[0030] 変形性膝関節症患者に有効な歩行修正パターンの検討
Keywords:変形性膝関節症, 外部膝関節内転モーメント, 歩行修正
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下膝OA)により膝内反変形を呈す患者の歩行の特徴として,患側立脚期の際の外部膝関節内転モーメント(以下KAM)の増加が挙げられており,膝OA患者では限局して膝内側コンパートメントへのストレスが増大していくことが考えられる。
この膝内側へのストレスを軽減させる方法として,これまで歩行修正の報告がされており,特に臨床上簡便に行えるものとして,toe out歩行・下肢内転内旋歩行・内側荷重歩行が報告されている。しかし,これらの歩行修正を運動学的・運動力学的な違いから比較,検討した報告はみられない。本研究の目的は,自然歩行,toe out歩行,下肢内転内旋歩行,内側荷重歩行の4つの歩行パターンの運動学的および運動力学的な違いについて検討し,膝OA患者におけるより有効な歩行修正方法について検討することである。
【方法】
対象は膝OA患者9名(男性1名,女性8名,平均年齢は68.2±6.5歳)とした。膝OAの病期分類にはKellgren-Lawrence分類を使用し,対象者はいずれもgradeII~IVの進行期から末期と診断された。除外因子は膝OA以外の整形疾患と補助具を使用し歩行する者とした。
データ収集には赤外線カメラ8台からなる三次元動作解析装置(CORTEX2.5)と,床反力計3枚(AMTI)を用いて記録し,32個の赤外線反射マーカーをヘレンヘイズマーカセットに準じて貼付した。なお,KAMは2相性をとるため立脚初期のピークを第一ピーク,立脚後期のピークを第二ピークと定義し,この時の歩行時患側膝関節角度および外部モーメントを算出した。膝関節角度に関しては,屈伸および内外反角度を測定した。また,膝関節モーメントに関しては屈伸・内外転外部モーメントを測定した。
各歩行修正に対する口頭指示は一定とした。自然歩行は「まっすぐ前を見ていつも通りに歩いてください」toe out歩行は「(角度計で15° toe outしたあとに)つま先をこのまま維持して歩いて下さい」,下肢内転内旋歩行は「両腿,両膝を近づけるように歩いて下さい」,内側荷重歩行は「足の外側に体重をかけないように歩いて下さい」とそれぞれ指示した。
統計学的分析は,KAMの第一および第二ピーク時の各歩行パターンの膝関節角度と外部モーメントの比較に一元配置分散分析を用いた。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には検査実施前に研究についての十分な説明を行い,研究参加の同意ならびに結果の使用について了承を得た。
【結果】
KAM第一ピーク時では,下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行が自然歩行と比較して有意にKAMを減弱させた(p<0.05)。また,この時の膝関節角度は,矢状面においてtoe out歩行が下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行と比較して有意に屈曲角度が大きく(p<0.05),また,前額面においてtoe out歩行が内側荷重歩行と比較して有意に内反角度が大きかった(p<0.05)。KAM第二ピーク時では,膝関節角度は矢状面においてtoe out歩行が下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行と比較して有意に屈曲角度が大きかった(p<0.05)。
【考察】
本研究結果から,自然歩行と比較して下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行がKAM第一ピーク値を有意に減弱させることが示され,膝OA患者への下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行の有用性が示唆された。また,膝関節角度に関してはKAM第一ピーク時,第二ピーク時共にtoe out歩行が下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行と比較して屈曲しており,かつ,KAM第一ピーク時には内側荷重歩行と比較して内反していることが観察された。Jenkynら(2008)はtoe out歩行は立脚期を通して膝屈曲角度を増加させ,立脚前期においては膝内反角度も増加させるとし,動的な膝関節マルアライメントを導くと報告している。toe out歩行と比較し,下肢内転内旋歩行は矢状面,内側荷重歩行は矢状面および前額面のマルアライメントを軽減させる可能性が示唆された。以上より,3つの歩行修正パターンのうち下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行がKAM第一ピークや,矢状面・前額面での膝関節角度を減弱させることから,より有効な歩行修正である可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
膝OA患者に対するリハビリテーションとして,病期の進行を防ぎ疼痛軽減を図るためにKAMを減少させることは重要である。臨床において膝OA患者へ歩行を指導するにあたり,本研究において観察された各歩行修正の運動学的・運動力学的な違いは臨床上有用な知見である。今後,各歩行修正における筋活動量の検討など,KAMに与える影響をより詳細に調査していきたい。
変形性膝関節症(以下膝OA)により膝内反変形を呈す患者の歩行の特徴として,患側立脚期の際の外部膝関節内転モーメント(以下KAM)の増加が挙げられており,膝OA患者では限局して膝内側コンパートメントへのストレスが増大していくことが考えられる。
この膝内側へのストレスを軽減させる方法として,これまで歩行修正の報告がされており,特に臨床上簡便に行えるものとして,toe out歩行・下肢内転内旋歩行・内側荷重歩行が報告されている。しかし,これらの歩行修正を運動学的・運動力学的な違いから比較,検討した報告はみられない。本研究の目的は,自然歩行,toe out歩行,下肢内転内旋歩行,内側荷重歩行の4つの歩行パターンの運動学的および運動力学的な違いについて検討し,膝OA患者におけるより有効な歩行修正方法について検討することである。
【方法】
対象は膝OA患者9名(男性1名,女性8名,平均年齢は68.2±6.5歳)とした。膝OAの病期分類にはKellgren-Lawrence分類を使用し,対象者はいずれもgradeII~IVの進行期から末期と診断された。除外因子は膝OA以外の整形疾患と補助具を使用し歩行する者とした。
データ収集には赤外線カメラ8台からなる三次元動作解析装置(CORTEX2.5)と,床反力計3枚(AMTI)を用いて記録し,32個の赤外線反射マーカーをヘレンヘイズマーカセットに準じて貼付した。なお,KAMは2相性をとるため立脚初期のピークを第一ピーク,立脚後期のピークを第二ピークと定義し,この時の歩行時患側膝関節角度および外部モーメントを算出した。膝関節角度に関しては,屈伸および内外反角度を測定した。また,膝関節モーメントに関しては屈伸・内外転外部モーメントを測定した。
各歩行修正に対する口頭指示は一定とした。自然歩行は「まっすぐ前を見ていつも通りに歩いてください」toe out歩行は「(角度計で15° toe outしたあとに)つま先をこのまま維持して歩いて下さい」,下肢内転内旋歩行は「両腿,両膝を近づけるように歩いて下さい」,内側荷重歩行は「足の外側に体重をかけないように歩いて下さい」とそれぞれ指示した。
統計学的分析は,KAMの第一および第二ピーク時の各歩行パターンの膝関節角度と外部モーメントの比較に一元配置分散分析を用いた。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には検査実施前に研究についての十分な説明を行い,研究参加の同意ならびに結果の使用について了承を得た。
【結果】
KAM第一ピーク時では,下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行が自然歩行と比較して有意にKAMを減弱させた(p<0.05)。また,この時の膝関節角度は,矢状面においてtoe out歩行が下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行と比較して有意に屈曲角度が大きく(p<0.05),また,前額面においてtoe out歩行が内側荷重歩行と比較して有意に内反角度が大きかった(p<0.05)。KAM第二ピーク時では,膝関節角度は矢状面においてtoe out歩行が下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行と比較して有意に屈曲角度が大きかった(p<0.05)。
【考察】
本研究結果から,自然歩行と比較して下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行がKAM第一ピーク値を有意に減弱させることが示され,膝OA患者への下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行の有用性が示唆された。また,膝関節角度に関してはKAM第一ピーク時,第二ピーク時共にtoe out歩行が下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行と比較して屈曲しており,かつ,KAM第一ピーク時には内側荷重歩行と比較して内反していることが観察された。Jenkynら(2008)はtoe out歩行は立脚期を通して膝屈曲角度を増加させ,立脚前期においては膝内反角度も増加させるとし,動的な膝関節マルアライメントを導くと報告している。toe out歩行と比較し,下肢内転内旋歩行は矢状面,内側荷重歩行は矢状面および前額面のマルアライメントを軽減させる可能性が示唆された。以上より,3つの歩行修正パターンのうち下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行がKAM第一ピークや,矢状面・前額面での膝関節角度を減弱させることから,より有効な歩行修正である可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
膝OA患者に対するリハビリテーションとして,病期の進行を防ぎ疼痛軽減を図るためにKAMを減少させることは重要である。臨床において膝OA患者へ歩行を指導するにあたり,本研究において観察された各歩行修正の運動学的・運動力学的な違いは臨床上有用な知見である。今後,各歩行修正における筋活動量の検討など,KAMに与える影響をより詳細に調査していきたい。