第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 神経理学療法 口述

脳損傷理学療法1

Fri. May 30, 2014 10:50 AM - 11:40 AM 第13会場 (5F 503)

座長:阿部浩明(広南病院リハビリテーション科)

神経 口述

[0040] 脳卒中患者における超早期リハビリテーションとアウトカムとの関連性

松本大輔1, 白石成明2, 杉山統哉3, 鄭鄭丞媛4, 近藤克則5 (1.畿央大学健康科学部理学療法学科, 2.日本福祉大学健康科学部リハビリテーション学科, 3.中部労災病院中央リハビリテーション部, 4.国立長寿医療研究センター老年社会科学研究部, 5.日本福祉大学社会福祉学部)

Keywords:急性期脳卒中, 超早期リハビリテーション, 多施設間調査

【目的】急性期脳卒中リハビリテーション(リハ)において,海外のガイドラインでは早期リハが推奨されている。しかし,Cochrane Reviewでは24~48時間以内に離床を進めるVery early mobilisationの効果についてまだ確定したエビデンスとは言えないとしている。我が国ではMatsuiらが3日以内の超早期リハ(Very Early Initiation of Rehabilitation:VEI)は退院時の自立度が高いことに関連があると報告しているが,入院初日のVEIがアウトカムに関連するか否かは明らかになっていない。現在,リハに関わるデータベースを構築・運用し,リハ医学・医療の質の向上に資することを目的とした「リハビリテーション・データベース協議会(JARD)」に約20,000例以上のデータが集積されている。そこで,本研究ではJARD登録データを用いて,一般病棟(急性期)脳卒中患者における入院初日VEIとアウトカムとの関連性について検討することを目的とした。
【方法】2005年4月から2011年1月までにJARDに登録された脳卒中患者9095名のうち,「一般病棟」退院患者は4698名で,このうち選択基準を満たし,欠損値や異常値を示すものは除外した8病院2085名(男性1301名,女性784名:平均年齢71.6±8.0歳)を分析対象とした。選択基準は「50名以上の患者登録施設」「55歳以上84歳以下」「入院時発症後病日7日以内」「在院日数8日以上60日以下」「入院後リハ開始病日14日以内」である。患者の基本特性および評価項目は性別,年齢,脳卒中病型,National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS),Barthel Index(BI),modified Rankin Scale(mRS)とした。入院初日VEIの効果を検討するために,アウトカムは在院日数,NIHSS,BI,mRSの入院時から退院時の悪化・維持・改善および入院中の脳卒中再発,死亡を用いた。統計解析は入院初日VEI,3日以内,4日以降の3群に分け,各項目の比較をχ2検定,一元配置分散分析・多重比較検定(Bonferroni)を用いて検討した。また,各アウトカムの改善・悪化を目的変数としたロジスティック回帰分析を用い,説明変数に患者の基本特性,入院時項目に入院初日VEIを加え,強制投入法で検討した。なお,入院初日VEIは入院曜日の影響を受け,リハ単位数はアウトカムに影響を与えると考えられるため,調整変数として入院曜日と一日あたりのリハ単位数を同時投入して分析をおこなった。統計ソフトはSPSS20.0Jを用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究に用いたデータは日本リハ医学会研究倫理審査会でリハ医療の向上を目指すものであり,疫学調査の倫理指針に照らして倫理上の問題がないと確認されている。
【結果】VEIの実施割合は入院初日101名(4.8%),3日以内1157名(55.5%),4日以降827名(39.7%)であった。VEIの3群間で患者特性,入院時重症度の全てに有意差は認められなかった。改善割合ではNIHSS(初日71.3%,3日以内65.8%,4日以降62.8%),BI(初日88.1%,3日以内86.3%,4日以降81.9%),mRS(初日73.3%,3日以内67.7%,4日以降62.9%)の全てにおいて有意差がみられ,初日VEIが最も高かった(p<0.05)。一日あたりのPT・OT・ST単位数は初日5.4±2.4単位,3日以内3. 5±2.0単位,4日以降2.5±1.4単位で初日が有意に高かった(p<0.01)。在院日数では同様の傾向は見られたが有意差は認められなかった(p=0.053)。また,患者特性,NIHSS,BI,mRSの悪化割合,入院中の脳卒中再発,死亡については3群間に有意差は認められず,悪化を目的変数とした分析では入院初日VEIは選択されなかった。改善を目的変数とした分析では一日あたりのPT・OT・ST単位数が有意に選択され,VEIには有意差は認められなかった。
【考察】今回の結果から,脳卒中患者において入院初日VEIは患者の特性,入院時の重症度に関連なく,症状を悪化させないことが明らかとなった。また,入院初日VEIよりも1日あたりリハ単位数がアウトカムの改善に関連する可能性が示唆された。入院初日VEIにより,廃用症候群を予防し,早期からの評価により効果的なリハプログラムの実践につながると考えられる。本研究の限界として,VEIの内容として離床を促しているのかについては不明である。また,本研究で測定不能な全身状態や重症度を考慮できておらず,VEIが実施できるリハ提供体制の関連性についても検討する必要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】多施設共同データベースを用いた本研究で得られた結果は,急性期病院におけるVEIの重要性を示し,診療報酬改訂につながる基礎資料となると考えられる。
【謝辞】本研究は厚生労働科学研究費助成金(H19-長寿-一般-028)ならびに老人保健健康増進等事業の助成を受けて行った。