[0032] 女子スポーツ選手における前十字靭帯損傷者の大腿骨顆間窩と前十字靭帯の体積について
Keywords:前十字靭帯, 顆間窩, MRI
【はじめに,目的】膝関節前十字靭帯(ACL:anterior cruciate ligament)損傷において,非接触型(ノンコンタクト)ACL損傷は女性に多く発生している。このノンコンタクトACL損傷のリスクファクターとして環境要因,解剖学的要因,ホルモン要因,神経筋要因などの因子が挙げられる。先行研究においてX線写真から大腿骨顆間窩の幅を測定し,顆間窩の狭小とノンコンタクトACL損傷との関係性が報告されている。ノンコンタクトACL損傷の発生機序のひとつとして,大腿骨顆部と靱帯の衝突による損傷が考えられ,顆間窩の幅のみならず形状を立体的に捉えて検討する必要があると考える。そこで本研究では,オープンソースソフトウェアOsiriXを用い,磁気共鳴画像から大腿骨顆間窩の容積とACLの体積を測定し,女性のACL損傷者と健常者を比較検討することを目的とした。
【方法】対象は,ACL損傷女性群:片側ACL再建女性11名の反対側健常膝関節11膝(平均年齢21.2歳,平均身長160.1cm,平均体重54.2kg)と,女性群:健常女性10名の右10膝(20.2歳,163.1cm,58.8kg)だった。画像はワイドオープンMRI装置にて膝関節プロトン密度水平断像を撮影した。撮影条件は冠状面および矢状面にてACLに対し垂直になるように位置決めを行い,2mm間隔スライス面の画像データをDICOM形式で書き出した。画像の解析にはオープンソース画像解析ソフトOsiriX(v.4.1.2)を用いた。等間隔ごとの水平断像から大腿骨顆間窩とACLの断面を抽出し,OsiriXを用いて体積計算を行った。本研究では両顆の間の空間を顆間窩として規定した。これら体積計算に加えて,ACL体積比率(顆間窩容積に占めるACL体積の割合)も求めた。また,顆間窩容積とACL体積の相関についても検討した。統計はStudent’s t-testとPearson’s相関係数を用い,危険率5%未満を有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には事前に研究目的および研究内容を書面にて説明し,同意書にサインを得たうえで実施した(倫理委員会:承認番号119001)。
【結果】ACL損傷女性群の大腿骨顆間窩の容積は4804mm3,ACL体積は1182 mm3だった。女性群は5680 mm3,1372 mm3だった。大腿骨顆間窩の容積については,群間に有意差が認められた(p<0.05)。一方,ACL体積およびACL体積比率(顆間窩容積に占めるACL体積の割合)は差を認めなかった。また,顆間窩容積とACL体積の相関は有意であった(r=0.6,p<0.01)。
【考察】画像解析を行うソフトウェアは数多くあるが,その中でOsiriXはMRIやレントゲン撮影装置から出力されるDICOM形式の画像を表示し解析するオープンソースソフトウェアである。このソフトの有用性は高く,今回はOsiriXにてスライス断面画像から体積計算を行った。その結果,ACL損傷女性の顆間窩容積は健常女性に比べ小さく,大腿骨顆間窩幅の狭小が損傷リスクを高めているという先行研究を支持した。Souryal(1988)は2年間の前向き研究を行い,期間中にノンコンタクトACL損傷を起こした高校スポーツ選手のNotch width indexが有意に低値であることを報告した。その損傷メカニズムについては,膝関節外反位での脛骨回旋時に大腿骨外側顆とACLが接触を起こし損傷に至るのではないかと考えられる。ACL体積比率(顆間窩容積に占めるACL体積の割合)についてFayad(2008)は男女差がないことを報告している。また,Simon(2010)は顆間窩容積とACL体積の相関を報告している。本研究においては,ACL損傷群と非損傷群のACL体積比率には差がなく,顆間窩容積とACL体積の相関は有意であった。これらから顆間窩幅狭小の膝関節においてはACL自体も細いことが推察される。したがって,大腿骨顆間窩幅の狭小が靱帯との衝突による損傷リスクを高めているという可能性に加えて,靱帯自体の体積が小さく細いことがノンコンタクト損傷のリスクになりえるのではないかと考えられた。今後は3次元モデルを用いたシミュレーションを検討してゆく予定である。
【理学療法学研究としての意義】ノンコンタクトACL損傷のリスクファクターの解明は損傷予防につながり,損傷予防教室および再発予防の教育に有益な情報となりうる。
【方法】対象は,ACL損傷女性群:片側ACL再建女性11名の反対側健常膝関節11膝(平均年齢21.2歳,平均身長160.1cm,平均体重54.2kg)と,女性群:健常女性10名の右10膝(20.2歳,163.1cm,58.8kg)だった。画像はワイドオープンMRI装置にて膝関節プロトン密度水平断像を撮影した。撮影条件は冠状面および矢状面にてACLに対し垂直になるように位置決めを行い,2mm間隔スライス面の画像データをDICOM形式で書き出した。画像の解析にはオープンソース画像解析ソフトOsiriX(v.4.1.2)を用いた。等間隔ごとの水平断像から大腿骨顆間窩とACLの断面を抽出し,OsiriXを用いて体積計算を行った。本研究では両顆の間の空間を顆間窩として規定した。これら体積計算に加えて,ACL体積比率(顆間窩容積に占めるACL体積の割合)も求めた。また,顆間窩容積とACL体積の相関についても検討した。統計はStudent’s t-testとPearson’s相関係数を用い,危険率5%未満を有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には事前に研究目的および研究内容を書面にて説明し,同意書にサインを得たうえで実施した(倫理委員会:承認番号119001)。
【結果】ACL損傷女性群の大腿骨顆間窩の容積は4804mm3,ACL体積は1182 mm3だった。女性群は5680 mm3,1372 mm3だった。大腿骨顆間窩の容積については,群間に有意差が認められた(p<0.05)。一方,ACL体積およびACL体積比率(顆間窩容積に占めるACL体積の割合)は差を認めなかった。また,顆間窩容積とACL体積の相関は有意であった(r=0.6,p<0.01)。
【考察】画像解析を行うソフトウェアは数多くあるが,その中でOsiriXはMRIやレントゲン撮影装置から出力されるDICOM形式の画像を表示し解析するオープンソースソフトウェアである。このソフトの有用性は高く,今回はOsiriXにてスライス断面画像から体積計算を行った。その結果,ACL損傷女性の顆間窩容積は健常女性に比べ小さく,大腿骨顆間窩幅の狭小が損傷リスクを高めているという先行研究を支持した。Souryal(1988)は2年間の前向き研究を行い,期間中にノンコンタクトACL損傷を起こした高校スポーツ選手のNotch width indexが有意に低値であることを報告した。その損傷メカニズムについては,膝関節外反位での脛骨回旋時に大腿骨外側顆とACLが接触を起こし損傷に至るのではないかと考えられる。ACL体積比率(顆間窩容積に占めるACL体積の割合)についてFayad(2008)は男女差がないことを報告している。また,Simon(2010)は顆間窩容積とACL体積の相関を報告している。本研究においては,ACL損傷群と非損傷群のACL体積比率には差がなく,顆間窩容積とACL体積の相関は有意であった。これらから顆間窩幅狭小の膝関節においてはACL自体も細いことが推察される。したがって,大腿骨顆間窩幅の狭小が靱帯との衝突による損傷リスクを高めているという可能性に加えて,靱帯自体の体積が小さく細いことがノンコンタクト損傷のリスクになりえるのではないかと考えられた。今後は3次元モデルを用いたシミュレーションを検討してゆく予定である。
【理学療法学研究としての意義】ノンコンタクトACL損傷のリスクファクターの解明は損傷予防につながり,損傷予防教室および再発予防の教育に有益な情報となりうる。