公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

シンポジウム

現地発表+ライブ配信(オンデマンド配信あり)

シンポジウム6
生体模倣のその先へ 〜補綴とバイオミメティクス〜

2024年7月7日(日) 10:40 〜 12:10 第2会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 国際会議室)

座長:西村 正宏(大阪大)、秋葉 陽介(新潟大)

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[SY6-2] 生体模倣による生物機能の物理的制御が拓く補綴歯科治療技術の新展開

*山田 将博1 (1. 東北大学)

[Abstract]
 バイオミメティクス(生物模倣)は,生物の組成や構造,生命維持機構などから着想を得て,材料や工学機器,エネルギー生産技術など,革新的な産業技術の創出を導く戦略の総称である.医学領域では,生体の物理的微小環境を人工的に模倣することで標的組織/細胞の機能を制御する“生体模倣”の概念として,新規生体材料や医工学技術の開発に応用されている.応力などの動的メカニカルストレスと同様に,物理化学的微小環境は細胞のメカノバイオロジー機構を活性化させる.この静的なメカニカルストレスは生体模倣の主な作動原理となる.生体に働きかけることで病態制御や組織再生を導く生体模倣を基盤とした歯科再生医療技術は革新的な補綴歯科治療技術を創出する可能性がある.
 我々は,歯根セメント質を模倣したナノ表面形態とマイクロメカニカル特性を併せもつ生体模倣チタンナノ表面の開発に取り組んできた.その結果,この生体模倣チタンナノ表面インプラントは,歯根膜細胞や骨細胞,免疫細胞の機能を制御し,in situ歯周組織再生や周囲骨質の改善,炎症性骨吸収の予防といったさまざまな生物学的効果をもたらすことを明らかにした.さらに,ナノ突起による物理的刺激が,メカノバイオロジー機構を介した生物学的効果を導くとともに,ナノ表面形態のデザインそのものが表面の物理的刺激を高める要因となることを見出した.
 本講演では,生体模倣チタンナノ表面による生物機能の物理的制御に関する研究成果の紹介を通じて,生体模倣による補綴歯科治療の技術開発の可能性と将来展望を議論したい.

トピックス
●ナノ表面形態
●異方性
●メカノバイオロジー