[0073] 理学療法養成校の学生の平常時と定期テスト前のストレス比較について
Keywords:理学療法養成校, POMS, 定期テスト
【はじめに,目的】
「理学療法士は,後進の育成に努力しなければならない」,この一文は,日本理学療法士協会倫理規定基本精神第5項に明記されている規定となっている。後進の指導に対して,理学療法士養成校での教育も当然含まれており,学校教育や長期実習において教育に携わっているものは少なくない。15歳を対象にした経済協力開発機構(OECD)による国際的な生徒の学習到達度調査では,2000年以降日本は科学的リテラシー・読解力・数学的リテラシーの何れの分野でも成績を下げている。これは理学療法士養成校でも同様であり,どこの学校でも学生の学力低下に対応するべく指導力の強化を行っている。この指導力の強化とは効率的な方法で教育を行い,良い結果をえることであると考えられる。本研究はこの効率の良い教育を行う為に,まずは現時点で学生は平常時と定期テスト時ではどのくらいストレスに差があるのか比較し,その原因について検証していくことである。
【方法】
対象は平成25年度に4年制理学療法士養成大学に在籍する1年~3年生で平常時237名(男性135名,女性102名:年齢19.2歳±1.1歳),定期テスト前236名(男性135名,女性101名:年齢19.4歳±1.0歳)とした。方法は質問用紙によるアンケートと心理検査を実施した。調査は2回行い,1回目は5月初旬の平常時に行い,2回目は7月中旬の定期テスト開始1週間前に行った。調査内容は学生の平常時と定期テスト前におけるストレスをVisual Analog Scale(以下VAS)と気分を評価するProfile of Mood States(以下POMS)短縮版の2種類とした。
VASは長さ10cmの線分の左端を「ストレスがない」,右端を「想像する最悪のストレス」として学生自身に現在のストレスが線分上のどの位置であるのかをペンで示してもらい,左端からの距離(mm)をもってストレスの強度とした。POMS短縮版では気分を評価する指標としてMcNairらによりアメリカで開発され,対象者がおかれた条件により変化する一時的な気分,感情の状態を測定する検査である。分類には「緊張」,「抑うつ」,「怒り」,「活気」,「疲労」,「混乱」の6項目がある。
統計学的手法は,VASとPOMSの評価項目ごとにウィルコクソンの符号検定行い,有意確率5%未満をもって有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は国際医療福祉大学の倫理審査会の承認を得て行った。また,ヘルシンキ宣言に従い,対象者には本研究の概要と目的を十分に説明し,個人情報の保護,研究中止の自由などが記載された説明文を用いて説明し,書面にて同意を得たうえで実施した。
【結果】
VASは1-3年生のすべての学年において差が認められテスト前に高値を示した。POMSは1年生では「緊張」に,2年生では「緊張」,「抑うつ」,「活気」,「疲労」,「混乱」に,3年生では「緊張」,「抑うつ」,「疲労」,「混乱」の項目に有意差がみられた。
【考察】
VASでは1-3年生のすべてにおいて有意差がみられた。これは,今回計測したすべての学年で定期テストは平常時と比較し,ストレスを感じており,精神的に負担の大きいイベントであることが示唆される。
POMSにおいて,1年生は「緊張」のみに増加の有意差がみられた。これは,不安感はありながらも,「抑うつ」や「混乱」などの負の要因がみられず,2・3年生と比較し,一般教養科目が多く,定期試験の難易度の問題も容易であり,精神的に安定しているのではないかと考えられる。2・3年生において,両学年は一般教養科目から専門教科科目に移り,勉強内容の難易度も上がってきたため,POMSの各要因で有意差が出現したと考えられる。その中で,3年生の「活気」では有意差がみられず,平常時と変化がなかった。先行研究において,学校への適応度と精神的健康度の重要性を指摘するものがある。今回の結果もこれと同様で,3年生は2年生と比較し,定期テストや学校生活の経験が多くあるために,カリキュラムにそった定期試験に焦点をあわせ,スケジュールを立てることができるため「活気」の低下がみられなかったのではないかと考えられる。
本研究の限界として,理学療法養成校間での特色や学年でのイレギュラーなカリキュラムなども影響があるものと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
定期テストは,学生自身がこれまで学んだ内容を発揮する場であり,その過程において様々なストレスを感じる場面があるものと考えられる。その内容がそのようなものなのか把握し,その対処法を考えることは有意義であると考えた。
「理学療法士は,後進の育成に努力しなければならない」,この一文は,日本理学療法士協会倫理規定基本精神第5項に明記されている規定となっている。後進の指導に対して,理学療法士養成校での教育も当然含まれており,学校教育や長期実習において教育に携わっているものは少なくない。15歳を対象にした経済協力開発機構(OECD)による国際的な生徒の学習到達度調査では,2000年以降日本は科学的リテラシー・読解力・数学的リテラシーの何れの分野でも成績を下げている。これは理学療法士養成校でも同様であり,どこの学校でも学生の学力低下に対応するべく指導力の強化を行っている。この指導力の強化とは効率的な方法で教育を行い,良い結果をえることであると考えられる。本研究はこの効率の良い教育を行う為に,まずは現時点で学生は平常時と定期テスト時ではどのくらいストレスに差があるのか比較し,その原因について検証していくことである。
【方法】
対象は平成25年度に4年制理学療法士養成大学に在籍する1年~3年生で平常時237名(男性135名,女性102名:年齢19.2歳±1.1歳),定期テスト前236名(男性135名,女性101名:年齢19.4歳±1.0歳)とした。方法は質問用紙によるアンケートと心理検査を実施した。調査は2回行い,1回目は5月初旬の平常時に行い,2回目は7月中旬の定期テスト開始1週間前に行った。調査内容は学生の平常時と定期テスト前におけるストレスをVisual Analog Scale(以下VAS)と気分を評価するProfile of Mood States(以下POMS)短縮版の2種類とした。
VASは長さ10cmの線分の左端を「ストレスがない」,右端を「想像する最悪のストレス」として学生自身に現在のストレスが線分上のどの位置であるのかをペンで示してもらい,左端からの距離(mm)をもってストレスの強度とした。POMS短縮版では気分を評価する指標としてMcNairらによりアメリカで開発され,対象者がおかれた条件により変化する一時的な気分,感情の状態を測定する検査である。分類には「緊張」,「抑うつ」,「怒り」,「活気」,「疲労」,「混乱」の6項目がある。
統計学的手法は,VASとPOMSの評価項目ごとにウィルコクソンの符号検定行い,有意確率5%未満をもって有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は国際医療福祉大学の倫理審査会の承認を得て行った。また,ヘルシンキ宣言に従い,対象者には本研究の概要と目的を十分に説明し,個人情報の保護,研究中止の自由などが記載された説明文を用いて説明し,書面にて同意を得たうえで実施した。
【結果】
VASは1-3年生のすべての学年において差が認められテスト前に高値を示した。POMSは1年生では「緊張」に,2年生では「緊張」,「抑うつ」,「活気」,「疲労」,「混乱」に,3年生では「緊張」,「抑うつ」,「疲労」,「混乱」の項目に有意差がみられた。
【考察】
VASでは1-3年生のすべてにおいて有意差がみられた。これは,今回計測したすべての学年で定期テストは平常時と比較し,ストレスを感じており,精神的に負担の大きいイベントであることが示唆される。
POMSにおいて,1年生は「緊張」のみに増加の有意差がみられた。これは,不安感はありながらも,「抑うつ」や「混乱」などの負の要因がみられず,2・3年生と比較し,一般教養科目が多く,定期試験の難易度の問題も容易であり,精神的に安定しているのではないかと考えられる。2・3年生において,両学年は一般教養科目から専門教科科目に移り,勉強内容の難易度も上がってきたため,POMSの各要因で有意差が出現したと考えられる。その中で,3年生の「活気」では有意差がみられず,平常時と変化がなかった。先行研究において,学校への適応度と精神的健康度の重要性を指摘するものがある。今回の結果もこれと同様で,3年生は2年生と比較し,定期テストや学校生活の経験が多くあるために,カリキュラムにそった定期試験に焦点をあわせ,スケジュールを立てることができるため「活気」の低下がみられなかったのではないかと考えられる。
本研究の限界として,理学療法養成校間での特色や学年でのイレギュラーなカリキュラムなども影響があるものと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
定期テストは,学生自身がこれまで学んだ内容を発揮する場であり,その過程において様々なストレスを感じる場面があるものと考えられる。その内容がそのようなものなのか把握し,その対処法を考えることは有意義であると考えた。