[0118] 臨床実習終了前後におけるStudent Assistantの教育効果との関連因子
Keywords:student assistant, 臨床実習, 教育効果
【はじめに,目的】
近年,学生中心の教育を目指した取り組みのひとつとして,学士課程の学生を授業の支援に携わらせるStudent Assistant(SA)を取り入れる大学が増加している。本学科では,臨床実習1期8週(A群),2期16週(B群)を経験した4年生が教官の補助(Student Assistant:SA)として,2年生に検査測定の指導を行っている。SAの目的は,SAが主体的に学ぶ姿勢,責任感を身につけることで教育の質の向上させることに加え,教官の負担を軽減させることである。我々は,第25回教育研究大会において,SAによる教育効果と教官の負担軽減について報告した。本学科におけるSAの教育目標は,自己の知識と技術の認識を高めること(認識度),学習意欲を向上させること,臨床実習の準備とすること(実習準備)である。今回はSAの教育効果を高めるために,A群,B群におけるSAの目的と関連する因子について調査した。
【方法】
対象は,4年生65名(A群:34名,B群:31名,21.2±0.4歳)とした。SAにおけるグループは,GPAを用いて成績順に4群に分けた後,各群から1名ずつ配置した3~4名のグループを10グループ編成した。SAにおいて4年生が2年生を指導した内容は,検査測定とした。講義は,座学にて指導内容を確認した後,実技指導を行った。講義前後の課題は,講義の事前学習レポート,講義後のレポート(指導内容,反省点,次回の目標)を課した。調査方法は,質問紙を用いて4項選択単一回答形式とした。質問は,従属変数を講義の満足度(満足度),認識度,意欲の変化および変化の程度(意欲),実習準備,独立変数を説明できたか(説明),教官の助言と指示(助言と指示)および教官とのコミュニケーション(TC)とした。統計解析は,t検定および重回帰分析を用い有意水準5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には事前に書面および口頭で研究の目的を説明し,同意を得たのちの実施した。
【結果】
質問紙は65名から回収した(回収率:100%)。A群はB群に対して満足度(p<0.05),実習準備(p<0.01),意欲(p<0.05)が有意に高かった。A群では満足度と実習準備(F=17.23,R2=0.33,Y=1.66+0.592x),認識度と実習準備,TC(F=13.94,R2=0.44,Y=0.433+0.463x1+0.434x2),意欲と満足度(F=8.24,R2=0.18,Y=2.695+0.453x),実習準備と満足度,認識度および説明(F=14.65,R2=0.55,Y=-1.181+0.453x1+0.404x2+0.279x3)と関連があった。B群では満足度と助言と指導(F=14.33,R2=0.31,Y=1.524+0.575x),意欲と実習準備およびTCで関連があった(F=15.95,R2=0.50,Y=0.167+0.484x1+0.707x2)。
【考察】
A群はB群に対して満足度,実習準備,意欲が有意に高かった。SAの前身である大学院生による教育助手(ティーチングアシスタント)において求められるものとして,専門領域の深く幅広い知識,高いコミュニケーションスキルおよび他者への思いやりや尊敬の気持ちがあり,理学療法士として求められるものと共通している。そのため,A群は,2年生への説明と指導の中で教官とコミュニケーションを図り,自己の知識・技術を認識することで臨床実習に対する準備となったため,講義の満足度および意欲を高める因子となったと考えられる。一方,B群は,A群に対して満足度,実習準備および意欲が低かった。B群は臨床実習が終了しておりSAの目標が設定しにくかったと推察される。B群のSAで意欲を高めるためには,臨床実習での経験を活用して適切な指導ができるよう教員に確認を取るなどのコミュニケーションを図ること,SAの指導について助言しながら成功体験を積ませることが重要であると考えられる。また,立山(2013)は,SAの適正について,適切な訓練と監督を伴ったものに限ると述べている。SAにおいて下級生の指導と通した成功体験を増やし学習意欲を高めるためには,講義前の介入としてオリエンテーションにおいて教育についての説明,講義内容の事前の打ち合わせおよび講義後のフィードバックなど,教官の積極的な介入による講義内容の検討が必要である。臨床実習を経験し次の実習を控えた学生に対するSAは,学習意欲を高めることが示された。一方,臨床実習が終了した学生に対するSAは,学習意欲が高めるため臨床実習での経験が活用できるよう教員とのコミュニケーションや指導についての助言が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
臨床実習を経験した学部生によるSAは,学内教育における教育資源として活用できる可能性がある。
近年,学生中心の教育を目指した取り組みのひとつとして,学士課程の学生を授業の支援に携わらせるStudent Assistant(SA)を取り入れる大学が増加している。本学科では,臨床実習1期8週(A群),2期16週(B群)を経験した4年生が教官の補助(Student Assistant:SA)として,2年生に検査測定の指導を行っている。SAの目的は,SAが主体的に学ぶ姿勢,責任感を身につけることで教育の質の向上させることに加え,教官の負担を軽減させることである。我々は,第25回教育研究大会において,SAによる教育効果と教官の負担軽減について報告した。本学科におけるSAの教育目標は,自己の知識と技術の認識を高めること(認識度),学習意欲を向上させること,臨床実習の準備とすること(実習準備)である。今回はSAの教育効果を高めるために,A群,B群におけるSAの目的と関連する因子について調査した。
【方法】
対象は,4年生65名(A群:34名,B群:31名,21.2±0.4歳)とした。SAにおけるグループは,GPAを用いて成績順に4群に分けた後,各群から1名ずつ配置した3~4名のグループを10グループ編成した。SAにおいて4年生が2年生を指導した内容は,検査測定とした。講義は,座学にて指導内容を確認した後,実技指導を行った。講義前後の課題は,講義の事前学習レポート,講義後のレポート(指導内容,反省点,次回の目標)を課した。調査方法は,質問紙を用いて4項選択単一回答形式とした。質問は,従属変数を講義の満足度(満足度),認識度,意欲の変化および変化の程度(意欲),実習準備,独立変数を説明できたか(説明),教官の助言と指示(助言と指示)および教官とのコミュニケーション(TC)とした。統計解析は,t検定および重回帰分析を用い有意水準5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には事前に書面および口頭で研究の目的を説明し,同意を得たのちの実施した。
【結果】
質問紙は65名から回収した(回収率:100%)。A群はB群に対して満足度(p<0.05),実習準備(p<0.01),意欲(p<0.05)が有意に高かった。A群では満足度と実習準備(F=17.23,R2=0.33,Y=1.66+0.592x),認識度と実習準備,TC(F=13.94,R2=0.44,Y=0.433+0.463x1+0.434x2),意欲と満足度(F=8.24,R2=0.18,Y=2.695+0.453x),実習準備と満足度,認識度および説明(F=14.65,R2=0.55,Y=-1.181+0.453x1+0.404x2+0.279x3)と関連があった。B群では満足度と助言と指導(F=14.33,R2=0.31,Y=1.524+0.575x),意欲と実習準備およびTCで関連があった(F=15.95,R2=0.50,Y=0.167+0.484x1+0.707x2)。
【考察】
A群はB群に対して満足度,実習準備,意欲が有意に高かった。SAの前身である大学院生による教育助手(ティーチングアシスタント)において求められるものとして,専門領域の深く幅広い知識,高いコミュニケーションスキルおよび他者への思いやりや尊敬の気持ちがあり,理学療法士として求められるものと共通している。そのため,A群は,2年生への説明と指導の中で教官とコミュニケーションを図り,自己の知識・技術を認識することで臨床実習に対する準備となったため,講義の満足度および意欲を高める因子となったと考えられる。一方,B群は,A群に対して満足度,実習準備および意欲が低かった。B群は臨床実習が終了しておりSAの目標が設定しにくかったと推察される。B群のSAで意欲を高めるためには,臨床実習での経験を活用して適切な指導ができるよう教員に確認を取るなどのコミュニケーションを図ること,SAの指導について助言しながら成功体験を積ませることが重要であると考えられる。また,立山(2013)は,SAの適正について,適切な訓練と監督を伴ったものに限ると述べている。SAにおいて下級生の指導と通した成功体験を増やし学習意欲を高めるためには,講義前の介入としてオリエンテーションにおいて教育についての説明,講義内容の事前の打ち合わせおよび講義後のフィードバックなど,教官の積極的な介入による講義内容の検討が必要である。臨床実習を経験し次の実習を控えた学生に対するSAは,学習意欲を高めることが示された。一方,臨床実習が終了した学生に対するSAは,学習意欲が高めるため臨床実習での経験が活用できるよう教員とのコミュニケーションや指導についての助言が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
臨床実習を経験した学部生によるSAは,学内教育における教育資源として活用できる可能性がある。