたが,グルコース溶出量に変化がなかったことから,咀嚼機能は安定していることが示唆された.
【目的】
有床義歯補綴におけるデジタル技術の応用として3Dプリンタで製作した全部床義歯の臨床応用が試みられている.本研究はクロスオーバー無作為臨床研究により3Dプリントと従来法により製作された全部床義歯の咀嚼能力の評価を行った.
【方法】
本研究は東京医科歯科大学病院,鶴見大学歯学部附属病院にて実施された.20名の上下顎無歯顎患者に対して3Dプリント(以下3DP)と従来法(以下CON)による2種類の全部床義歯を製作した.装着した順番により2群化し,ランダム割付を行なった.通法に従い,印象採得から咬合採得まで行った後,3DPはデジタル義歯製作システム(DENTCAシステム,三井化学グループ)と3Dプリンタ(Cara print 4.0 , Kulzer)を用い設計,製作し,CONは加熱重合レジン(アクロン,GC)を用いて製作された.最初に装着した義歯は最大で4回の調整を行い,1カ月間の使用後に咀嚼能力を評価した.続いてもう一方の義歯に同様の調整と評価を実施した.さらに3DPについては,予後評価として24カ月間,6カ月ごとに評価を行った.咀嚼能力はグミゼリー咀嚼時のグルコース溶出量,咬合接触面積(以下OA)および咬合接触点(以下OP)にて評価した.両群のデータはカイ二乗検定(SPSS,日本IBM)にて,統計解析を行った(α=0.05).
【結果と考察】
無作為比較研究では調整後のグルコース溶出量において,CON(116.9 mg/dL)と3DP(127.4 mg/dL)間に有意差は認めなかった.義歯完成時のOAはCON(13.7 mm2)が3DP(9.8 mm2)と比較して有意に高い値を示した.予後評価において6カ月ごとのデータを比較した結果,グルコース溶出量は100.0-136.5mg/dLであり,有意差は認められなかった.観察期間の延伸に伴いOAの変化率は高くなり,一方,OPは減少する傾向を示した.3DPとCONの咀嚼能力に対する客観的評価では,完成時の3DPはCONと比較してOAが有意に小さかったものの,調整後の咀嚼能力は同等であった.また,3DPの予後評価では使用期間によりOAが増加し,OPが減少傾向にあったことから咬耗による影響が推察されたが,グルコース溶出量に変化がなかったことから,咀嚼機能は安定していることが示唆された.