[0070] 専門学校における現役入学生と非現役入学生の学習動機の推移
キーワード:学習意欲, 教育環境, 学習支援
【はじめに,目的】
理学療法士・作業療法士養成校は大学と専門学校に分けられるが,社会人経験者や他学部の大学・大学院等を卒業もしくは中退した後の入学生(非現役生)は専門学校に多く見受けられる。クラス内に種々の経験を持った年齢層豊かな学生が混じり,お互いに影響を与える環境は専門学校の大きな特色の1つだと考えられる。そのような中,非現役生には成績優秀者が多く,学習動機と学習方略が比較的明確な場合が少なくない。
そこで本研究では,非現役生と現役入学生(現役生)の学習動機の源泉や強さを明らかにすること,また経時的変化を追って両群の差を検証することで,今後の学生教育の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は専門学校理学療法学科1学年40名・作業療法学科1学年32名の合計72名(男性40名・女性32名),平均年齢20.2±4.3歳であった。そのうち現役生は57名(男性29名・女性28名)で平均年齢18.5±0.6歳,非現役生は15名(男性11名・女性4名)で平均年齢26.7±6.0歳だった。
方法は「学習による直接的な効果や利益の期待度(功利性)」と「学習内容そのものの主観的重要度」の2次元で構造化されている市川の学習動機の2要因モデルを用い,記名式で36項目の質問紙に5段階尺度で回答を求めた。集計は充実志向(学習している内容自体が楽しく,充実感を得ている),訓練志向(知力を鍛える),実用志向(自分の将来の仕事や生活に活かす),関係志向(他者の影響),自尊志向(プライドや競争心),報酬志向(外からの報酬を期待),以上6分類各30点満点で集計した。また調査は同一学生に対して,1年次と2年次の2回実施して,経時的変化も調べた。
統計学的解析には,各群の正規性と等分散性をShapiro-wilk検定とLevene検定で確認後,2標本t検定,Welchの補正による2標本t検定,Mann-Whitneyの検定の中から適応する方法を用いた。尚,危険率は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言を遵守し,72名全ての対象者に研究目的及び方法を説明後,研究参加に対する同意を得た。
【結果】
各項目の値を現役生1年次・2年次,非現役生1年次・2年次の順に記載する。結果は,充実志向20.9±3.5点,20.5±4.1点,23.3±4.2点,22.3±4.3点,訓練志向18.5±4.2点,18.5±4.1点,21.9±4.6点,20.9±4.3点,実用志向25.0±3.1点,24.4±3.4点,27.4±1.9点,26.9±2.4点,関係志向16.8±4.1点,16.5±4.4点,13.1±5.7点,12.9±5.5点,自尊志向15.8±4.6点,16.7±4.2点,15.2±5.5点,15.5±4.0点,報酬志向16.0±4.0点,16.2±3.7点,13.6±4.6点,14.9±4.5点であった。
2群間比較において,非現役生は1年次,充実志向・訓練志向・実用志向で有意に高値を示し,関係志向・報酬志向で有意に低値だった。2年次では,実用志向は有意に高値であり,関係志向は有意に低値を示した。
【考察】
今回の結果から,非現役生は現役生に比べて,1年次において内容関与的動機が強く,内容分離的動機が弱かった。また,外発的動機よりも内発的動機が強いと捉えられた。しかし2年次では,実用志向・関係志向の差は変わらなかったが,充実志向・訓練志向・報酬志向の差が認められなくなった。
養成校入学者全員が少なくとも何らかの動機で理学療法士・作業療法士を志して,学習を望んでいる者だと考えられるが,その学習動機の源泉や強さは多様であった。今回得た結果のように非現役生と現役生の間で,学習動機に違いがみられるのであれば,それを考慮した上で学生教育に臨むことが重要だと捉えられた。また,2年次では差がなくなった項目があったことから,学習動機は経時的に変化するものであり,非現役生と現役生がお互いに影響を与え合った可能性も考えられた。一般的に,個々の学習動機に多く支えられて学習することが望ましいとされているので,自己の学習動機の源泉を意識して,学生同士でお互いの価値観を学び,教員側にも視野を拡げられるような支援が求められていると捉えた。
【理学療法学研究としての意義】
大学と専門学校という2つの教育体系が共存する中,専門学校にも独自の特色がある。その1つとして,本研究で着目した現役生と非現役生の関係性は,入学時の学習動機に差がみられたことから,お互いに影響を与え合う可能性が考えられた。専門学校での理学療法教育はこの点を考慮することも必要だと捉え,今後も追跡調査を行っていきたい。
理学療法士・作業療法士養成校は大学と専門学校に分けられるが,社会人経験者や他学部の大学・大学院等を卒業もしくは中退した後の入学生(非現役生)は専門学校に多く見受けられる。クラス内に種々の経験を持った年齢層豊かな学生が混じり,お互いに影響を与える環境は専門学校の大きな特色の1つだと考えられる。そのような中,非現役生には成績優秀者が多く,学習動機と学習方略が比較的明確な場合が少なくない。
そこで本研究では,非現役生と現役入学生(現役生)の学習動機の源泉や強さを明らかにすること,また経時的変化を追って両群の差を検証することで,今後の学生教育の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は専門学校理学療法学科1学年40名・作業療法学科1学年32名の合計72名(男性40名・女性32名),平均年齢20.2±4.3歳であった。そのうち現役生は57名(男性29名・女性28名)で平均年齢18.5±0.6歳,非現役生は15名(男性11名・女性4名)で平均年齢26.7±6.0歳だった。
方法は「学習による直接的な効果や利益の期待度(功利性)」と「学習内容そのものの主観的重要度」の2次元で構造化されている市川の学習動機の2要因モデルを用い,記名式で36項目の質問紙に5段階尺度で回答を求めた。集計は充実志向(学習している内容自体が楽しく,充実感を得ている),訓練志向(知力を鍛える),実用志向(自分の将来の仕事や生活に活かす),関係志向(他者の影響),自尊志向(プライドや競争心),報酬志向(外からの報酬を期待),以上6分類各30点満点で集計した。また調査は同一学生に対して,1年次と2年次の2回実施して,経時的変化も調べた。
統計学的解析には,各群の正規性と等分散性をShapiro-wilk検定とLevene検定で確認後,2標本t検定,Welchの補正による2標本t検定,Mann-Whitneyの検定の中から適応する方法を用いた。尚,危険率は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言を遵守し,72名全ての対象者に研究目的及び方法を説明後,研究参加に対する同意を得た。
【結果】
各項目の値を現役生1年次・2年次,非現役生1年次・2年次の順に記載する。結果は,充実志向20.9±3.5点,20.5±4.1点,23.3±4.2点,22.3±4.3点,訓練志向18.5±4.2点,18.5±4.1点,21.9±4.6点,20.9±4.3点,実用志向25.0±3.1点,24.4±3.4点,27.4±1.9点,26.9±2.4点,関係志向16.8±4.1点,16.5±4.4点,13.1±5.7点,12.9±5.5点,自尊志向15.8±4.6点,16.7±4.2点,15.2±5.5点,15.5±4.0点,報酬志向16.0±4.0点,16.2±3.7点,13.6±4.6点,14.9±4.5点であった。
2群間比較において,非現役生は1年次,充実志向・訓練志向・実用志向で有意に高値を示し,関係志向・報酬志向で有意に低値だった。2年次では,実用志向は有意に高値であり,関係志向は有意に低値を示した。
【考察】
今回の結果から,非現役生は現役生に比べて,1年次において内容関与的動機が強く,内容分離的動機が弱かった。また,外発的動機よりも内発的動機が強いと捉えられた。しかし2年次では,実用志向・関係志向の差は変わらなかったが,充実志向・訓練志向・報酬志向の差が認められなくなった。
養成校入学者全員が少なくとも何らかの動機で理学療法士・作業療法士を志して,学習を望んでいる者だと考えられるが,その学習動機の源泉や強さは多様であった。今回得た結果のように非現役生と現役生の間で,学習動機に違いがみられるのであれば,それを考慮した上で学生教育に臨むことが重要だと捉えられた。また,2年次では差がなくなった項目があったことから,学習動機は経時的に変化するものであり,非現役生と現役生がお互いに影響を与え合った可能性も考えられた。一般的に,個々の学習動機に多く支えられて学習することが望ましいとされているので,自己の学習動機の源泉を意識して,学生同士でお互いの価値観を学び,教員側にも視野を拡げられるような支援が求められていると捉えた。
【理学療法学研究としての意義】
大学と専門学校という2つの教育体系が共存する中,専門学校にも独自の特色がある。その1つとして,本研究で着目した現役生と非現役生の関係性は,入学時の学習動機に差がみられたことから,お互いに影響を与え合う可能性が考えられた。専門学校での理学療法教育はこの点を考慮することも必要だと捉え,今後も追跡調査を行っていきたい。