公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

課題口演

現地発表

課題口演2
臨床エビデンス

2024年7月6日(土) 10:00 〜 11:00 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:會田 英紀(北医療大)

[課題6] 前歯CAD/CAMレジン冠トラブル発生状況とその原因の分析

*中村 友紀1、髙江洲 雄1、一志 恒太2、山口 雄一郎1、小嶺 亮1、山田 浩貴1、松浦 尚志1 (1. 福岡歯科大学咬合修復学講座冠橋義歯学分野、2. 福岡歯科大学医科歯科総合病院中央技工室)

[Abstract]
【目的】
  小臼歯および大臼歯CAD/CAMレジン冠(CRC)の臨床的トラブルは早期に脱離しやすいことが報告されている1).一方,前歯CRCの臨床的トラブル発生を調べた報告はみあたらない.本研究の目的は,前歯CRCの後ろ向き研究を行い,累積生存率と累積成功率を明らかすることである. さらに,前歯CRCの予後のみではなく,支台歯形態の三次元デジタルデータを応用してトラブル発生に関連するリスク因子を検討した.
【方法】
 2020年9月1日から2023年11月31日までの3年2カ月の間に福岡歯科大学医科歯科総合病院において,前歯CRC 64名94装置を対象に後ろ向き調査を行った.性別,年齢,残存歯数,装着部位,支台歯の状態,咬合様式を調査し,これらのデータを歯科診療録および技工指示書から収集した.また,三次元デジタルデータを用いて支台歯形態の計測を行った.エンドポイントはトラブルの発生と設定した.各項目とトラブル発生の生存曲線を描き,Log-rank検定により有意差検定を行った.リスク因子の検出は,Cox比例ハザード解析を用いた.有意水準は全て5%とした.
【結果と考察】
 トラブルは8装置(8.5%)に認められた.破折と脱離がそれぞれ4装置ずつで,脱離症例は全てで再装着が可能であった.累積生存率は95.5%で,累積成功率は76.9%であった.累積成功率を比較した結果,残存歯数,装着部位については有意差を認めなかった.Cox比例ハザード分析においても残存歯数,装着部位に有意差は認めなかった.一方,支台歯形態に20°以上の頬舌側テーパー(BLT)を付与すると20°以下のBLTの付与と比較した場合に累積成功率で有意差を認めた(p=0.027).Cox比例ハザード分析において他の因子を比較しても有意にリスクが高いことが示された(p=0.024).
 以上より,支台歯形態のBLTを20°以上にすると累積成功率に影響した.また,残存歯数や装着部位よりも支台歯形態のBLTが大きくなることが,臨床的トラブルの起きる要因の一つであることが示された.
【参考文献】
 峯篤史,松本真理子,伴晋太朗ほか.CAD/CAM レジン冠:日本から発信するメタルフリー治療.日補綴会誌 2022; 2: 115-123. 
(発表に際して患者・被験者の同意を得た.倫理審査委員会名:福岡歯科大学倫理審査委員会,承認番号:624)