[0083] 大腿骨転子部骨折患者の術後1週間後の立位時足底圧分布の特徴
Keywords:大腿骨転子部骨折, 荷重, 足底圧
【はじめに,目的】大腿骨近位部骨折患者は年々増加しており,急性期病院において大腿骨近位部骨折術後リハビリテーションを行う機会は多い。大腿骨近位部骨折は大腿骨頚部骨折・転子部骨折・転子下骨折に分類され年齢階層別の発生率は70歳代半ばまでは大腿骨頚部骨折が高いが,それ以降では大腿骨転子部骨折が圧倒的に高くなると言われている。ガイドラインによると近年,男女の大腿骨頚部骨折・女性の大腿骨転子部骨折の発生率が増加しており今後,大腿骨近位部骨折の発生数も増加すると予測している。大腿骨近位部骨折術後リハビリテーションについては,術後早期の患側荷重量・荷重率(患側下肢荷重量/全体重)と歩行能力等に関する報告は散見されるが,患側荷重時の足底圧分布に関する報告は見当たらない。本研究の目的は,大腿骨転子部骨折に対する観血的骨接合術後患者の術後1週間後の立位荷重時足底圧分布(自然立位・患側努力荷重立位)の特徴を把握することとした。
【方法】対象者はH25.8~H25.11に当院に入院し大腿骨転子部骨折に対し手術療法を行い,術後荷重制限がなく改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)21点以上,かつ入院前ADLが歩行レベル(シルバーカー歩行以上)であった,13名(男性1名,女性12名,平均年齢86.0±7.2歳)とした。術式は髄内釘固定術Proximal Femoral Nail Antirotation(PFNA:SYNTHES社製)で,下肢に他の整形疾患を有する者は除外した。測定は,体圧分布測定システムBody Pressure Measurement System(BPMS:ニッタ株式会社製)を用い,自然立位と患側努力荷重立位の各10秒間測定し,自然立位時健側足底分布(以下,健側群),自然立位時患側足底分布(以下,自然患側群),患側努力荷重立位時患側足底分布(以下,努力患側群)それぞれの平均値を算出した。また,各立位時に患側の疼痛についてNumeric Rating Scale(NRS)を用い計測した。立位条件は,平行棒内で靴を脱ぎ,前方を注視させ足幅・足角は任意とした。測定日は術後7日目または8日目とした。対象者の足底を北野の分類をもとに足趾・前足部・中足部・後足部の4部位に分類し,算出された足底圧分布と照合した上で各部位の足底圧分布百分比(部位圧/全体圧)を求め,さらに個人間足底圧分布百分比(以下,百分比)のばらつきの大きさを求めるため各群・各部位の標準偏差を求め,各群で比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院における倫理委員会の承認を受け,対象者には研究の趣旨やプライバシーの保護等について説明し同意を得た。
【結果】各群の百分比(足趾:前足部:中足部:後足部)については,健側群(3.5±1.9%:35.5±5.9%:14.4±4.1%:46.7±7.2%),自然患側群(9.1±7.9%:49.7±15.6%:7.8±6.2%:33.5±19.0%),努力患側群(7.0±5.8%:44.7±15.5%:14.0±9.4%:34.2±15.2%)だった。
また,疼痛(NRS)は安静時痛(0.0±0.0)で,自然患側群(0.5±1.9),努力患側群(6.2±2.7)だった。
【考察】北野は圧の数値よりも分布様式を知ることが重要としており,健常者100名の百分比(足趾:前足部:中足部:後足部)は(2%:34%:6%:58%)で百分比の高い順は,①後足部,②前足部,③中足部,④足趾であると示している。本研究での健側群の百分比は,北野の報告した健常者の百分比の高い順と同様に①後足部,②前足部,③中足部,④足趾の順となった。これは本研究の対象者の百分比の特徴が健常者と同様であると考えられる。これに対し,自然患側群では,百分比の高い順は①前足部,②後足部,③足趾,④中足部となっており,自然患側群は後足部の荷重が健側群に比べ不十分であることが示唆された。努力患側群では,百分比の高い順に①前足部,②後足部,③中足部,④足趾となっていることから自然患側群と同様に後足部への荷重が不十分であることが示唆された。
また,標準偏差が健側群に比べ自然患側群・努力患側群の方が大きいことから患側荷重時は足底圧分布が個人間でのばらつきが大きいことが示唆された。
疼痛に関しては,自然患側群に比べ,努力患側群で疼痛増加を認めた。
【理学療法学研究としての意義】大腿骨転子部骨折術後患者の術後1週での立位時足底圧分布の特徴を把握することにより立位時のバランス評価や患側への立位荷重時に適切な助言・課題設定が可能となると考える。
【方法】対象者はH25.8~H25.11に当院に入院し大腿骨転子部骨折に対し手術療法を行い,術後荷重制限がなく改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)21点以上,かつ入院前ADLが歩行レベル(シルバーカー歩行以上)であった,13名(男性1名,女性12名,平均年齢86.0±7.2歳)とした。術式は髄内釘固定術Proximal Femoral Nail Antirotation(PFNA:SYNTHES社製)で,下肢に他の整形疾患を有する者は除外した。測定は,体圧分布測定システムBody Pressure Measurement System(BPMS:ニッタ株式会社製)を用い,自然立位と患側努力荷重立位の各10秒間測定し,自然立位時健側足底分布(以下,健側群),自然立位時患側足底分布(以下,自然患側群),患側努力荷重立位時患側足底分布(以下,努力患側群)それぞれの平均値を算出した。また,各立位時に患側の疼痛についてNumeric Rating Scale(NRS)を用い計測した。立位条件は,平行棒内で靴を脱ぎ,前方を注視させ足幅・足角は任意とした。測定日は術後7日目または8日目とした。対象者の足底を北野の分類をもとに足趾・前足部・中足部・後足部の4部位に分類し,算出された足底圧分布と照合した上で各部位の足底圧分布百分比(部位圧/全体圧)を求め,さらに個人間足底圧分布百分比(以下,百分比)のばらつきの大きさを求めるため各群・各部位の標準偏差を求め,各群で比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院における倫理委員会の承認を受け,対象者には研究の趣旨やプライバシーの保護等について説明し同意を得た。
【結果】各群の百分比(足趾:前足部:中足部:後足部)については,健側群(3.5±1.9%:35.5±5.9%:14.4±4.1%:46.7±7.2%),自然患側群(9.1±7.9%:49.7±15.6%:7.8±6.2%:33.5±19.0%),努力患側群(7.0±5.8%:44.7±15.5%:14.0±9.4%:34.2±15.2%)だった。
また,疼痛(NRS)は安静時痛(0.0±0.0)で,自然患側群(0.5±1.9),努力患側群(6.2±2.7)だった。
【考察】北野は圧の数値よりも分布様式を知ることが重要としており,健常者100名の百分比(足趾:前足部:中足部:後足部)は(2%:34%:6%:58%)で百分比の高い順は,①後足部,②前足部,③中足部,④足趾であると示している。本研究での健側群の百分比は,北野の報告した健常者の百分比の高い順と同様に①後足部,②前足部,③中足部,④足趾の順となった。これは本研究の対象者の百分比の特徴が健常者と同様であると考えられる。これに対し,自然患側群では,百分比の高い順は①前足部,②後足部,③足趾,④中足部となっており,自然患側群は後足部の荷重が健側群に比べ不十分であることが示唆された。努力患側群では,百分比の高い順に①前足部,②後足部,③中足部,④足趾となっていることから自然患側群と同様に後足部への荷重が不十分であることが示唆された。
また,標準偏差が健側群に比べ自然患側群・努力患側群の方が大きいことから患側荷重時は足底圧分布が個人間でのばらつきが大きいことが示唆された。
疼痛に関しては,自然患側群に比べ,努力患側群で疼痛増加を認めた。
【理学療法学研究としての意義】大腿骨転子部骨折術後患者の術後1週での立位時足底圧分布の特徴を把握することにより立位時のバランス評価や患側への立位荷重時に適切な助言・課題設定が可能となると考える。