[0018] 認知症高齢者におけるRivermead Mobility Indexの構成概念妥当性に関する検討
キーワード:認知症高齢者, Rivermead Mobility Index, 構成概念妥当性
【はじめに,目的】
リハビリテーション専門職にとって移動能力の評価は極めて重要である。移動能力を評価する代表的指標であるRivermead Mobility Index(RMI)は,英国や米国をはじめ多くの国々で使用されている。測定対象に関しても,当初は脳卒中標本で開発されたが,脊髄損傷や下肢切断など適用範囲も広く,本邦においても一般高齢者や脳卒中患者を対象とした信頼性と妥当性の検証が行われ普及しつつある。
我々は昨年度の本学会において,特に信頼性の問題から移動能力の測定方法が確立していない認知症高齢者に対するRMIの応用可能性を検討し,再現性・検査者間信頼性を支持しうることを報告した。本研究では,認知症高齢者標本におけるRMIの構成概念妥当性を構造方程式モデリング(SEM)を用い検討することを目的とした。
【方法】
岡山県内1ヶ所の医療施設に入院中の認知症高齢者全員121名のうち,認知症の原因疾患特定困難な者,パーキンソン病など身体機能障害を呈する疾患罹患者を除く117名(平均年齢85.1±6.4歳,男性31名,女性86名)を対象とした。診断の内訳は,アルツハイマー型89名,脳血管型20名,混合型8名であった。調査項目はRMIの他,基本属性・医学的属性,知的機能としてMini-Mental State Examination(MMSE)と柄澤式老人知能の臨床的判定基準(柄澤式),行動・心理症状(BPSD)としてDementia Behavior Disturbance Scale(DBD),障害老人の日常生活自立度判定基準(寝たきり度),Barthel Index(BI),転倒歴で構成し調査を実施した。
RMIの構成概念妥当性に関して,尺度の内部構造に関する一次元性を構造方程式モデリングによる検証的因子分析を用い検討した。また他変数との関連性から構成概念妥当性を検討すべく,移動能力の下位概念であるImpairmentレベルの指標としてMMSEと柄澤式,上位概念としてBIと転倒歴,BPSDの指標としてDBD,移動水準の指標として寝たきり度,そして年齢と発症後期間を取り上げ,RMIとの関連についてSpearman順位相関係数を用い検討した。さらに,内部一貫性を確認するためKR-20信頼性係数で検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は吉備国際大学倫理委員会の承認を得て実施した(受理番号:08-17)。調査に際し,認知症高齢者本人および家族に趣旨を十分に説明して実施した。
【結果】
RMIに関して,検証的因子分析における移動能力を上位概念とした1因子モデルの適合度は,CFI=0.983,TLI=0.988と許容水準を満たす適合度を示した。次にSpearman順位相関係数を算出した結果,MMSE,柄澤式,BI,転倒歴,DBD,寝たきり度と統計的に有意な相関関係を認め,年齢と発症後期間については有意な相関関係は認められなかった。KR-20信頼係数は0.93を示し,高い内部一貫性が確認された。
【考察】
RMIに関して検証的因子分析を行った結果,1因子モデルが統計的な許容水準を満たす適合度を示し,尺度の内部構造の一次元性が確認された。さらに相関分析において各変数間で統計的に有意な相関関係を認め,またその関連性は移動能力の測定指標として示すべき特徴が認められた。以上の結果は,RMIの構成概念妥当性を支持するものと判断された。また信頼性係数も高い値を示しており,昨年度の本学会で報告した再現性・検査者間信頼性を支持しうる結果を裏打ちするものとなった。以上のことよりRMIは,認知症高齢者標本においても信頼性と構成概念妥当性が確認され,その有用性を支持するものと考えられた。ただし本研究は入院標本における検討結果であり,今後は通所利用者など地域生活標本を用いた検討が課題である。
【理学療法学研究としての意義】
認知症高齢者の移動能力指標に関しては,信頼性の確保が課題とされ構成概念妥当性をも支持しうる指標は皆無であった。本研究結果は,移動能力に関する法則性の解明や介入上のアウトカムとしてRMIを使用できる可能性を示唆する大きな成果と考える。
リハビリテーション専門職にとって移動能力の評価は極めて重要である。移動能力を評価する代表的指標であるRivermead Mobility Index(RMI)は,英国や米国をはじめ多くの国々で使用されている。測定対象に関しても,当初は脳卒中標本で開発されたが,脊髄損傷や下肢切断など適用範囲も広く,本邦においても一般高齢者や脳卒中患者を対象とした信頼性と妥当性の検証が行われ普及しつつある。
我々は昨年度の本学会において,特に信頼性の問題から移動能力の測定方法が確立していない認知症高齢者に対するRMIの応用可能性を検討し,再現性・検査者間信頼性を支持しうることを報告した。本研究では,認知症高齢者標本におけるRMIの構成概念妥当性を構造方程式モデリング(SEM)を用い検討することを目的とした。
【方法】
岡山県内1ヶ所の医療施設に入院中の認知症高齢者全員121名のうち,認知症の原因疾患特定困難な者,パーキンソン病など身体機能障害を呈する疾患罹患者を除く117名(平均年齢85.1±6.4歳,男性31名,女性86名)を対象とした。診断の内訳は,アルツハイマー型89名,脳血管型20名,混合型8名であった。調査項目はRMIの他,基本属性・医学的属性,知的機能としてMini-Mental State Examination(MMSE)と柄澤式老人知能の臨床的判定基準(柄澤式),行動・心理症状(BPSD)としてDementia Behavior Disturbance Scale(DBD),障害老人の日常生活自立度判定基準(寝たきり度),Barthel Index(BI),転倒歴で構成し調査を実施した。
RMIの構成概念妥当性に関して,尺度の内部構造に関する一次元性を構造方程式モデリングによる検証的因子分析を用い検討した。また他変数との関連性から構成概念妥当性を検討すべく,移動能力の下位概念であるImpairmentレベルの指標としてMMSEと柄澤式,上位概念としてBIと転倒歴,BPSDの指標としてDBD,移動水準の指標として寝たきり度,そして年齢と発症後期間を取り上げ,RMIとの関連についてSpearman順位相関係数を用い検討した。さらに,内部一貫性を確認するためKR-20信頼性係数で検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は吉備国際大学倫理委員会の承認を得て実施した(受理番号:08-17)。調査に際し,認知症高齢者本人および家族に趣旨を十分に説明して実施した。
【結果】
RMIに関して,検証的因子分析における移動能力を上位概念とした1因子モデルの適合度は,CFI=0.983,TLI=0.988と許容水準を満たす適合度を示した。次にSpearman順位相関係数を算出した結果,MMSE,柄澤式,BI,転倒歴,DBD,寝たきり度と統計的に有意な相関関係を認め,年齢と発症後期間については有意な相関関係は認められなかった。KR-20信頼係数は0.93を示し,高い内部一貫性が確認された。
【考察】
RMIに関して検証的因子分析を行った結果,1因子モデルが統計的な許容水準を満たす適合度を示し,尺度の内部構造の一次元性が確認された。さらに相関分析において各変数間で統計的に有意な相関関係を認め,またその関連性は移動能力の測定指標として示すべき特徴が認められた。以上の結果は,RMIの構成概念妥当性を支持するものと判断された。また信頼性係数も高い値を示しており,昨年度の本学会で報告した再現性・検査者間信頼性を支持しうる結果を裏打ちするものとなった。以上のことよりRMIは,認知症高齢者標本においても信頼性と構成概念妥当性が確認され,その有用性を支持するものと考えられた。ただし本研究は入院標本における検討結果であり,今後は通所利用者など地域生活標本を用いた検討が課題である。
【理学療法学研究としての意義】
認知症高齢者の移動能力指標に関しては,信頼性の確保が課題とされ構成概念妥当性をも支持しうる指標は皆無であった。本研究結果は,移動能力に関する法則性の解明や介入上のアウトカムとしてRMIを使用できる可能性を示唆する大きな成果と考える。