[0026] 内側型変形性膝関節症患者における歩行中の外側広筋の筋活動の特徴
Keywords:変形性膝関節症, 表面筋電図, 外側広筋
【はじめに,目的】
国内において内側型変形性膝関節症(膝OA)患者は2400万人いると推測されている。膝OA患者は高齢化社会となり年々,増加している。膝OA患者では,疼痛から日常生活での活動量が減少することにより下肢筋力が低下し,更に膝OAが進行するという悪循環を招いてしまう。膝OA患者は歩行立脚期における膝内反モーメントの増加によって,膝関節内側コンパーメントの圧縮応力が増加し,痛みが誘発されることが明らかとなっている。さらに膝内反モーメントの増加によってlateral thrustが出現する(Schipplenin OD.1991)。これに対して外側広筋は1歩行周期において筋活動を増加することによって膝内反モーメントの増加やlateral thrustによる側方不安定性に寄与し,初期の膝OAにおいては膝内反モーメントを制動することが知られている(Cheryl L.2009)。しかしながら,この外側広筋の筋活動が立脚期,遊脚期それぞれの周期別の活動については明らかにされていない。この筋活動の特徴を明らかにすることによって,膝関節に対する歩行周期別トレーニング方法の開発に寄与すると考えられる。そこで本研究の目的は膝OA患者における歩行中の外側広筋の筋活動の特徴を表面筋電図(EMG)を用いて明らかにすることとした。
【方法】
対象は健常成人7名(25歳±4.5)と片側・両側膝OA患者4名(85歳±3.5)とした。膝OAの重症度の分類はKellgran-Lawrence分類(K/L分類)にIIが4側,IIIが1側,IVが2側であった。歩行中の筋活動を計測するための電極を外側広筋,大腿二頭筋に設置し,足底にフットスイッチを装着させた。歩行計測前,MMTの肢位にて3秒間のMVC(Maximum Voluntary Contraction)を測定した。歩行における筋活動の測定は音の合図に反応して,快適な歩行速度とした。解析は得られた波形を整流化し,5歩行周期を時間正規化した。各筋の立脚期,遊脚期,MVCの平均EMG振幅を算出した。各歩行周期の平均EMG振幅は%MVCに正規化した。統計処理はOA患者のEMG振幅とK/L分類の関係をSpearmann順位相関係数を用いて検証した。健常成人とOA患者のEMG振幅を歩行周期別にMann-Whitney U-testを用いて比較した。有意水準は0.05とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護には十分留意し,阪奈中央病院倫理委員会の承認を得て実施された。被験者には実験の目的,方法,及び予想される不利益を説明し同意を得た。
【結果】
OA患者のK/L分類と1歩行周期における外側広筋のEMG振幅は有意な正の相関関係を示した。1歩行周期における外側広筋,大腿二頭筋のEMG振幅は健常成人と比較して有意に増加した。また,立脚期,遊脚期それぞれの外側広筋,大腿二頭筋のEMG振幅は健常成人と比較して有意に増加した(立脚期健常成人:21.79±3.63%,膝OA:72.09±19.06%,遊脚期健常成人:15.8±4.3%,膝OA:39.3±18.8%)。
【考察】
健常成人と比較して,外側広筋の筋活動が増加したことは先行研究と一致した。OA患者のK/L分類と1歩行周期における外側広筋の筋活動が相関したことは,側方不安定が増加するにつれて外側広筋の筋活動が増加したことを示す。さらに遊脚期,立脚期の周期別に外側広筋の筋活動が増加したことは立脚期における側方安定性に寄与する外側広筋の筋活動を遊脚期から,準備している予測的姿勢制御に関連している反応である可能性が示唆された。また,遊脚期において外側広筋,大腿二頭筋の筋活動が増加することにより正常な膝関節の関節運動を行えないことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
変形性膝関節症患者の歩行時筋活動を解明することで歩行能力改善を目的とした歩行周期別トレーニングとして,遊脚期における筋活動に着目する必要性を示唆した。
国内において内側型変形性膝関節症(膝OA)患者は2400万人いると推測されている。膝OA患者は高齢化社会となり年々,増加している。膝OA患者では,疼痛から日常生活での活動量が減少することにより下肢筋力が低下し,更に膝OAが進行するという悪循環を招いてしまう。膝OA患者は歩行立脚期における膝内反モーメントの増加によって,膝関節内側コンパーメントの圧縮応力が増加し,痛みが誘発されることが明らかとなっている。さらに膝内反モーメントの増加によってlateral thrustが出現する(Schipplenin OD.1991)。これに対して外側広筋は1歩行周期において筋活動を増加することによって膝内反モーメントの増加やlateral thrustによる側方不安定性に寄与し,初期の膝OAにおいては膝内反モーメントを制動することが知られている(Cheryl L.2009)。しかしながら,この外側広筋の筋活動が立脚期,遊脚期それぞれの周期別の活動については明らかにされていない。この筋活動の特徴を明らかにすることによって,膝関節に対する歩行周期別トレーニング方法の開発に寄与すると考えられる。そこで本研究の目的は膝OA患者における歩行中の外側広筋の筋活動の特徴を表面筋電図(EMG)を用いて明らかにすることとした。
【方法】
対象は健常成人7名(25歳±4.5)と片側・両側膝OA患者4名(85歳±3.5)とした。膝OAの重症度の分類はKellgran-Lawrence分類(K/L分類)にIIが4側,IIIが1側,IVが2側であった。歩行中の筋活動を計測するための電極を外側広筋,大腿二頭筋に設置し,足底にフットスイッチを装着させた。歩行計測前,MMTの肢位にて3秒間のMVC(Maximum Voluntary Contraction)を測定した。歩行における筋活動の測定は音の合図に反応して,快適な歩行速度とした。解析は得られた波形を整流化し,5歩行周期を時間正規化した。各筋の立脚期,遊脚期,MVCの平均EMG振幅を算出した。各歩行周期の平均EMG振幅は%MVCに正規化した。統計処理はOA患者のEMG振幅とK/L分類の関係をSpearmann順位相関係数を用いて検証した。健常成人とOA患者のEMG振幅を歩行周期別にMann-Whitney U-testを用いて比較した。有意水準は0.05とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護には十分留意し,阪奈中央病院倫理委員会の承認を得て実施された。被験者には実験の目的,方法,及び予想される不利益を説明し同意を得た。
【結果】
OA患者のK/L分類と1歩行周期における外側広筋のEMG振幅は有意な正の相関関係を示した。1歩行周期における外側広筋,大腿二頭筋のEMG振幅は健常成人と比較して有意に増加した。また,立脚期,遊脚期それぞれの外側広筋,大腿二頭筋のEMG振幅は健常成人と比較して有意に増加した(立脚期健常成人:21.79±3.63%,膝OA:72.09±19.06%,遊脚期健常成人:15.8±4.3%,膝OA:39.3±18.8%)。
【考察】
健常成人と比較して,外側広筋の筋活動が増加したことは先行研究と一致した。OA患者のK/L分類と1歩行周期における外側広筋の筋活動が相関したことは,側方不安定が増加するにつれて外側広筋の筋活動が増加したことを示す。さらに遊脚期,立脚期の周期別に外側広筋の筋活動が増加したことは立脚期における側方安定性に寄与する外側広筋の筋活動を遊脚期から,準備している予測的姿勢制御に関連している反応である可能性が示唆された。また,遊脚期において外側広筋,大腿二頭筋の筋活動が増加することにより正常な膝関節の関節運動を行えないことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
変形性膝関節症患者の歩行時筋活動を解明することで歩行能力改善を目的とした歩行周期別トレーニングとして,遊脚期における筋活動に着目する必要性を示唆した。