第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 生活環境支援理学療法 口述

健康増進・予防2

2014年5月30日(金) 11:45 〜 12:35 第6会場 (3F 304)

座長:鶯春夫(徳島文理大学保健福祉学部理学療法学科)

生活環境支援 口述

[0114] 若年女性におけるロコモ25の身体活動と疼痛,運動機能および運動歴との関係

菱本舞, 岡真一郎, 三島聡子, 屋敷美紀子, 後藤広至 (国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科)

キーワード:ロコモティブシンドローム, 若年女性, 疼痛

【はじめに,目的】
ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)とは運動器の障害によって,日常生活に困難をきたすリスクが高い状態である。ロコモの判定は,疼痛(ロコモP),身体活動(ロコモA)および健康感に関する25項目で構成されたロコモ25が用いられており,100点満点中16点以上でロコモに該当する。また,ロコモの早期発見と予防を目的としたロコモーションチェック(ロコチェック)では,7項目のうちひとつでも該当した場合,ロコモ予備群としてロコモーショントレーニングが必要な場合がある。2005年の調査では,児童,生徒の体力および運動能力は全体的に低下しており,中高生女子では「運動,スポーツをしない」子が増加していることから,現在の若年女性ではロコモ予備群が存在する可能性がある。本研究の目的は,若年女性のロコモ予備群の割合と,ロコモ25と運動機能および運動歴との関係について調査することとした。
【方法】
対象は,一般若年者女性48名(平均年齢21.2±0.7歳)であった。調査項目は,ロコチェック,ロコモ25,学童期の運動歴(運動歴)とした。ロコチェックはロコモ25から抽出した5項目(階段昇降,15分連続歩行,やや重い家事,2kg程度の買い物の持ち帰り,横断歩道を青信号で渡る)に加え,片脚で靴下を履く,家の中で躓いたり滑ったりするの7項目について「できる」「困難である」の2段階評価である。ロコモ25は,疼痛,身体活動0点(障害なし)から4点(最重症)5段階評価である。ロコモPは,ロコモ25のうち疼痛に関連する4項目から算出した。ロコモAは,ADLから外出,スポーツなどの17項目から算出した。測定項目は,長座体前屈,東大式関節弛緩テストおよび等速性筋力測定を行った。等速性筋力測定は,BIODEX SYSTEM5(BIODEX)を使用し,膝関節屈曲,伸展筋力を角速度60deg/sec,180deg/secで行った。統計学的分析は,SPSS Statistics 21.0(IBM)を使用し,ロコモ25および運動歴と各測定項目との関係は,Spearman順位相関分析を用い有意水準5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は国際医療福祉大学倫理委員会の承認(承認番号13-Io-73)を得た後,対象者には事前に研究内容を説明し,書面にて同意を得たのちに実施した。
【結果】
ロコチェックの該当者は,48名中11名(22.9%)であった。ロコモ25は女性3.6±3.6点,ロコモ25が16点以上の者は1名であった。運動歴は女性3.4±1.7年であり,ロコモ25および各測定項目と有意な相関がなかった。ロコチェックはロコモ25(r=0.35,p<0.01)およびロコモA(r=0.46,p<0.01)と有意な正の相関があった。ロコモAは,ロコモPと有意な正の相関があり(r=0.31,p<0.05),ロコモPは,長座体前屈(r=0.46,p<0.01)と正の相関,膝関節屈曲パワー60deg/sec(r=-0.33,p<0.05),180deg/sec(r=-0.31,p<0.05)と有意な負の相関があった。長座体前屈は,東大式関節弛緩テストの股関節と有意な正の相関があった(r=0.29,p<0.05)。
【考察】
本研究の結果,ロコチェックの該当者は48名中11名(31%)であり,ロコモ25およびロコモAと有意な相関があった。ロコチェックは2段階評価の断定的な問いであること,青年期の女性における身体活動レベルのピークは男性より低いことから(Wilson, et al. 2011),身体活動に支障が現れた場合,ロコチェックに該当しやすく,ロコモ25のスクリーニングとして有用な可能性がある。また,ロコモAはロコモPと正の相関があり,ロコモPは,膝関節屈曲パワーと負の相関,長座体前屈と正の相関,長座体前屈が股関節の関節弛緩と正の相関があった。関節弛緩を有する者は,有さない者と比較して立位時に脊柱起立筋の筋活動が低く,半腱様筋の筋活動が高いこと(Greenwood,2011),関節の過可動性が痛みの誘発,動作の問題を引き起こす(小林ら,2010)。そのため,股関節の不安定性と身体背面の高い柔軟性に加え,膝関節屈曲パワー低下により支持機能が低下し,身体の支持機能を代償した部位で疼痛が誘発されやすくなることが推察される。学童期の運動歴は,ロコモ25および各測定項目と有意な相関がなかった。小学4年生女児は身体活動量と体力との間にはいくつかの項目で正の相関が認められたが,男子に比べるとその関連性は弱かった(笹山ら,2009)ことから,学童期の運動歴がロコモ25との相関がなかったと考えられる。一方で,子どもの身体活動について速歩あるいはそれ以上の活動強度が推奨されており,女性の身体活動レベルと運動および身体活動の継続期間についてはさらなる調査が必要である。
【理学療法学研究としての意義】若年女性のロコモ予備群について調査することは,将来のロコモ予防のための介入を検討する上で重要である。